科目名 |
文化としての戦略と戦術 |
担当教員 |
篠森 敬三 |
対象学年 |
1年 |
クラス |
学部:人社001 |
講義室 |
K101 |
開講学期 |
2学期 |
曜日・時限 |
火5,金5 |
単位区分 |
選択 |
授業形態 |
一般講義 |
単位数 |
2 |
準備事項 |
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備考 |
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授業の詳細1 |
「履修登録にあたっては、授業の詳細9にある履修の注意を良く読むこと!」
授業の目的と概要
人間あるいは集団がある程度大きな目標を達成するにあたっては,その過程で様々な問題や困難を克服する必要がある。無計画や無策では目標の達成は難しいため,いにしえの昔より,目標達成のための方策が考えられて,そのスケールによって分類される3つの要素が必要不可欠であると考えられるようになった。1つは大局的で中長期的な活動計画や活動方針であり,戦略と呼ばれるものである。2つは,比較的短期の行動計画や策略であり,作戦と呼ばれるものである。3つには,ある目的を達成するための具体的な方法や手段であり,戦術と呼ばれる。迅速かつ効率的な目標達成のためには,このレベルの異なる3つの要素を,巧みに組み合わせることが必要とされる。 古代から現代に至るまで,その3つが極限まで追求される状況が戦争や合戦であり,そこでは幸か不幸か,もっとも洗練された形で戦略や戦術を考える必要があった。その中で,失敗に対しては自らの血をもって償いながら,さまざまな手法が考案されてきたのである。さらには,それらが長い歴史の中で各地域や民族におけるさまざまな環境要因と密接に関連を持ちながら,典型的な思考方法や活動パターンとして形成されるに至った。これがこの講義で取り上げる「文化としての戦略と戦術」である。 現代においては,そのような文化として洗練された戦略や戦術は,昔のようにそのままの形で戦争や合戦に用いられるのでは無く,技術開発やビジネスモデル構築などにおける計画立案(現代における作戦)において利用することが可能な,典型的手法集(いわゆる必勝法)として捉えるべきものである。また戦いの勝利と敗北は単純な戦略や戦術のみに依存するのではなく、それを実行する組織としての軍団のあり方にも大きく依存していた。そこでの組織論は、現代の組織である企業体に応用可能であると言えよう。 それらの思想的な背景から,歴史的に提案されてきたさまざまな戦略や戦術、及び軍組織について学ぶと共に,それを現在の問題解決や目標達成のための手法として応用することが本授業の動機である。それにより,いかなる状況においても,勝利のための合理的な作戦行動をおこなうことの出来る指導的役割を果たす人材の育成に寄与することが最終目的である。 |
授業の詳細2 |
授業の進め方
上記のように,本授業では戦略的・戦術的思考を実際の事例に対して適用するという応用力をつけることがその目的であるので,「軍事学」とか「兵器」とか「戦争の歴史」などを教えることを本来の目的とはしていない。「軍事学」や「歴史」を教えるのではない,ということは,過去や現在における軍事的・政治的・国際的状況について講義するものではないことも意味している。 さらに(授業の目的からより一層明らかではあるが),軍事関連の話題で,例えば「戦車の主砲の装甲貫通力」といった単なる兵器の性能について考えることも目的としていない.あくまでも自律的に物事を判断できるようになるための戦略的・作戦的・戦術的な思考の獲得が目的である。 上記で「教えていない」「目的としていない」という内容を期待して授業を履修して,途中からいなくなる学生がいるかもしれないが,そのようなことの無いように願いたい。 |
授業の詳細3 |
