科目名 |
都市問題 |
担当教員 |
荒木 英昭 |
対象学年 |
1年 |
クラス |
学部:人社001 |
講義室 |
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開講学期 |
1学期 |
曜日・時限 |
時間外 |
単位区分 |
選択 |
授業形態 |
一般講義 |
単位数 |
1 |
準備事項 |
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備考 |
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授業の詳細1 |
開講学期 夏期集中講義、冬期集中講義 ※講義日程は時間割を参照すること。
授業の目的 空前絶後の東北関東大震災によって日本の経済および社会は壊滅的打撃を受けたが、その前から国際化の波は激しく日本の国際的地位は低下傾向を続けており我が国の都市や地域社会を取り巻く情勢は厳しい状況にある。行政や企業経営的な業務に就く場合はもちろん、科学者・技術者としていかなる分野に進もうとも、すべて社会人たる者は、経済・社会の現状と動向に大きく眼を開き、都市や地域の将来を洞察する問題意識を常に持たなければならない。本講義では、今次の大震災や原発問題はもちろん、日々新聞等で取り上げられたホットな話題や、重要な問題を臨機応変に取り上げ、当面する都市や社会の喫緊の課題を認識させる。 |
授業の詳細2 |
授業の進め方 現在の我が国の都市や社会に関する問題意識を喚起することに主眼をおいているので、網羅的・体系的説明よりもインパクトが強 い興味ある事象をPOWERPOINT で端的に示すことに力点を置きたい.初回に講義要旨を記したレジュメを配布するが、各回の講 義においてはレジュメを逸脱することも厭わず、問題が複雑であり種々の見解があり得るということを自由討論などで感得させたい。 授業の目標 この講義を受講したことを契機として、学生たちが経済・社会の動向、都市問題に活き活きとした問題意識・関心を持つようになるこ とこそが、当講義の目指すところである。 授業計画 1.途方に暮れている我が国の経済・社会 (1)経済学と経済学的考え方 都市や社会の動向等に関して判断や予測をするには経済学の基礎的な知識と経済学的な考え方が欠かせないことを認識させる。 (2)東北関東大震災による日本経済への甚大な打撃 2011 年3 月11 日に突如東日本を襲った大震災の被害は、阪神大震災の規模をはるかに上回り,地震とそれに伴う大津波による 直接的被害だけでも数十兆円に上り、その後長引く停電と3 月末現在終息の見通しが立っていない東電福島第一原発がより悪化 するならば、放射能の汚染が止めどもなく広まり日本経済は壊滅的打撃を蒙ることになる。地球温暖化対策の一環として我が国 は原子力発電にかなり依存を深めようとしていたが、エネルギー政策は根本的見直しが迫られている。 (3)経済のグローバル化 日本の経済・社会をいま支配している大きな潮流が経済のグローバル化の大勢。いま世界は単一の市場となりつつあり、日本がこ れに適応するためには世界的視野で比較して不適合な地域、労働力、企業は淘汰されていかざるを得ない厳しい時代に入った。 (4)深刻な国家財政と地方財政 長引いた不況による深刻な税収不足と景気対策として乱発された国債、地方債により今次の大震災以前から日本はGDP 比180 %という先進国で有数の公債残高に喘いできたが、これに数10 兆円の震災対策の赤字国債を発行せざるを得ない状況である。 |
授業の詳細3 |
(5)生きていく途を見失っている日本 地形的条件が悪く、地震等の災害の危険が高い我が国で、国際分業の時代に原材料や石油等のエネルギー資源を輸入して日本 の国内で工業製品を製造・加工し輸出で生きていくという途が成り立たなくなってくると、今後何を主軸として生きていけばよいのか 途方に暮れ、政治も方向性を見失っている。大震災からの復興計画を練り、20 年、30 年先の国家像を明確に描き示す必要がある。 (6)少子化・高齢化-直面している避けがたい難題 日本の出生率は近年若干回復し2008 年に1.37 であるが、劇的な回復がなければ日本の総人口は100 年後には半減すると予測 されており、国内市場の縮小や、年金制度の崩壊等少子化・高齢化は今後の我が国の経済・社会の今後を左右する難題である。 |
授業の詳細4 |
2.わが国の都市、経済・社会が直面しているいくつかの大きな課題 最近大きな話題になっている問題や、一部の識者が鋭く指摘している難題もたくさんあるがそのうち興味深いいくつかを取り上げる。 (1)不安定化する家庭、地域、社会 1)家庭の崩壊、希薄化する地域コミュニティ 離婚の増大等温かな家庭そのものが激減しつつある。人生観、生活様式等が著しく 変わりつつあるが、これからの市民は何に依存し何を求めて行くのか、 2)格差社会 フリーターやNEET(Not in Education, Employment or Training)がじわじわと増加するなど、アメリカ型の実力主義の経 済運営を志向した結果、わが国は少数の勝者と多数の弱者・落伍者に分裂していく傾向が見られるようになり、社会は不安定化しつ つある。将来に何の希望も持ち得ない多くの若者の存在を放置していては美しかった日本の社会秩序が崩壊する。 3)地域格差 好景気に沸く多くの大企業や、東京都、愛知県等の勝ち組的地域とはかけ離れて、高知県や青森県、秋田県等の地 理的・地形的に恵まれない悪条件の地方部は、依然有効求人倍率は低く、人口減に悩まされつつある。政府も戦後一貫して東京を 抑制し「国土の均衡ある発展」を最大の地域政策の課題としてきたが、東京の繁栄に対し、衰退する地方の恨みは爆発寸前にまで 至っていたところで大震災を迎えた。 |
授業の詳細5 |
