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酸化亜鉛物語

4.酸化亜鉛が切り開く産業の未来

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これまでも、酸化亜鉛はその特性を生かして、自動車産業の創生のころからそれに寄与するなど、産業を支える物質として役割を果たしていました。今後は、いままで経験や試行錯誤によって積み重ねられてきた応用が、第一原理計算などの理論的新手法によって革新されていくことが期待されています。

大面積薄膜の形成
大面積薄膜の形成

山本教授をリーダーとする高知工科大学ZnOプロジェクトチームは、世界初の大面積酸化亜鉛透明導電薄膜を完成させ、その産業化が世界の注目を集めています。

透明導電膜


透明導電膜

現在でも需要が大きく、また将来さらに発展が見込める分野です。液晶をはさみ込む透明電極、プラズマディスプレイやタッチパネルなどへの応用に欠かせない素材であることは言うまでもありません。

1でも述べたように、従来のITOに変わるものとして、酸化亜鉛膜への期待ははなはだ大きいものがあります。1m×1mといった大面積薄膜の形成、高濃度ドーピングの成功による低抵抗化の実現は、単なるITO代替物にとどまらず、これまでにない応用分野の創生につながる可能性を持ったものです。

高機能半導体として酸化亜鉛を設計することができるという事実を考慮すれば、いままでにない大面積、極薄、高輝度、省エネルギーのディスプレイや発光面を実現できるかもしれません。

透明磁性体

透明強磁性体(イメージ)
透明磁性体(イメージ)
透明強磁性体(イメージ)
透明磁性体(イメージ)

これまでも、鉄‐ニッケル酸化物磁性体に添加するなどの形で利用されてきた酸化亜鉛ですが、酸化亜鉛自体をベースにした透明強磁性体を作ることができるという事実が明らかになってきました。スケルトン磁石はそれ自体たのしい文房具になりそうですが、もちろんそればかりではなく、光に反応する磁気デバイスとして、記憶媒体などへの広範な応用も期待できます。

付録:フェライト結晶の構造

太陽電池

現在主流となっているシリコン太陽電池は、太陽光の可視光域を主に利用しています。言いかえると、可視光を吸収するので、黒く見えるという理屈になります。効率を追求する結果やむをえないともいえますが、景観上はあらゆるところに貼り付けるというわけにはいかないのも確かでしょう。


透明太陽電池

バンドギャップの大きい酸化亜鉛半導体は、可視光に対して透明ですが、紫外線を吸収します。すなわち、紫外線を吸収(UVカットということ)して電気エネルギーに変え、かつ都市景観に影響を与えないような壁面すべてを覆う大面積太陽電池をつくることができます。可視光域の一部のみを吸収するように設計することもできますが、それによってステンドグラス風のデザインも可能ということになります。発電とUVカットを同時に行う太陽電池は、ガラスに貼り付けるなどの使い方も可能であり、透明であるという利点を生かす道はあるだろうと考えられています。

発光性


白色発光ダイオード

青色発光ダイオード

酸化亜鉛および硫化亜鉛の発光体としての利用の歴史は長いのですが、p型半導体の製法確立によって、可能性は一段と大きくなったといえるでしょう。低コスト発光ダイオードとして普及すれば、現在消費電力の多くを占め、発熱によって冷房コストも高めている照明の省エネルギー化に大きく寄与できます。また、レーザー発信源としても有望です。透明導電膜、透明磁性体としての性質をあわせて利用すると、前にも述べたようにビルやトンネルや家屋の壁面など、いままで単なる構造物であったところに機能性の発光面を置くことができるようになります。

UVカット


建物のガラス面・1

建物のガラス面・2

可視光に対して透明であるが、紫外線に対して不透明であるという酸化亜鉛の性質は、これまでも日焼け止めなどに活用されてきましたが、大面積薄膜の実現によって、さらに新たな応用が可能になりました。簡単に言うと、透明な日傘だってつくれるということでもあります。赤外線を反射するように設計することもできますので、自動車やビルを覆うことで、発電しつつUVカットを行い、冷房コストを削減するということも実現可能です。現在夏場の冷房需要が、ピーク時電力を規定していることを考えると、重要な応用だといえましょう。自動車のエアコンへの負担が小さくなるだけでも実用的には相当役に立ちそうです。

UVカット 暖房なし
UVカットの効果・暖房なし
UVカット 暖房あり
UVカットの効果・暖房あり

高知工科大学 山本教授これらの産業の新分野開拓において、高知工科大学山本教授がすすめてきた「低温蒸着薄膜形成法」「同時ドーピング法」が、ますます重要になってくることは理解されるかと思います。これらの基礎になっているのは、いわば行き当たりばったりや偶然によるのではなく、必要なものを原理にもとづく理論計算によって設計、物性の予測をしていくというマテリアルデザインの新手法であるわけです。これによって、大胆な発想を、現実的な素材につなげていく具体的な道筋ができつつあるというところに未来の展望を見出すことができます。