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タイトル「2009年度シラバス」、フォルダ「2009年度シラバス?社会システム工学科専門科目
シラバスの詳細は以下となります。
科目名 耐風設計 
担当教員 藤澤 伸光 
対象学年 4年  クラス 学部:専門001 
講義室 B106  開講学期 2学期 
曜日・時限 火2,金2  単位区分 選択 
授業形態 一般講義  単位数
準備事項  
備考  
授業の詳細1 講義の目的
  
日本は台風常襲国であり,強風は,地震と並んで自然が構造物に及ぼす厳しい荷重のひとつとなっている.風が構造物に及ぼす荷重作用は複雑であり,特に長大橋や超高層ビルなどの柔構造では,動的荷重作用による振動問題にも十分な注意が必要である.本講義では,主に橋梁を対象として耐風設計法の概要とともに,その骨格をなす考え方を理解するのに必要な力学的,数学的手法を学ぶ.
 
授業の詳細2 講義の進め方
  
日本における橋梁の耐風設計体系を主たる対象とし,必要に応じて,設計体系を理解するのに必要な流体力学の基礎,振動学,複素関数論を中心とした数学的手法などを講義する.基本的に講義中心であるが,中間で周期関数をフーリエ級数に展開する演習(レポート),最終回には各自が選択した橋梁の耐風性を道路橋耐風設計便覧が示す手順に従って照査する演習を行う.また,講義終了までに,至近に日本で発生した強風災害を調査し,耐風設計の観点から被害について考察するレポートの提出を求める.

達成目標
精密な耐風設計を実施するには,極めて専門的かつ高度な知識が必要であるが,実際には耐風設計に対する知識の欠如から,必要な検討すら行われないことから生じる事故の方が問題が大きい.したがって,本講義では,構造物に生じる様々な現象とそれらに対処するための設計法の概要を理解すること,設計体系の元になっている手法に関する理解を深めることを目標とする.
 
授業の詳細3 講義計画
  
1. 構造物に対する風の作用
主として橋梁に関する国内の風荷重規定や耐風設計指針などを概観しながら,構造物に及ぼす風の作用を概観する.

2.速度圧とベルヌーイの定理
風荷重の基本は,速度圧と圧力係数(風力係数)である.速度圧を理解するのに必要な連続の式,ベルヌーイの定理などの流体力学の基礎知識を学ぶ.

3〜4.自然風の特性
自然風は,理想化された流体モデルとは異なって複雑な特性を持つ.ここでは,自然の風の成因,実際に地上で観測される風の諸特性および風の特性に影響を及ぼす因子について学び,これらの風の特性と構造物に対する作用の関係について理解する.

5〜6.風速変動特性(パワースペクトル)
自然風の風速変動はランダムであり,その特性は確率的にしか記述できない.中でも構造物の振動と密接な関係を持つ風速変動の周波数特性は,一般にパワースペクトル密度関数という関数で表される.ここでは,自己相関関数,フーリエ級数,フーリエ変換などを学び,最終的にパワースペクトルが自己相関関数のフーリエ変換,あるいはフーリエ変換の絶対値の2乗の期待値として導かれることを学ぶ.

7〜8.渦励振と強制振動風による構造物の振動の中で最も発生頻度の高い渦励振について学ぶ.典型的な渦励振は強制振動と理解できるので,ここでは,1自由度ならびに多自由度の線形振動系の自由振動,および強制振動に関する理解を深め,その応用として渦励振を捉える.

 
授業の詳細4 9.ガスト応答長大橋や高層ビルでは,風速変動に起因するランダム振動であるガスト応答が問題となることがある.ガスト応答は渦励振と同様に強制振動であるが,加振力の特性を確率的にしか記述できないところに特徴がある.ここでは,振動系に対する入出力の関係を周波数応答関数,あるいは伝達関数を用いて表す手法を学び,これらを通してガスト応答評価法を理解する.

10〜11.フラッタ風による振動の中で最も危険なフラッタについて学ぶ.フラッタは自励振動であり,線形の範囲では安定問題となる.フラッタに対する安定性判別が固有値問題に帰することを学ぶとともに,多自由度系フラッタ問題を固有値問題として定式化するための状態方程式表示などを通じてシステムの安定性解析に対する理解を深める.

12.制振対策風による振動を抑えるための制振対策には機械的方法と空気力学的方法がある.橋梁の主桁や吊形式橋梁の塔などの制振に用いられてきた各種の振動対策の事例を通して,現象の特徴に応じて適切な対策を選択することの重要性を学ぶ.

13.風洞実験流体の数値解析は,近年,急速な進歩を遂げているが橋梁などの耐風応答を正確に計算することは未だに容易ではなく,耐風設計における風洞実験の重要性は衰えていない.ここでは,橋梁の耐風性を評価するための代表的な風洞実験法を学ぶとともに,本学に設置されている風洞設備を見学する.

14.演習道路橋耐風設計便覧に示された手順に従って,実橋梁の耐風性を照査する手順を経験する.また,この照査の実施により,本講義で学んだ耐風設計体系への理解を具体的な数値を通して深める.

15. 期末試験
 
授業の詳細5 テキスト:
講義時に配布.ただし,耐風設計体系をまとめた出版物は部数限定のため,講義の初めに貸与,講義終了時に返却.

参考書:
『建築物の耐風設計』,大熊・神田・田村著(鹿島出版会),数学,流体力学,振動学に関しては一般の教科書参照

成績評価:
期末試験の成績50点,中間レポート20点,期末レポート30点.期末レポートでは,単なる調査ではなく,耐風設計的な深い考察が行われているかどうかを評価する.詳細は講義時に提示.
履修の前提となる科目:構造の力学1,数学は基礎数学2以上の微積分の知識が必要
 
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