(2)安全な町づくり 災害、犯罪、交通事故等安全な市民生活を脅かす要因は、都市地域に少なくない。「安全」こそは都市存立の最重要課題である。 今後も東海地震、東南海地震、南海地震等大地震の襲来が高い確率で予測され、日本独特の悪地形のため大津波の危険も大き く、台風、集中豪雨の被害も避けられないなど自然災害に強い国土利用、災害対策は極めて重要である。また近年のわが国諸都市 の治安問題の深刻さ複雑さは重大であり、教育、民生、都市設計等総力を挙げて対策を講じる必要がある。 (3)地方都市の商店街の衰退と新しい商業の動き マイカーの普及等により、地方都市の中心商店街は潰滅的な客離れの危機に遭遇している。その深刻な実態を知るとともに、コン パクトシティという都市政策の新しい潮流やまちづくり三法等の中心市街地活性化策を検証する。他方、IC カード、インターネット等に よる電子商取引等新しい商業の動向を展望する。 (4)福祉と健康 1)市民の福祉を支えるソフトとハード 高齢化社会になり、福祉は都市や地域社会が存立する最重要なキーワードとなりつつあ る。市民の福祉は、介護保険等の介護サービス、介護老人保健施設等の制度面、施設面のハード、ソフト双方あい携えて支えてい かなければならない。 人びとの日常の暮らしと幸せは、健康で快適な居住空間を構築することで産み出し護っていくことも重要である。日本は都市政策で 住宅を軽視して来たが、とかく見落としがちの住宅などの身近な施設、身近な空間を充実させることの重要さを認識したい。 2)医療問題 国民の健康を護ってきた我が国の医療システムはそれなりに誇るべき点もあったが、いま崩壊の危機に直面してい る。我が国の医療保険制度は、巨額な赤字から老人の入院期間の合理化等必死の改善策を講じてはいるが、それでも、小児科医 や産科医不足は深刻であり、地方では医師不足と赤字から病院の閉鎖が続き出産も容易でない状況になっている。 (5)地球温暖化対策 これからの世界は、地球温暖化対策を組み込んだ経済運営をなさざるを得ず、日本も鳩山前総理が明確な根拠や検討もなく温室効 果ガスを2020 年までに90 年比25%削減すると打ち上げたのに対し、日本経済に深刻な影響を与えると経済界は反発を強めていた が、この度の大震災で原発の危険性が再認識され世界各国とも温暖化対策を抜本的に再検討する機運が高まっている。 |
授業の詳細6 |
(6)国際化と情報化 地球規模で変革をもたらしつつあるIT 革命により、都市の在り方も根底から変革しつつある。交通・情報通信の著しい発達により 島国日本も第二の開国ともいうべき国際化の波が襲いつつある。国際化・情報化といううねりが日本の国土構造・都市構造、企業活 動、市民生活を大きく変えるであろうことを展望する。 (7)交通問題 1)都市を支える交通 都市は人と物資が集約的に集まって活動がなされている場であるから、交通の円滑な処理は都市の生命線 である。中国、韓国は国を挙げてハブ空港や拠点港湾の整備に躍起だが、新幹線、空港、高速道路、港湾等の基幹的交通施設の 整備は、都市の立地条件、支配関係を劇的に改変する。 また、市民が通勤・通学、買物、医療等の日常活動を行ううえで、バス、自転車、駐車場、駐輪場等身近な交通手段、交通施設は欠 かせない。駅前広場やバス停留所等交通結節点や端末での地域交通の現状は、都市間交通の目覚しい発展に取り残されており、 ユニバーサルデザイン等新しい設計思想も取り入れられつつあるが、いま最も技術面・経営面で画期的なアイデアによる改善が期 待されている分野である。 2)交通を支える技術開発 自動車交通においては、インテリジェント化に各国,関連する多くの分野の企業が総力を挙げて取り組ん でいるが、先進安全自動車(ASV)という意欲的な安全対策も進められている。他方、ディーゼル車の騒音、排気ガス対策も進められ ている。鉄軌道系でも、リニア方式の地下鉄や新交通システムや近代的な路面電車LRT が普及しつつあるが、画期的な発想による 技術開発が渇望されている。 |
授業の詳細7 |
3.試験 ノート、参考書等持込不可。都市問題は広義に考え、経済・社会の基礎的知識も出題範囲とする。記述式の回答を求める設問にか なりのウエイトを置き単なる記憶よりも問題意識の強さを高く評価する。就職試験で最も嫌われる乱雑な答案は厳しく減点する。 ◆テキスト: 特になし。講義時に要点を整理したレジュメを配布する。 ◆参 考 書: 『国土交通白書』を始めとする政府の各白書、文芸春秋編『日本の論点』、弘兼憲史『知識ゼロからの経済学入門、幻 冬舎』等のほかに、林信吾『忍び寄るネオ階級社会、ちくま新書』、梅田望夫『ウェブ進化論、ちくま新書』等々の新書なら780 円程度 で読みやすく書いてくれているので、興味を持ったテーマのものをこの機会に何冊かは読んでみること。同様に『週刊ダイヤモンド』 『週刊東洋経済』『エコノミスト』等の週刊経済誌も大震災が日本経済に及ぼす深刻な影響、第二の開国といわれるTPP 加入問題、 中国経済の動向等その時最も関心の深い経済・社会事案について特集を組んでくれるので要注意。今後常に新聞各紙、もしくはイン ターネット等で経済、都市問題に関する記事、特に解説をよく読むこと。 ◆成績評価: 講義で特に強調した重要な都市問題の概略が理解できていればC。幾つもの都市問題に十分な関心を持ち、事実を踏 まえてその因果関係を考察した上で、適切に自分の意見を記述できればAA。 |
授業の詳細8 |
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授業の詳細9 |
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授業の詳細10 |
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