授業の目標 (1)戦略・作戦・戦術に対する理解 ・歴史的な戦略・作戦・戦術の基本的な考え方について理解する。 ・戦略や戦術と,作戦との差異を理解するとともに,戦略優位性(優れた戦略は稚拙な戦術をカバーできるが,優れた戦術でも稚拙な戦略を カバーすることは出来ないという特性)についても理解する。 ・目的遂行集団としての組織論の基本的考え方について理解する。
(2)戦略・作戦・戦術におけるスキル形成 ・戦略・作戦・戦術の基礎的諸概念を正しく理解し,自分でも実際の活動における計画立案や遂行において,使えるようにする。 ・戦略をいくつかの連続的な具体的計画にインプリメンテーションしたものが作戦であることを理解し,実際の事例に適用する経験を得る。 ・戦術に相当する研究開発における要素技術などをもとに,それらを最大限に生かすための活動計画(作戦)を作成するスキルを形成する。 ・組織(企業等)が目的を遂行するために必要とされる組織構造について理解し、活動目的や活動形態が組織のあり方を規定していく点を 踏まえて組織のあるべき構造を考えられるようにする。
(3)指導者としての合理的判断の展開 ・戦略・作戦・戦術の基礎的諸概念にもとづいてさまざまな対策を考案し,かつそれを議論や報告書の形で展開することによって,組織全体 に対して合理的判断を敷衍させるという作業のひな形を体験することによって事前経験を得る. |
授業の詳細4 |
授業計画 授業と演習の詳細な日程については最初の授業の時に説明する。
1〜2 作戦立案における戦略と戦術の重要性 ・目標達成のためのアプローチ ・戦略と作戦の良い循環・悪い循環 ・戦略優位と戦術優位
2〜9 歴史にみる戦略と戦術 ・孫子の兵法〜軍略の誕生〜 戦闘国家の構築(戦略ー作戦ー戦術の連携),多数のライバルとの戦い(パワーバランスのための外交),王と将軍(組織と人間の関係) ・ギリシアの戦い〜市民社会とポリスの形成〜 市民社会と兵役(権利と義務),アテネとスパルタ(多様性と単一性) ・ハンニバルとスキピオ〜1度だけ負けた者と1度だけ勝った者〜 包囲殲滅戦(圧倒的な戦術的優位 vs. 圧倒的な戦略的優位) ・ジンギスカン〜元帝国の形成〜 少数の統治官と騎馬軍団(戦略的抑止力の形成) ・信長の野望〜天下布武〜 新技術の導入とその組織的展開(鉄砲による集団戦法の導入) 新しい組織構造の形成(給与体系の導入) ・ナポレオンの戦い〜徴兵と分進合撃〜 フランス革命と徴兵(機動戦への道) ・ネルソンタッチ〜見敵必殺〜 艦船数と制海権の確保(数的優位の利用)
10 筆記試験 |
授業の詳細5 |
11〜14 目標達成のための戦略と戦術 ・囲碁将棋からの離脱 (1対1ではなく、状況が固定ではない状況への対応) より現実に即した戦略と戦術,モノポリーにおける戦略と戦術(外交による勝利) ・情報(インテリジェンス)の重要性 情報戦で優位に ・組織の構築 目標達成のための役割分担,志気の維持,個艦優越の是非 ・長期的見通し 戦略と抑止の利用 ・新技術・新コンセプトへの対応 適正なタイミングと適正な利用 ・間接アプローチ〜1対1の戦いにおける活路〜 自分の全力で相手の分力と戦う ・電撃戦〜戦略的奇襲〜 必要なポイントのみ押さえる,電撃戦の終焉 ・消耗戦〜物量による戦略的持久〜 局地的には敗北してもかまわない,消耗戦の終焉 15.最終レポート作成について ・最終課題レポートの作成の手引き ・今後への展開 |
授業の詳細6 |
授業のテキストと参考書
テキスト:3Q開始時までに設定する場合がある。 参考書 :必要があれば紹介する。 |
授業の詳細7 |
成績評価
本講義では,重みづけを,筆記試験 40%,最終課題個人レポート50%,小レポート&小テスト10%(予定)として評価する。それらの得点は,以下の到達度判定に用いられる。最終的な成績評価は到達度によって決められる。なお出席点は加算しない。
