まとめと展望:量子ゲームiFAQ集 (続)
Q: 古典的状況に適用された量子ゲーム理論の基本的メッセージは何か?
A: ゲームプレイに際してプレイヤーが「共同幻想」を共有すると双方の利益になる、というのが量子ゲーム理論が追認する事実である。別の言い方をすると、社会集団をゲーム集団と捉えた場合、与えられたルールのもと許された事は何でもやる、という人々の集団と、お互いを配慮した了解事項を発展させた人々の集団では、一般に後者の方が全体として高利得となる、ということである。実験事実として社会的生物はどれも、他者への配慮を自己実現と同様に基本的行動原理としている。そういう集団のゲーム理論的記述には古典ゲーム理論の枠組みは狭すぎるのではないか。
Q: 「量子的」な量子ゲームについてであるが、量子情報操作一般が量子ゲームと解釈できるのだろうか?
A: 一般的にすべてについて可能かどうかは不明である。この点についての研究は始まったばかりで、筆者にとっては特にそうである。逆に言えば今後の発展はこの方向にあるのかもしれない。Richard Cleve博士の諸論文を参照されたい。
Q: 量子ゲームについて更に知りたいのだが、書物はないだろうか?
A: 書店で買える量子ゲームの教科書といったものは、英語にも日本語にもまだ無い。この時点でのレヴューとしては、すべて英語であるが、 A. Iqbal氏の博士論文、A. Flitney氏の博士論文、T. Ichikawa氏の修士論文の三つが良く、いずれもネット上から手に入るはずである。Google検索の上位にかかるが此処に名を挙げなかった何人かの著者による「量子ゲームとファイナンス」やら「量子ゲームと人工知能」といったレビューがあるが、すべて誤りとは言い切れなくとも、全体として珍妙奇天烈なものが殆どである。笑いに餓えている場合以外、筆者としてはお勧めしない。
Q: 量子ゲーム理論の発見の経緯、研究の歴史について簡潔な説明を願えるだろうか?
A: 量子ゲームがとりあえず定式化され、量子戦略のもたらす興味深い結果が発見されたのは、1999年のD.A. Meyer氏のPhysical Review Letters論文、それと独立に同年の同雑誌のJ. Eisert、M. Wilkens、M. Lewenstein三氏による論文においてである。理論がきちんとした型を取ったのは T. Cheon、I. Tsutsui 両名のPhysics Letters Aの2006年初頭の論文においてである、というのがここの公式見解となっているが、その著者の一人は本解説の筆者であり、その分大幅に割り引いて考えられたい。量子的戦略の萌芽となる思想は、古代ヒンドゥー哲学、スピノザ、ヘーゲル、シェリンク、ショーペンハウエルに見いだされる。ボルヘスの小説、とりわけ「神の筆跡」「不死の人」「秘密の奇跡」には量子的戦略を彷彿とさせる幻影的心象が描かれている。
Q: 原始生物は自己複製し酵母作用も持つRNA分子であったと推定されるそうだが、この時代の生存競争や淘汰による進化を考える上で、量子ゲーム理論が何か示唆を与えるであろうか?
A: 魅力的なSF小説の題材であろう。15年後のノーデル文学賞候補としての貴方に注目したい。
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