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タイトル「2009年度シラバス」、フォルダ「2009年度シラバス?情報学群専門科目
シラバスの詳細は以下となります。
科目名 情報と倫理 
担当教員 篠森 敬三 
対象学年 1年  クラス 学部:専門001 
講義室 A106  開講学期 1学期 
曜日・時限 月2,木2  単位区分 選択 
授業形態 一般講義  単位数
準備事項  
備考  
授業の詳細1 授業の到達目標及びテーマ
(1)倫理に対する理解
? 規範倫理学の基本的な考え方について理解する。
? 倫理と、法や宗教、慣習などとの差異を理解する。
(2)倫理におけるスキル形成
? 倫理学における基礎的諸概念を正しく理解し、自分でも使えるようにする。
? 帰結主義と非帰結主義との違いを軸にして、倫理的利己主義、功利主義、義務論、正義論の4つの基本的前提は何かを理解し、それが具体的な問題についての判断においてどのような違いをもたらすかを自分で考えることが出来る。
? 実際の事例について、いくつかのケースメソッド的議論に参加することで、多様な議論の中から倫理的行動を確保するための方法について検討する経験を得る。
(3)指導者としての倫理的判断の展開
? 倫理学的概念にもとづいてさまざまな対策を考案し、かつそれを議論や報告書の形で展開することによって、組織全体に対して倫理的判断を敷衍させるという作業のひな形を体験することによって事前経験を得る。
 
授業の詳細2 授業の概要
情報学群の学生としての倫理を学びながら規範倫理学の考えかたを理解し、ビジネス事例における倫理的行動をケースメソッド的に議論しながら、自らの行動規範となる倫理を確立していくための道筋をつけることを目標とする。
情報学群において、という制限をつけたとしても、本質的な倫理を教えることは、なかなか困難な作業である。なぜならば本質的な倫理とは、様々な一回限りの事象、しばしば矛盾的で危機的で切迫した状況であるが、において適切な行動をするための価値判断を伴う規範であり、そしてそれは社会的合意や制約の下に成立するものである。したがって、幅広く深い社会的背景に対する理解を伴った、根元的な倫理的思想こそが重要となるからである。それは例えば、いままでの学生諸君が受けてきた教育で聞いてきたような「**してはいけません」といった規則=一種の法、とは本質的に異なるものである。というのも法は、政治的行動を除けば従う他にないものであり、従う限りにおいて深い思考を必ずしも必要としないからである(従わない、従えない場合には、裁判となり、そこでは当然深い議論が必要とされることが多い)。一方、(特に規範倫理学の考え方では、)倫理とは、社会的合意と制約の下で各人が考えていくものであり、画一的な答えは用意されていない。
 そこで,講義において「本質的な倫理」と教員が考える有用な思想、や、事例においてそれらを応用する手法、を教えることが授業の動機である。それにより、自律的に物事を判断できる指導的役割を果たす人材の育成に寄与することが最終目的である。
 
授業の詳細3 講義の進め方
最初は、大学や情報学群における学則や規則などを具体例として、その背景となる規範的倫理の必要性について考えることで、全体の導入とする(1〜2コマ程度)。
続いて、規範倫理学をベースに、倫理学の成果である様々な考え方や立場について概説する。これらに理解の下で(筆記試験で到達度を判定した上で)、教科書などに提示されているビジネス上の事例にそってビジネス倫理学の実例について、それらを紹介し、また学生諸君を交えて議論していく。この手法をケースメソッドという。いわゆるケーススタディと異なる点は、最善手を先生が教えてそれを覚えるのではなく、最善手というものがひとつに限定されない設定条件下で、さまざまな判断(オプション)を学生自らが考え、その考えを全体に説明していく点にある。
なお、導入部分以外は、新入生科目ということもありしばらくは指定教科書に準拠して進んでいきたい、また、対象が新入生ということで、学生諸君に対する便宜を図る上で、大学や情報学群における規則を説明する際に、便宜的に倫理の話とは少しはずれて詳細なルールの解説を行う場合がある。これは従来の工学部情報システム工学科が新入生に対するガイダンスとして実施してきた『セミナー1』が果たしてきた学科(今は学群)の独自ルールの解説を行う独立した科目がないことに対する措置であるのでよろしくご理解願いたい。
 
授業の詳細4 履修者への注意
・授業の内容について
 上記のように、本講義では倫理的思考を実際の事例に対して適用するという応用力をつけることがその目的であるので、「倫理の歴史」とか「記号論」とか「学問としての倫理学自体」を教えることを目的としていない。また法を教えるのではない、ということは、「一般的な情報分野における倫理の授業」で教授されている知的所有権とか著作権とか特許法など既存の法について講義するものではないことも意味している(それらについては4年生科目の『知的財産権と特許』等で講義される)。
 さらに(講義の目的から既に明らかであるが)、昨今関心が高まっている情報関連の話題で、例えば「メールにおけるなりすましはやめましょう」や「ネットークションの危険性」といった単なるルールやマナーの説明や注意を与えることを目的ともしていない。あくまでも自律的に物事を判断できるようになるための倫理的思考の獲得が目的である。
 上記で「教えていない」「目的としていない」という内容を期待して授業を履修して、途中からいなくなる学生がときどき見受けられるが、そのようなことの無いように願いたい。また新入生は出来るだけ履修してもらいたい。
 
