デデリエ洞窟は今や、シリアを代表する旧石器時代遺跡となり、先史人類学のメッカの一つでもある中東の死海地溝帯を代表する遺跡の一つとして世界的に注目されている。その最大の理由は化石人類の発見が相次いだからである。
これまでに発見された人類化石は、数え方によって、発掘中に取り上げた人骨片の数から1000点を越えるとも言えるし、その人骨片の接合作業によって復元された骨格を集計して数10個体という言い方もできる。また、復元された骨格の部位を厳密に特定し、相互に比較して算出される最小個体数でもって言い表わせば約10個体となる。その中で、1993年に発見されたネアンデルタールの第1号埋葬人骨(ここから1号人骨と呼ぶ)、1997年に発見されたネアンデルタールの第2号埋葬人骨(2号人骨と呼ぶ)は保存状態が良かったこともあって専門家のあいだで高く評価されることになった。
両人骨はほぼ同年齢、約二歳のともにネアンデルタールの特徴を明瞭に示す子供である。そして両人骨は保存状態が良く、さまざまな骨格部位、とりわけ頭部については詳細な観察が可能である。1号人骨は第11層、現地表から約150センチの深さで見つかった。2号人骨は第3層、現地表から約50センチの深さで発見された。残っていた部位は1号人骨ほど多くはなかったが、ピット状の浅い窪みの中で発見された。この窪みが意図的に掘られたものだとすると、埋葬されていたことになる。ネアンデルタールが始めたといわれる埋葬という風習、実はいまだに論争の絶えない人類史上の謎の一つだが、それを検証する重要な発見となった。 |