科目名 |
感覚・神経生物学 |
担当教員 |
繁桝 博昭 |
対象学年 |
2年 |
クラス |
学部:専門001 |
講義室 |
A107 |
開講学期 |
1学期 |
曜日・時限 |
火1,金1 |
単位区分 |
選択 |
授業形態 |
一般講義 |
単位数 |
2 |
準備事項 |
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備考 |
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授業の詳細1 |
■ 講義の目的 脳や神経を持つ生物は,自己の周りの環境に対して適切な情報処理を行うことで適応的に生存している.長い時間をかけて進化してきた生物の脳・神経系には優れた点も多く,脳・神経系を情報処理システムとして捉え,それについて学ぶことは,効率的な情報処理や新しい情報工学を考える上でも有用である.感覚・知覚の特性やそのしくみを知ることは,ヒトと機械のインタフェースを最適化するためにも必要である.本講義では,こうした側面からヒトをはじめとした生物の感覚・知覚における脳・神経系のメカニズムについて学ぶことを目的とする.
■ 授業の進め方
本講義では,まず神経細胞や脳の基本的な構造や機能を学び,その後,五感(視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚)の脳・神経系による情報処理をそれぞれ習得する.視覚に関してはこれまで脳・神経系の情報処理について盛んに研究が行われており,明らかにされた知見も多いため,数回に渡って講義を行う.特に本講義では,1Qに開講される「知覚と認識」において時間的制約のため詳しく扱うことのできなかった内容について重点的に取り上げる.さらに,近年大きく進展している脳の神経活動を利用して脳と機械を直接結ぶブレイン・マシン・インタフェース技術の最新の知見についても学ぶ. なお,本講義では通常の講義の他に演習を適宜行い,学んだ内容の理解度,到達度のチェックを行う.
■ 達成目標
1. 生物の脳・神経系による感覚・知覚情報処理について基本的な知識を習得し,説明することができる. 2. 認知神経科学の方法論について理解し,説明することができる. 3. 生物の情報処理をモデル化する工学的な実現の方法を知り,評価できる. 4. ヒトの感覚・知覚の特性や神経活動を利用したインタフェースについて考案することができる. |
授業の詳細2 |
■ 授業計画
1.導入 本講義の内容について概観する. 2.神経細胞(ニューロン),神経ネットワーク 脳・神経系の構成単位であるニューロンのしくみと神経信号の伝達の機序について学ぶ. (トピックス:ニューロンとシナプス,活動電位,神経伝達物質) 3.脳の構造と機能,脳情報処理 脳の解剖学的な構造と,脳の各領野の機能について学ぶ. (トピックス:局在論・全体論,可塑性,脳地図,離断脳) 4.神経科学研究法 脳・神経系を研究する手法として,ニューロンの活動を直接測定する手法,および脳活動を非侵襲的に測定する手法について学ぶ. (トピックス:ニューロン活動記録,MRI,MEG,EEG,TMS)
演習1: 脳・神経系の構造と機能,神経科学研究法に関する演習を行う. |
授業の詳細3 |
5.視覚1:初期視覚の神経機構 網膜から脳へと至る初期視覚の情報処理について概説し,視覚系のニューロンの特性を学ぶ. (トピックス:大細胞系・小細胞系,視覚野,方位選択性細胞,主観的輪郭) 6.視覚2:運動視 ダイナミックに変化する外界の情報を視覚系がどのように処理し,動きの知覚をもたらすのかを学ぶ. (トピックス:方向選択性細胞,MT野・MST野,運動残効,窓問題,オプティックフロー) 7.視覚3:立体視 視覚系が2次元の網膜像からどのように3次元世界を復元し,立体や奥行きの知覚をもたらすのかを学ぶ. (トピックス:両眼水平視差・垂直視差,運動視差,視差検出細胞,対応問題) 8.視覚4:物体認知,高次視覚 物体や顔の知覚など,視覚系における比較的高次な処理について学ぶ.また,脳の損傷によって生じる高次の機能障害についても学ぶ. (トピックス:顔細胞,パタン認識,図と地,失認,共感覚) 9.注意と意識 環境に存在する過剰な情報処理資源を効率的に処理することを可能にする注意のメカニズムについて学ぶ.また,神経科学の手法を用いて意識とは何かを明らかにしようとする研究について学ぶ. (トピックス:トップダウン・ボトムアップ,半側空間無視,両眼視野闘争)
演習2: 視覚および注意と意識についての演習を行う. |
授業の詳細4 |
10.聴覚 音響信号を神経信号に変換する聴覚系の神経機構について学ぶ. (トピックス:聴覚フィルタ,蝸牛,音源定位,ピッチ) 11.触覚,体性感覚 触覚のしくみや自らの身体像の感覚について学ぶ. (トピックス:ホムンクルス,身体像,幻肢,ラバーハンド錯覚) 12.味覚・嗅覚,平衡覚・回転覚,時間感覚 化学物質の感覚である味覚と嗅覚の神経機構,平衡感覚をもたらす前庭器官,および時間感覚について学ぶ. (トピックス:化学感覚,前庭器官,意識の時間特性) 13.ブレイン・マシン・インタフェース 脳と機械を直接結ぶブレイン・マシン・インタフェース(BMI)研究の最前線について学ぶ. (トピックス:侵襲型・非侵襲型BMI,入力型・主力型BMI) 14.計算論的神経科学とマインドリーディング 脳における情報処理を工学的にモデル化する計算論的神経科学についての基礎的な内容,および脳情報から知覚や心を推定する技術について学ぶ. (トピックス:マーの3つのレベル,ニューラルネット,神経デコーディング)
演習3: 視覚以外の感覚,学習と記憶,および神経科学の工学的応用についての演習を行う.
15.これまでの講義内容についての習熟度確認を行う.
16. 15回目の講義でおこなった習熟度確認の課題について解説する. |
授業の詳細5 |
■ 成績評価
講義中に行う小課題(10%),3回の演習の課題(30%),習熟度確認の成績(60%)により総合的に評価する.
AA:課題の達成度および習熟度確認の成績が非常に高い場合 A:課題の達成度および習熟度確認の成績が高い場合 B:課題の達成度および習熟度確認の成績が全体的に基準を超えている場合 C:課題の達成度および習熟度確認の成績が部分的に基準を超えている場合
■ テキスト
・「イラストレクチャー 認知神経科学 ―心理学と脳科学が解くこころの仕組み―」 村上郁也編 (オーム社)ISBN-13: 978-4274208225
■ 参考書
・「視覚I」 内川惠二,篠森敬三編 (朝倉書店)ISBN-13: 978-4254106312 ・「視覚II」 内川惠二,塩入諭編 (朝倉書店)ISBN-13: 978-4254106329 ・「視覚情報処理ハンドブック」 日本視覚学会編 (朝倉書店)ISBN-13: 978-4254101577 ・「ブレイン‐マシン・インタフェース最前線 ―脳と機械をむすぶ革新技術」 櫻井芳雄,小池康晴,鈴木隆文,八木透著 (工業調査会)ISBN-13: 978-4769351344
その他,講義中に適宜紹介する.
■ 履修前の受講が望ましい科目: 「知覚と認識」 |
授業の詳細6 |
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授業の詳細7 |
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授業の詳細8 |
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授業の詳細9 |
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授業の詳細10 |
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