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タイトル「2008年度シラバス」、フォルダ「2008年度シラバス?専門科目(社会)
シラバスの詳細は以下となります。
科目名 水循環システム 
担当教員 村上 雅博 
対象学年 3年  クラス 学部:専門001 
講義室 K202  開講学期 1学期 
曜日・時限 火3,金3  単位区分 選択 
授業形態 一般講義  単位数
準備事項  
備考  
授業の詳細1 授業の目的
21世紀は、水、生命、環境の世紀になるであろうと予測され、水なしに人は地球上で生きることができないに止まらず、水は“地球環境”の“かなめ“でもある。 水の惑星地球の豊かな自然と生態系を守り、自然と調和した豊かな社会を築くためには、我々の地球と地域の水の状況および問題点と課題について知り、そして具体的な対策について考察することが必要である。本講義は水の惑星を支えている水循環システムに焦点をあて、基本的なコンセプト”Think globally and act locally”にもとづいて、我々の地球および地域社会の水循環と環境システムの保全・再生および自然災害の対策のプロセスに関わる基礎的な知識と理解力および応用能力を身につけることが目的である。

授業の進め方
水循環システムは、我々の生活に極めて身近なテーマである「水」について、地球規模の「降雨-流出-蒸発」にかかわる一連の水循環システムの仕組みと、工学的な応用技術の視点から 「水文学」、「河川工学:多自然型技術」、「応用水界生態系管理工学:自然再生技術」、「地下水管理工学」、「水資源工学:ダムと地下水」、「都市河川:雨水の貯留浸透技術」、「水環境工学:上下水道」に関する具体のプロジェクトの事例を含めて解説し、水文学、水資源工学、水環境工学等に関する教材(英文、統計資料、インターネット検索情報を含む)およびモデルプロジェクトのビデオ(英語と日本語)を用い、メディア情報を聞き取り文章にまとめる課題演習を段階的に重ね、レポート・論文を作成する能力を養成する。
河川・地下水・雨水かかわる講義(前半1〜5)の過程では、天候の条件にもよるが、大学構内および物部川を対象に現地調査の基礎(自身の足で、目で現場を確かめる)を学ぶ。ただし、個々人が学外での安全には十分に注意を払う自覚が必要。後半の講義(7-14の一部)において、学会の研究発表会の特別講演会に相当する講演会を開催し、水循環システムの最前線についての話題を知る機会を組み入れる。
 
授業の詳細2 授業の各回のテーマごとに主にインターネット(Web, htttp::/)に掲載されているオフィシャルな水循環に関する情報や資料から選んだテキスト(配布資料)を参考にする。当日の講義内容にかかわるキーワードを5ケ書き出し、英語を含むテキストから選んだクイズ形式または穴埋め形式の問題、およびそのなかから自身が重要と判断するものを一つ選んで、自身のコメントを250字のレポートにとりまとめる課題演習、そして地球環境問題の解説ビデオ番組を視聴して内容の要約を5百字のレポートに簡潔にとりまとめるトレーニング(演習)を実施するが、それらの成果は成績評価の一部に含まれる。15回の授業で中間試験を1回、期末試験を1回実施する。

達成目標
水循環と環境システムの基本的な用語と内容を理解し説明できる
我々の社会生活に直接に係わる水循環と環境システムの問題の所在を見出して課題を整理し、解決の方法を含めて説明できる。
自身で水循環と環境システムの問題点の所在と課題について考察し、水資源や渇水・洪水災害および水環境の保全や再生の問題について具体的な解決策をエンジニアの視点から提案し、方法や戦略を提示することができる。
 
授業の詳細3 授業計画

1. 地球の水循環システム
地球規模の大気・水循環システムのメカニズムと地球の水収支について解説し、我々の生活における水利用の現況とバーチャル・ウォータについて学ぶ。

2. 世界の水資源問題と環境難民
変貌する地球環境とグローバルな気候変動(豪雨や旱魃などの自然災害)が人類・社会に与える深刻な影響に関して解説し、世界の総人口64億人のうち12億人もの人々が安全な水供給を受けられずに同時に貧困にあえいでおり、さらに食料不足から飢餓が加わり地域紛争問題が発生している現実を踏まえて、「生命・水・環境」の世紀における地球社会の新しい課題について学ぶ。(演習:⇒“水の世紀”)

3. 水文学と河川流域
世界と日本の河川や湖沼の自然特性と社会特性について解説し、水文学の基礎となる流域の水収支の概念と計算方法を学ぶ。

4. 河川工学
治水や利水を確保するための河川改修工事やダム開発事業と河川環境保全・再生事業に関する具体のプロジェクトの事例を歴史を含めて解説し、河川の計画や設計のベースとなる基礎水理学について学ぶ。物部川の河川改修と農業水利施設の現場を見学する。(演習:⇒“洪水をなだめた人”)

5. 地下水管理工学
水文地質学の基礎(地下水盆の構造、地下水の涵養・流動機構、水理解析法)について解説し、地下水資源の開発・管理の事例プロジェクトを通じて公害・環境問題(地盤沈下・海水侵入および地下水複合汚染)の解決や雨水浸透工法を導入した総合的な流域管理の方法を学ぶ。

