量子戦略と利他性、公平性(1):対称ゲームの場合
前節の主要な論点をもう一度確認しておくと、量子相関を含めた量子ゲームには二つの内容が含まれていて、一つは古典的ゲームの一族として了解可能な部分、もう一つが量子的な位相の干渉から来る部分であった。
これから少しの間、この前者の擬古典ゲーム族の意味について考えてみたい。
最初に先ほどの式はまだ複雑なので、とりあえずγ2 = 0 の場合を考えてみる。ここまでは書かないでおいたが、少し必要となるのでここからボブの利得についても平行して考えて並べると
|
Acl(γ1) = cos2(γ1/2) A + sin2(γ1/2) SAS
Bcl(γ1) = cos2(γ1/2) B + sin2(γ1/2) SBS
|
(5.1)
|
となる。
いま最初にあげた原始人のバナナ取りゲーム、囚人のディレンマと思い出してみよう。いま前者の利得表を再掲すると
ここではアリスとボブの利得表は無関係ではなく、MA と MB は対角成文は同じで、非対角成文を入れ替えただけ、すなわち A01 = B10、A10 = B01 になっている事が解る。これは考えてみるとゲームがアリスとボブに取って同じ条件で対称にできている事を示しているだけである。
つまりMB = MA+ が対称ゲームの条件となるが、これを4x4行列 A、B でみると
という形に表せる事が解る。よく考えればこれは当然で、もしゲームが対称にできていれば、自分と相手を入れ替える操作 S で変換すると A は B になる筈である。S2 = 1 なので当然 A = SBS も成り立つ。つまり対称ゲームにあっては(5.1)は
|
Acl(γ1) = cos2(γ1/2) A + sin2(γ1/2) B
Bcl(γ1) = cos2(γ1/2) B + sin2(γ1/2) A
|
(5.3)
|
と表される。
こうすると「γ1で量子的に歪められた」ゲームの意味はもはや明らかであろう。アリスもボブもともに、本来の自分の利得の代わりに、自分の利得と相手の利得を比率 cos2(γ1/2) : sin2(γ1/2) で混ぜて考えて、それを最大にするような戦略を探す、というゲームに対応している。
自分の代わりに他人の利益を優先することを「利他主義的」と呼ぶとすれば、量子戦略の中に、なぜかそのような利他主義的な行動が含まれていたのである!
|