全「新自由主義ってのは、金銭欲に基づく底の浅い社会進化論思想ってことで、今では嘲笑の対象だよね。でも本当はその背後に、一種の”光輝ある人生の哲学”がちゃんとあって、それはベルグソンのエラン・ヴィタルとか、いやもっとさかのぼってニーチェの哲学に淵源があるのかな。」
宮「ニーチェねえ。哲学とかはあまり勉強してないけど、経済活動の新機軸の芽を摘んだら、残るのは公共事業頼みで過去の栄光に縋る産業ばかりの灰色の世の中。官僚的体制のなかで既得権の無い人に割こむ隙はない。不満が内向、しまいに暴発するかもしれないよ。」
全「飼いならされた羊の価値観が社会全体に蔓延すると、結局は徒党を組んだ凡庸な人々が支配する世の中になっちゃう、ってのがニーチェの定理。創造的活動は萎んで、とりあえずものを廻すためのご大層な名目と形式、会議と儀式ばかり。そういう凡庸の支配の正反対として、ニーチェはルネサンス時代のイタリアを理想化したんだよね。数理ファイナンスの槍を磨き上げて市場の歪みを突くサイモンズ。恐竜企業を次々屠って、もうけた何千億で美術館や数学研究所を作る彼なんかは、現代のチェーザレ・ボルジアだという事になるのかな。」
宮「ええ?そんな大仰な事言ったら、サイモンズ自身目を白黒するかも。でも確かにWeb2.0とかいって、ネット漬けで物の考え方まで知らぬ間に均一化して、羊みたいに元気ない若手とか多いし。」
全「で、サイモンズがボルジアなら、グリーンスパンは彼を庇護した法王アレクサンデル6世って感じか。」
宮「ルネサンスかあ。そういえばサイモンズのヘッジファンドの名前はルネサンス・テクノロジーって言うんだよ。グリーンスパンについて言えばねえ、今回の大崩落のあとの議会証言、ありゃないでしょ。”私は間違っていた”って、僕ら皆がっかりしたよ。そうじゃなくて、”今このときこそ、より強く市場の創造的破壊の威力と再生の力を信ずる”って言ってほしかった。」 |