6. 特別講義(1) “統合的流域管理と総合治水計画”
河川の基本的な機能である治水・利水に加えて環境にも配慮する新河川法(1997年改定)が制定された。日本の河川事業の問題と課題について実例から学ぶ。(演習:⇒“洪水をなだめた人”)

7. 中間試験
 
授業の詳細4 8. 特別講義(2) “多自然型河川技術”
河川の自然再生プロジェクトが新しい公共事業として市民と社会に受け入れられていった欧米における経緯について解説し、高知県から発展していった伝統的河川工法技術を再評価した日本の多自然型河川技術についての実例から学ぶ。

9 水環境システム
「生命・水・環境」の世紀において、生態学と河川工学の接点となる境界領域のフロンティアを開拓しつつある応用水界生態系管理工学の基礎と応用技術(バイオマニピュレーション)について解説し、欧米と日本における具体的な湿地帯や湖沼の自然修復(ミチゲーション)と自然再生の実施プロジェクトを例に、流域の環境保全や自然再生の技術について学ぶ。

10 都市河川の流出制御
都市水文学の基礎と応用について述べ、都市化に伴う土地利用の急激な変化に伴う雨水の流出機構の変化を解析する手法について学び、高知工科大学の雨水流出抑制制御施設の現場を見学する。

11. .雨水浸透技術
流域の水循環システムを総合的に保全・再生するためのキーテクノロジーである雨水貯留・浸透技術に代表される都市雨水の流出制御と地下水涵養システムについて具体的なプロジェクトを事例に、相反する環境問題と災害問題を同時に解決する可能性の有るエコ・テクノロジーを学ぶ。

12水環境工学:上下水道
 人間の生活および都市のインフラストラクチャーを支える水道について解説する。水源、導水、浄水、配水のプロセスにそった水道計画と基本設計に必要な管路の水理学の基礎について学ぶ。(演習:⇒飲み水の安全をどう守るのか)

13. 水環境工学:下水道
下水道計画と排水処理システムと循環再生水利用システムに関する具体のプロジェクト、世界で最先端の都市流域水資源管理を実践しているシンガポール環境・水資源省(PUB)の事例を含めて解説し、総合的な杜市流域の水環境管理の応用技術について学ぶ。

14. 水循環システム:四万十方式
高知工科大学の水循環システムの心臓部に当たる高度下処理施設、四万十(自然循環)方式という画期的なテクノロジーについて解説し、実際に高知工科大学の構内で10年以上に亘り実証を続けている分散型下水処理(浄化槽)施設、四万十方式高度下水処理施設、トイレ給排水の循環利用システム、芝地灌漑施設を見学する。

15. 最終試験
 
授業の詳細5 演習(1〜3): 
水文、水資源、河川工学、水環境(上下水道)工学のメディア教材(ビデオ、一部英語)見て聴いて理解するプロセス(ヒアリングとディクテーション)において内容を整理しながら要点のモをとり、最後に短時間に自身のメモをヒントに小レポートにまとめあげる演習。
演習1)水の世紀(世界と日本の水問題と21世紀の地球の課題) 47分 (NHK, 2001)
演習2)洪水をなだめた人々(日本の河川、治水、利水の歴史、武田信玄、加藤清正) 30分 (文化工房)
演習3)飲み水の安全をどう守るのか(安全な水を確保するための新しいテクノロジーの問題) 1時間 (NHK, 2006)

テキスト:
村上雅博、“水の世紀”、日経評論社、2003年

参考書:
1)高橋裕、河川工学、東京大学出版会、1990年
2)Managing Water for Peace in the Middle East, Alternative Strategies, Masahiro Murakami、国連大学出版局、1995年<Webサイト検索(Google)で、Murakami, UNU, Managing Water for Peaceと入力するとテキストの全文(309頁)のダウンロードが可能:http://www.unu.edu/unupress/unupbooks/80858e/80858E00.htm >
3)福嶌義宏監修・村上雅博総編集、地球水環境と国際紛争の光と影、信山社、1995年
4)地球環境データブック 2004-05、国際河川と紛争(pp.214-221)、ワールドウォチ ジャパン、2004年
5) 国澤正和、他、絵とき 水理学、オーム社、1998年
6) 管和利、他、水理学演習ノート、日本理工出版会

成績評価:出席・課題演習(約25%)、中間テスト(25%)、最終試験(50%)を総合(100%)して評価する. 
AA:水循環と環境システムついての基本的な知識レベルでの理解ができ,問題の所在を見出した上で、解決の方法にもチャレンジして自身の発想から具体的な提案を示し、方法や戦略を提示できるポテンシャルがある.
A: 水循環システムついての基本的な知識レベルでの理解ができ,問題の所在を見出した上で解決の方向性を示すことが出来るポテンシャルがある.
B: 水循環システムついての基本的な知識レベルでの理解ができている上で,問題の所在を見出すポテンシャルがある.
C: 水循環システムついての基本的な知識レベルでの理解ができている.
 
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