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第1号デデリエ・ネアンデルタールのコンピュータ復元
デデリエ幼児を復活させるために、この復活プロジェクトの究極の目標を達成するためにコンピュータの処理技術を導入した。
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三次元形状計測装置
コンピュータの世界での処理技術の出発点となったのが、幼児の骨を一点一点測定していく三次元形状計測装置である。資料室にセットされた人骨のかたちは、表面に照射されるレーザ光の反射光の三角測量によって自動的にコンピュータに入力され、数値データとして記録されていく。測定された骨は、三次元形状計測で生れる数値データを用いて見ることができるが、この段階では、骨のかたちは無数の点で表現されるにとどまり実物とは程遠いイメージである。
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三次元形状データの加工
点と点を継ぎながら骨の表面を作り、さらにそれに陰影をつけるなど三次元データを実物に近い状態へと加工していく。それによって再生なった実物通りの骨を見ることができる(compiled from Suzuki et al., 2003: Figs. XV-5〜10)。
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加工データの応用
見つかっていない骨、破損している骨があっては完全な骨格は作れない。しかし、骨の三次元データを反転させれば見つかっていない反対側や、破損している部位などを容易に復元できる。このようにして、子供のからだを作るすべての骨をコンピュータ上で立体化していく(compiled from Suzuki et al., 2003: Figs. XV-1)。
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コンピュータの世界で甦ったデデリエ幼児の全身骨格
幼児のからだをつくるすべての骨が準備できれば、生前の姿かたちの復活に向けての組み立てが可能となる。コンピュータの世界で、骨と骨の継ぎ方や間隔、脊柱の弯曲、頭骨の位置などを現代人の全身骨格やプラスティネーション標本のデータを参考としながらデザインしていく。
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第1号デデリエ・ネアンデルタールのコンピュータ復元像
(From Akazawa and Muhesen(eds.), 2003: Frontispiece 12.)
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デデリエ幼児の埋葬姿勢の復元
コンピュータの世界につくられた骨は目的に応じていかようにでも動かし、組み替えることができる。デデリエ幼児が埋葬された時の姿勢を推定復元し、さまざまな角度から見ることも可能である。
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光造形装置
光造形装置とは、三次元形状計測装置でコンピュータ上に取り込まれた骨の三次元データをレーザ光線に変換し、レーザ光があたると硬化するエポキシ系の光硬化樹脂で骨の実体モデルを作ることができる先端技術である。この装置により、実体モデルを必要な数だけ自動的に作ることができ、さらに見つかっていない骨、破損している骨でもコンピュータデータとして生成されておれば実体モデルを自在に作ることができる。光造形法によるデデリエ幼児実体モデルの制作デデリエ幼児の全身骨格、生体像の制作に幼児の実物資料を直接使用することはできない。また、見つかっていない骨、破損した骨があっては全身骨格の復元に支障がおこる。以上の問題を解決し、今回の復活プロジェクトで大活躍したのが光造形法である。光造形とは、コンピュータ上に作られた骨の三次元データから直接、骨の模型を作ることができる新しい技術である。
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光造形によって制作された手と足
(From Suzuki et al., 2003: Fig.XV-16.)
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デデリエ幼児の歩行シミュレーション
デデリエ幼児の歩き方を全身骨格の動きで示す。幼児の歩幅は0.32メートル、スピードは毎秒1.06メートルである。この歩きぶりは現代の二歳児とよく似ている。大きな頭、長い腕、骨太でがっしりしたプロポーションといった違いがあるにもかかわらず、現代幼児とほぼ同じ姿勢で歩いていたことになる。
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デデリエ幼児の歩行シミュレーション
(From Akazawa and Muhesen(eds.), 2003: Frontispiece 13.)
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デデリエ幼児の顔と頭の成長シミュレーション
ネアンデルタールの大人の顔かたちは現代人と違っている。例えば、眼窩の上がひさし状に突き出ているとか、鼻や下顎が大きく頑丈であるとか、脳の入る頭(脳頭蓋)が現代人にくらべて前後に細長い。デデリエ幼児が引き続き生き永らえたと仮定して、上述のネアンデルタール人に独特の顔貌がいつ頃現れてくるものかをコンピュータ処理技術で推定してみた。デデリエ幼児が、同時代、西アジアに生存していたネアンデルタールの大人、アムッド人と同じ顔かたちに成長すると仮定して、顔かたちが歳とともにどのように変化するかを復元した。現代人でも急に大人びる年頃などというが、デデリエ幼児でも十五歳以降、特に顔にあたる部分(顔面頭蓋)の成長が現代人の変化よりも大きく、急にネアンデルタール的な顔つきへと変わっていくことが明らかになった(modified from Kouchi and Mochimaru, 2003: Fig. XIV-4)。
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第1号デデリエ・ネアンデルタールの顔・頭の成長シミュレーション
(数字は年齢)(From Suzuki et al., 2003: Plate XV-2.)
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