組み合わせは無限大。未知の可能性を秘めた高分子材料

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杉本 隆一SUGIMOTO Ryuichi

専門分野

高分子合成化学、有機金属化学

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導電性高分子材料の簡単・安価な高機能が可能に

私たちの身の回りにあふれている高分子材料。数千から1万以上もの分子が化学結合してできた物質で、商品を包装する容器やビニール袋に使われるポリエチレン、ポリスチレンをはじめ、ペットボトルや化学繊維にも用いられるなど数多くの種類がある。

 杉本先生は、高分子材料に機能を持たせた高機能材料の開発に長年にわたって取り組んできた。近年の成果として、芳香族化合物同士を酸化重合法によって結合することで、新たな高分子骨格を持つ、まったく新しい性質を持つ芳香族系導電性高分子材料の合成に成功した。

「安価で手軽に入手できる芳香族系化合物を複数組み合わせ、空気中かつ室温での簡便な操作によって、溶媒への可溶性と加熱による溶融性を持つ芳香族系導電性高分子材料が得られました。この技術によって、容易で安価に芳香族系導電性高分子材料を高機能化できるため、コストが大幅に削減できます」

 杉本先生はこの技術を使って、さまざまなベンゼン系、非ベンゼン系芳香族化合物からなる共重合体を合成できることを実証している。得られた共重合体の多くは溶媒への可溶性と加熱による溶融性を持ち、安定で扱いやすいことから、芳香族系導電性高分子材料の特性の解明をさらに進め、新機能を引き出せると期待されている。

 酸化重合研究の第一人者であり、2015年にそのメカニズムを世界で初めて解明した杉本先生。その深い見識と長年の経験がこの成果をもたらしたと言える。

 その名の通り「電気を通す」という特徴を持つ導電性高分子材料。それだけでなく、光をあてると電気が流れたり、電圧をかけると色が変化したりするという機能も持ち、有機太陽電池や有機LED、化学センサーなど多岐にわたる展開が考えられる。

プラスチックの時代から、環境にやさしいセルロースの時代へ

また近年力を入れているのが、環境にやさしいバイオベース高分子材料や、資源やエネルギーを効率よく使うための高分子材料の合成とそれらの材料の応用研究だ。植物由来原料のバイオマスから得られるセルロースを用いた機能性高分子材料の開発も、そのうちの一つ。

「日本にたくさんある森林で、ほとんど捨てられている間伐材を有効利用したい。まずは木材から生成したセルロースを使って高機能化することを考えています」

 近年、鉄の5倍の強度を持ちながら、重量は5分の1と言われる"セルロースナノファイバー"が世界的に注目を集めている。杉本先生は、セルロースに共役系高分子を結合する簡易な合成法を確立し、セルロースナノファイバーのさらなる高機能化をめざしている。

「鉄より強度が高ければ、自動車などの部材への活用も可能になります。さらに軽さが燃費向上に寄与するだけでなく、植物由来の素材なのでリサイクル性に優れ、環境にもやさしい。いいことづくめですね」

 再生可能なバイオマス資源である植物から高機能な高分子材料が生産できるようになれば、化石資源の消費削減や大気中のCO₂濃度上昇の抑制にもつながる。「将来的に石油がなくなればプラスチックの時代から、セルロースの時代へと転換するでしょう」 と予言する。

 複数の高分子が混ざり合う高分子材料は、どんな高分子をどんな配列で組み合わせるかによって機能が変わってくる。その組み合わせは無限大だ。

「無限にある組み合わせのうち、どれが有用なのかは実際につくってみないとわかりません。だからこそ、高分子材料は未知の可能性を秘めています。今後、ますます高分子の世界は広がっていくでしょう」

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掲載日:2018年6月4日

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