地域実装工学研究室

ローカルデータを地域資源として活かす

地域連携機構が積み重ねてきた社会実装の試みを中心に、地域に眠る様々な未活用データ群の収集・価値化を行い、地域社会の未来をデザインする。

frusawa2.png

背景

データ経済の主戦場が「個人(ヒト)からモノへ」と移ると言われ始めて久しいですが、データ経済・第2幕では、個人消費市場と連動した第1幕とは異なり、地域に眠る種々の未回収データが価値化の潜在性を有すると期待されています。しかしながら、どんなデータ群をどのように利活用すると、地域に社会イノベーションをもたらすかの定型解は未だ存在しません。個人データ流通を基盤とする従来型データビジネスの枠にとらわれない、臨機応変な設計戦略が必要とされています。

そして、このような流動期にこそ、地域固有のシステムデータを、地産地消型の受益目的としてだけでなく、市場流通性のある「デジタル資産」に転換し利活用することを目指すべきなのです。これにより、地域資本の域外流出に一定の歯止めをかけられると期待されるからです。

スマート農林業とデータ工学

データの価値化ステップは「通信・収集・加工・分析・流通」の5ステップに分けられます。このとき、通信・分析インフラのローコスト化ならびに分析技術のオープンソース化が急速に進行していることを考慮すると、地域課題に応じた設計戦略が最も必要なのは、データの「収集・加工」ステップであることが見えてきます。
そこで当研究室では、スマート農林業の実装における大学ならではの貢献として、「どんなデータ群を収集しどう加工・分析することで市場流通性を付与できるか?」に焦点をあて、工学的見地からデータマネジメントを実践します。

具体的には、本地域連携機構がこれまで関わってきた木質バイオマス事業(燃料製造と発電)および施設園芸農業におけるデータ群(物質・エネルギー・お金の3つのデータ流に分類し、環境変数および空間情報と紐づけられた形で格納されたシステムデータの総体)に対して、市場流通性付与(デジタル資産化)するうえで有効な「収集・加工・分析」法を、様々な事業において提案検証していきます。

これらの実践の基底をなす設計戦略群より抽出される方法論は、データ工学と呼ぶことができます。そして当研究室の目標は、データの工学的マネジメントの実践を通したデータ工学の確立にあります。

研究室長から

言説から映像に至る種々データは、構成要素として見たときテキストデータと数値データの2種に還元されます。2構成要素はどちらも、紀元前に発明されてから今に至るまで数千年間、各々に固有な言説的アルゴリズムと数学的アルゴリズムに従って展開・運用されてきた情報媒体です。近年のデータ経済圏の爆発的拡大は、これらの情報媒体を「脳内データ」ではなく「計算機内データ」として扱うことにより、従来とは全く異なる多種多様なアルゴリズムに基づいた大規模かつ統一的展開・運用することが可能となり、社会変革を促す未曽有の威力を発揮することを明示しております。ゆえに計算機内データは、文字、数字の発見に続く、これらとは異質な第3の情報媒体と見なすことができるのです。

以上が、紋切型表現となりつつある「Society 5.0」という言葉のデータ工学的含意です。歴史的分岐点に立っていることに変わりはありません。このような長期的視座から、地域経済のリフォーム案を提言実践することにより、地域におけるシンクタンク・インキュベーション機関の一翼を担って参りたいと考えます。