量子粒子を使った量子ゲーム
これまでの説明では、ここで想定している「ゲーム」というものを、我々人間が、日常的に社会の中で遭遇し、解決しているゲームであるかのよう扱ってきた。そして量子戦略というのが、通常小さい補正を与える量子的相関を無視すれば、プレイヤー間の相互関係、利他的プレイも考慮したゲーム戦略を表している、というのがここまでの主旨であった。
現実の世界ではあまねく見られるのに、これまでのゲーム理論では取り込むのが異常に困難だったプレイヤー間の相関の取り込みが、ヒルベルト空間ではいとも簡単にできてしまうのを、大変に不思議と思う人も多いだろうが、量子力学を少し真面目に学んだ人に取っては、これは実は自然なことである。それには区別不可能な同一粒子が多数ある状態の波動函数を思い返してみるだけでよいだろう。
その問題はさしあたっておいておくとして、考えてみれば、ひとたび量子ゲームというものがヒルベルト空間上のヴェクトルとエルミート演算子でもって定義されてしまうと、それは完全な量子力学であるから、電子や原子、分子といった「ほんとうの」量子的な微粒子を操作してのゲームという仮想的状況にも、原理的にそのまま適用できてしまう筈だという事になる。
一般に量子情報操作で興味深いのは、出てくる粒子は二つ、もしくはそれ以上の場合である。そして通常、これら複数の粒子ごとそれを操作する人物が登場してくる。例えば量子暗号や量子テレポートといった例に登場するアリスとボブ考えてみると良いだろう。
彼ら二名は何かを達成しようとしており、その達成度を測るのに、二人の行う量子粒子への操作に依存した観測量(函数)を複数考える事ができるであろう。それは例えば量子暗号の効率や雑音への耐性といったものである。
この時これらの観測量のうちの二つをアリス、ボブの利得函数と考えれば、アリス、ボブの行っているのはそれぞれの量子系の操作を通じた利得函数たちの極大化の試み、すなわち言葉の本来の意味の量子ゲームに他ならない。そしてこれらの観測量を与える量子的演算子が利得演算子ということになり、この利得演算子は、一般にはエルミートと言う以上の規定は受けないので、当然非対角成分を持っていてもかまわないのである。
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