F判定 C判定で定める到達度に到達していない場合で,単位取得は認めない。 C判定 授業内容1〜9の内容で学んだ戦略や戦術の概念を理解し,おおよそ説明することが出来る能力に到達した。 B判定 授業内容10〜14で取り上げる戦略や戦術の概念を理解し,現代的なサンプル事例に対して,1〜14の内容で学んだ戦略や戦術の概念 を当てはめて分析し,戦略的適合性を判断することのできる能力に到達した。 A判定 B判定の到達度に加えて,現代的なサンプル事例に即して,有効な対策や合理的判断を自ら考え,かつそれを説明・議論した上で, 報告書にまとめることのできる能力に到達した。 AA判定 A判定の到達度に加えて,討論での議論や問題点の指摘をふまえて,さらに作戦立案を高度化し,普遍的に受け入れられることが できる合理的な戦略と戦術を構築してそれを報告書の形でまとめることのできる能力に到達した。
筆記試験は主としてB判定までの到達度(試験範囲は講義内容9まで)を判定し,最終課題個人レポートはA,AA判定の到達度を判定することを主目的として実施される。F判定ではあるが一部特定領域(ある一部の講義内容)を除けばC判定到達度を満たしていると考えられる学生については,その領域に関する追加レポート課題を与え,そのレポートの得点を到達度判定に加える場合もあるが,おそらく実施する必要はないだろう(全体を見通すことができれば,ある領域のみ出来ないという事例が発生しないので)。 演習では自主採点方式を用い,成績評価には加味しない。また授業では原則,出席点は加味しない。したがって最終的に,様々な戦略や戦術の概念を理解してそれを現実の問題に適用できるようにならなかった場合には,単位取得出来る可能性はない(この科目では,中身の無いレポートを出すだけ出しても単位取得の可能性はない)。 |
授業の詳細8 |
科目の位置付け
継承科目 『7人の気魄』、『世界一を目指せ』の継承科目である。
履修の前提となる科目: 『情報と倫理』の単位を取得していることが望ましい。
同時履修が必要な科目(単位既取得者は除く): 『スタディスキルズ1』 |
授業の詳細9 |
履修にあたっての重要な注意
(1)継承科目としての位置付け この科目は、『世界一を目指せ(旧科目名称:7人の気魄)』の継承科目であり、両者の単位を重複して取得することは出来ません。 したがって『世界一を目指せ』あるいは『7人の気魄』の単位を取得済の学生は履修することは出来ません。この制限は全ての学生に 適用されるので注意して下さい。
(2)平成20年度(2008年度)に1年生向け科目として新設されたことによる位置付け この科目は平成20年度(2008年度)に1年生向け科目として新設されました。したがって原則として、平成20年度に1年次だった学生、 あるいは平成20年度以降に入学した学生しか履修することが出来ません。
(学年(期生)別の履修にあたっての注意) ・ 工学群(情報学群、環境理工学群、システム工学群)及びマネジメント学部の新入生(13期生)は相談不要なので、そのまま履修 して下さい。
・『世界一を目指せ』の単位を未修得の工学部及びマネジメント学部の2年生(12期生)については、『文化としての戦略と戦術』 の再履修でなければそのまま履修して下さい。『文化としての戦略と戦術』の再履修の学生については、平成21年度については、 履修人数によっては履修をお断りすることがあります。なお『世界一を目指せ』を平成20年度に履修したが単位取得できなかった学生 はここでは再履修とは見なしません。
・ 3年生については一切履修を認めません。相談にも応じません。留年や休学して1年生あるいは2年生として扱われる学生であって も12期生あるいは13期生でなければ履修できません。また12期生や13期生であっても3年次編入の編入学学生は履修できま せん(編入学学生の履修に関わるルールによる)。
・ 4年生以上で『世界一を目指せ』と『7人の気魄』のいずれの単位も未修得の学生であって、かつ本科目を履修したい情熱あふれる 学生については個別に相談いたしますので、10月の履修変更期間中のオフィスアワーに篠森教員室A419を訪ねてください。その際、 必ず成績表を持参して下さい。相談の結果としてしか履修を認めません。従って、4月の履修登録において履修登録することは認めま せん。
以上 |
授業の詳細10 |
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