電子講義:量子ゲーム理論

全卓樹

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    量子ゲーム理論(1-1)

ゲーム理論の設定と目標:アリスとボブとバナナ

ゲームについて学ぶのに、いきなり畏まった数学やら定義やらが出てきては興ざめであろう。そこで最初に例を持ち出して考えることにする。

いまオリ〜トバナナの木を前に、腹を減らして出来るだけ多くの果実が欲しい二名の原始人アリス(A)とボブ(B)がいる場面を想像してみよう。アリスもボブもバナナ獲得のために、2つの戦略の選択が可能だとする。それは果実の木に登ると、木の下で待つ、の二つである。行動の結果としてそれぞれが得る果実の数を各人の利得と考えてみる。各自の利得を競って二名のプレイヤーが戦略の選択を考える:これがここでのゲームである。

双方が木の下で待機すると、果実は得られないので双方果実は0、双方が登ると牽制し合って各自小さなバナナ3本があたるとする。アリスが木に登ってバナナをもぐと、ボブは下であくどく木を揺すぶり結果としてアリスには2本、ボブが下で労せずして6本をせしめる、と考えてみる。状況は双方に公平と考えればボブが木に登りアリスが下で揺すぶれば今度はアリスの収穫が6本でボブは2本である。

状況は次のゲーム利得表に纏められる。左横にアリスの行動の選択、右上にボブの選択がかいてあって、表の中身はその結果の果実獲得数がアリスのは青、ボブのは赤で書かれている。

A's # \ B's #
Bob stay
Bob climb
Alice stay
0 \ 0
6 \ 2
Alice climb
2 \ 6
3 \ 3
(1.1)

アリスとボブは、それぞれどんな戦略をとると予想されるだろうか?そして各々果実をいくつ手にするだろうか?

この質問への答を考えるのがゲーム理論である。

答えを与える前に、ゲームのルールに関するこの表には書かれていない暗黙の前提について、もう詳しく指定する必要がある。

まず最初の仮定は、アリスもボブも知性があって、自分と相手の行動の結果は冷静に分析できる、その分析に従って戦略をとるというものである。これをゲームプレイヤーの合理性と呼ぶ。ちなみにこの合理性の仮定は幾分緩められて「淘汰による学習」で置き換えることができる、という話があとで出てくる。

また双方は行動を同時に開始し、相手の行動を見ての「後だし」は禁止しておく。

そして最後に重要な仮定であるが、このゲームは何度も繰り返しプレイされるものとする。そうするとアリス、ボブともに累積点、もしくは一回あたりの平均利得を増大させるのがゲームの目的となる。アリス、ボブともに、そのような目的にそった戦略を追求すると考える訳である。

この点は重要で、プレイの機会が一回だけだと好い戦略が複数ある場合など、相手の行動が読めなくなり、戦略決定不能に陥る。これでは問題に「解がない」ことになり、なんの予言も出来ずゲーム理論の名に値しないものになってしまうからだ。

そして繰り返しプレイを考える事による、重要な帰結は確率戦略の発生である。例えば頭を使いすぎたプレイヤーが、これ以上考える事を放棄して、サイコロを持ち出して出鱈目に戦略を選ぶという事もできるのだ。実際そのような戦略が実は最強の戦略だったりする例がすぐに出てくる。

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