一世代前の18歳人口ははちょうど第1次ベビーブーム世代後の谷の部分にあたるため、大学受験は比較的穏やかな競争であり、従って大学に入学さえすれば全員卒業でき、企業に入れば企業がその企業文化にあった教育をするというシステムになっていましたから、大学での教育は軽視されていたともいえます。そして、大学が大衆化され受験戦争ということが言われ始めた頃でもあります。また、社会・経済は安定成長期、バブル経済とその後の崩壊という変革期にありましたので、企業が望む人材は、まじめで確実に仕事ができる堅実な人が好まれ、有名大学卒業であることが重視されました。
二世代前は戦争を経験した世代であり、戦後の高度経済成長期に進学した世代です。大学進学率は10%程度で、エリートである彼らは、企業にとって貴重な人材でした。
2007年現在、グローバル化、高度情報化社会などといわれ、社会や経済は再び変革期にあります。バブル崩壊後、企業は人員削減や業務の効率化を図る中で、企業内教育は次第に困難になってゆきました。そんな中、求められる人材は、即戦力であり、個人の実力が評価されるようになりました。
高度情報化社会はまた、コンピュータ技術の開発を促進し、これまで人間が一生をかけて会得していた技能や特殊な分野の技術まで、コンピュータでマニュアル化され、短時間で処理されたり、製品化されたりするようになりました。そんな時代にあって、コンピュータで代用できないもの、つまり感性が重要になってきました。
一方、大学卒業後の進路に目を転じてみれば、近年就職も進学もしない人の数が急増しています。平成17年の就職も進学もしていない者の比率は23.5%、二世代前の18歳人口とほぼ同じくらいの人数が就職も進学もしないままの状態です。また、全国の18歳人口の就職した人の比率を見ると59.7%ですが、この年の高知工科大学の就職内定率は96.9%です。高知工科大学を卒業する学生が企業から高い評価を受けている証の一つであり、高知工科大学の教育力の高さと、学生たちが大学の環境を十分に活用して成長したということでもあると思います。
少子化が進む現在、大学の教育も大きな転換期を迎えています。大きく分ければ、教育中心の大学と研究中心の大学に分かれつつありますが、本来の大学教育のあり方は、研究に基づいた教育をすることが重要であると考えています。
大学で過ごす4年間という時間は、人の成長にとって十分長い期間です。人が成長するのに重要なことは、動機付けと成功体験であると思います。
そのことと関連付けて少し私のことをお話ししたいと思います。
私は大学を卒業後そのまま大学院へ進み、大学院を修了後、同じ大学の講師、助教授、教授で定年まで過ごしました。全くの蛸壺人生であったと思いますが、一方で、ずっと野球と関わってまいりました。野球と私を結び付けてくれたのが溝渕監督でした。高校に進学する際に野球を点を切ろうとした私を無理やりに野球の世界に戻してくださり、以後、現在に至るまで野球との縁が続いています。
東京大学野球部は現在連敗が続いていますが、私が選手だった時は、私だけでも17勝していますので、最近のように連敗し続けるようなチームではありませんでした。しかし、私が初めて監督に就任した年、3勝40敗4分でした。この時は良い選手がいたにも関わらず、私の経験不足が原因で良い成績を残すことができませんでした。
2度目に監督を引き受けた年、0勝20敗0分と散々な戦績でした。このとき驚いたのは選手たちに勝とうとする気持ちも負けて悔しいという気持ちも全くないということでした。そこで、2年目に選手たちに「勝つ試合がしたいのか、楽しく試合がしたいのか」ということを訊ねました。すると、「勝つ試合がしたい」ということでしたので、勝つための練習に変えました。その結果0勝だったチームが、7勝できるチームに変わりました。「勝つ」という動機付けをして、実際に試合に勝つという経験で1年も経たないうちに変わるということです。
ここからは少し大学の宣伝をかねて、高知工科大学がどのような大学かをご覧いただきたいと思います。
高知工科大学は「世界一『人が育つ大学』を目指した教育をしています。人が育つには、まずいろいろな人との出会いが重要であると考えています。
学生たちの安全を保ちながら、多様な人々との出会いの中で、多くのことを学び成長してゆけるような環境とシステムがデザインされています。