授業の詳細5 授業計画
授業と演習の日程(予定)も記載する。変更などは1Qでの最初の授業の時に説明する。なお特に以下に指定のない専門科目演習の日(及び時限)では「情報と倫理」の専門科目演習(あるいはその時間における授業)は行わない(他の科目の演習の時間であろう)。
(注:以下で、主テキストとは『ビジネスの倫理学 (現代社会の倫理を考える・第3巻)』、梅津光弘著のことである。)
1〜2.学生生活における規範と倫理(4月9日および13日を予定)
  ・導入&学生生活の規範 ・大学生としての倫理
  ・情報システム工学科の規則を参考に倫理を考える。
3〜9.理論としてのビジネス倫理
    (4月16、20日、23日1限、23日2限、27日、30日、5月11日を予定)
(注:4月23日1限の専門科目演習は演習ではなく通常の授業を実施する予定(第5回))
(注:4月30日と5月11日の1限の専門科目演習の時間に演習を実施する予定)
(注:5月7日は休講である)
  ・規範論理学の基本的な考え方
     (主テキストの第1章と第2章「規範理論としての倫理」に対応)
  ・倫理的利己主義について
     (主テキストの第3章「倫理的利己主義とリバータリアニズム」に対応)
  ・功利主義について(主テキストの第4章「功利主義と費用・便益分析」に対応)
  ・義務論について(主テキストの第5章「義務論」に対応)
 
授業の詳細6   ・正義論について(主テキストの第6章「正義論」に対応)
「特別演習」(4月30日,5月11日の1限の専門科目演習の時間に実施を予定)
   筆記試験に対応した演習によって理解度の事前確認を行う予定である。

筆記試験(5月14日を予定)
規範倫理学の基礎やこれまでに習った基礎的処理概念を正しく理解しているかどうかについての試験を受けることにより、これらの修得状況について確認する。

10〜14.実践としてのビジネス倫理(ケースメソッドによる議論)
   (5月18日,21日,25日,28日,6月1日を予定)
(注:10-14回に対応する専門科目演習は今のところ行わない予定)
  ・グループ分けとケースへの取り組み付いて解説。グループごとの討議と準備
   (5月18日を予定。最も重要なので欠席しないこと)。
  ・ケース1〜4(5月21日、25日、28日、6月1日を予定)
    (主テキストの第7〜11章に対応。最近の事例を取り上げる場合有り)
「特別演習」(今のところ行わない予定。進行状況によっては実施。)  
・ レポート提出に対応した演習(レポートの書き方など)等を実施。
15.最終レポート作成について(6月4日の予定)
  ・最終課題レポートの作成の手引き
  ・今後への展開
 
授業の詳細7 テキストまたは参考書
テキスト:『ビジネスの倫理学 (現代社会の倫理を考える・第3巻)』、梅津光弘著(丸善、2002年)ISBN 4-621-04992-5 C1312、¥ 1,900+税。その他必要に応じて参考資料を配布する場合がある。
参考書 :必要があれば紹介する。
 
授業の詳細8 学生に対する評価
 本講義では、重みづけを、筆記試験 30%、グループ単位によるケースメソッド議論とレポートの得点35%、最終課題個人レポート30%、小レポート&小テスト5%(予定)として評価する。それらの得点は、以下の到達度判定に用いられる。最終的な成績評価は到達度によって決められる。なお出席点は加算しないけれども、自分のグループ発表の回に欠席するなどの場合には、欠席減点を行う。
F判定  C判定で定める到達度に到達していない場合で、単位取得は認めない。
C判定  講義内容1〜8の内容で学んだ倫理上の概念を理解し、説明することが出来る能力に到達した。
B判定  講義内容10〜14で取り上げるケースメソッドにおける各ケースの事例に対して、1〜8の内容で学んだ倫理的概念を当てはめて分析し、倫理的適合性を判断することのできる能力に到達した。
A判定  B判定の到達度に加えて、各ケースメソッドの事例に即して、有効な対策や倫理的判断を自ら考え、かつそれを公開討論の場で説明し、議論した上で、報告書にまとめることのできる能力に到達した。
AA判定 A判定の到達度に加えて、ケースメソッドにおける公開討論での議論や問題点の指摘をふまえて、さらに対策や判断を高度化し、普遍的に受け入れられることができる倫理的判断と対策を構築してそれを報告書の形でまとめることのできる能力に到達した。
 
授業の詳細9  筆記試験は主としてC判定の到達度(試験範囲は講義内容9まで)を判定し、ケースメソッドにおけるグループ単位の議論やレポートはB,A判定の到達度、最終課題個人レポートはA,AA判定の到達度を判定することを主目的として実施される。F判定ではあるが一部特定領域(ある一部の講義内容)を除けばC判定到達度を満たしていると考えられる学生については、その領域に関する追加レポート課題を与え、そのレポートの得点を到達度判定に加える場合もあるが、例年実施されてはいない。これはそのような極端に異なる成果を上げる学生がいないことによる。倫理的思想を理解していれば議論もきちんとおこなえ、また報告書も書ける、というごく当たり前の結果を反映しているといえよう。
 演習では自主採点方式を用い、成績評価には加味しない。また講義自体の出席はたぶん取らない。ただしグループ討論の出欠は成績に加味される(出席点は加算しないけれども、自分のグループ発表の回に欠席するなどの場合には、欠席減点を行う)。したがって最終的に、様々な倫理的概念を理解してそれを現実の問題に適用できるようにならなかった場合には、単位取得出来る可能性はない(この科目では,中身の無いレポートを出すだけ出しても単位取得の可能性はない)。
 
授業の詳細10  


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