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■ デデリエ・ネアンデルタール第1号埋葬人骨



デデリエ・ネアンデルタール第1号埋葬人骨を見る
デデリエ・ネアンデルタール第1号埋葬人骨の上半身
1993年夏、西アジア、シリア北部「デデリエ洞窟」の5万年以前の地層から顔を出した約二歳のネアンデルタール幼児骨である。両腕を伸ばし、仰向きの姿勢であらわれた。洞窟を発掘すると、石器や動物骨が必ずみつかるものである。子供を埋めていた周りの地層からは石灰岩の自然礫以外に遺物はほとんど見つからなかった。死体にかぶせる土は精選されたものだったのであろうか。また頭の側の平らな石と子供の心臓部でみつかった小さな石器は特別に供えられたものであろうか。
デデリエ・ネアンデルタール第1号埋葬のレプリカ
西アジア、シリア北部「デデリエ洞窟」の5万年以前の地層に埋葬されていたネアンデルタール幼児骨である。歯の萌出状態を現代人の子供と比較して推定年齢約二歳、身長約80センチの子供である。そして、両腕を伸ばし、両足を強く曲げて仰向きの姿勢で埋葬されていた。顔面部が欠損していたり、下顎が本来の位置から下方に動いていたり、手足の指の骨の多くが本来の位置で見つからないのは、この子供、親兄弟が日頃生活していた同じ場所に深い穴など掘らずに埋められたからであり、さらに洞窟に住みつく様々な動物が食い散らすといったことも原因になったと思われる。それにもかかわらず、両腕、肋骨、背骨など子供の骨格の中心部分は生前の構成を見事にとどめている。幼児の親兄弟たち、おそらく特別の気持ちをもって意図的に埋葬したものだと考えられる。
復元された第1号デデリエ・ネアンデルタール
今までに見つかったすべての骨を、生前の幼児の骨格に合わせて並べてある。ただし、すべての骨が見つかった脊骨とそれに続く仙骨は長くなるので三列になっており、向かって右列に頸椎7個、中央に胸椎12個、左列に腰椎5個及びまだ一つの骨になっていない仙骨が並ぶ。脊骨を作る椎骨、骨盤を作る寛骨などは成人ではそれぞれ一つの骨となるが、この子供では、椎骨は椎体(円盤状の骨)と椎弓の二つの部分、寛骨では腸骨(円盤状の骨)、恥骨、坐骨の三つの部分に分かれたままである。身長は約80センチ、年齢は歯の萌出状態から約二歳の子供で、この年齢では、男女差を示す特徴がまだ骨格の上にあらわれず、性別は今のところ不明である (from Akazawa and Muhesen (eds.), 2003: Frontispiece 1)。 (Scale bar = 10 cm)



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