有用植物活用プロジェクト

県産未利用有用植物の活用に向けた農商工医連携基盤の構築と事業化モデル

平成23年度 高知県産学官連携産業創出研究推進事業 委託業務

高知県委託業務の概要

平成23年度高知県産学官連携産業創出研究推進の一環として、高知工科大学を代表とするグループが委託を受け、平成23年12月1日から平成25年度にかけて、表題に掲げた県産未利用有用植物の活用に向けたプロジェクトを実施しました。

高知県はわが国でもとくに自生植物種の多様性に富む地域ですが、これらは産業利用に向けた「植物資源」としてはほとんど未開拓であるといっても過言ではありません。

このプロジェクトは、研究代表者(高知工科大学地域連携機構・渡邊高志教授)のフィールド調査の結果絞り込まれた300種の植物リストの中から、既に機能性を有する事が明らかになっている未利用有望植物2種について、化粧品・サプリメントの製品化を行い、残りの有望植物についても機能性評価や用途開発の検討を産学官の協働によりシステマチックに進め、将来的に医薬品開発も念頭においた農商工医連携の基盤構築を図るものです。

共同研究として、生理活性物質の単離と化学分析(高知大・金哲史教授)、および生物学的な機能性評価(高知県立大学・渡邊浩幸教授)を行い、さらに、適地栽培体制の確立(㈱フタガミ)や、製品開発、商品化、権利化などまでを、高知県工業技術センターをプラットフォームとして行うことで、事業化モデルを確立しました。

プランツ・アカデミー

植物資源活用プロジェクトでは、資源植物学的な学術研究と並行して、地域における栽培・原料加工などの事業化を目指しました。そのためには、有用植物に関する幅広い知識を持ち、なおかつ事業経営の基礎を習得した人材を地域の中で育成していくことが必要になります。
そこで、プロジェクトの一環としてプランツ・アカデミーを開講することにしました。オーガニック・アドバイザー認定講座、プランツ・インキュベーションコース、フィールド(野外)授業などのコースを実施しました。

以下、各回の概要を紹介します。

オーガニック・アドバイザー認定講座

オーガニック・アドバイザー認定講座:第5回

日 時:2012年3月3日(土) 13:00〜16:00
場 所:マルニ高知店2F COMOサロン
講 師:山崎 泉

プログラム

①講義第1部(試験直前講義)
②オーガニック・アドバイザー試験

1部特別講義(第5回)講師:山崎泉(日本オーガニック推進協議会・理事長)
題目「これまでの復習」

2部特別講義(第5回)講師:山崎泉
題目「オーガニック・アドバイザー試験」

講師:山崎泉(日本オーガニック推進協議会・理事長)

受講者の感想

placa_WS5_1.jpg今日の講義はオーガニック・アドバイザー試験の直前講義でした。試験前ということで、試験のポイントを抑えたまとめの講義を行ってくれました。そこで今日は、これまでの「プランツアカデミー・オーガニックアドバイザー」を受講して思った、まとめの感想を書いてみたいと思います。
今回の一連の講義で私が1番興味を持ったのは、植物から始まる、有機物の循環の話しです。オーガニックについての話しをする上で必ず耳にする「有機物」という言葉があります。有機物とは炭水化物やタンパク質など,生物が作り出す化学物質のことをいいます。そして地球上で植物だけが自給自足で自分の体を作り上げ,有機物をつくることができるのです。

placa_WS5_3.jpg生態系の学問では,こうした植物のことを生産者と言います。この生態系の話しの中で重要なのは「独自に栄養分をつくれるのは植物だけ」ということです。これに対して,微生物や動物は,植物が用意してくれた有機物や,ほかの動物を栄養分として摂り込まなければ生きられない従属栄養生物といいます。動物や微生物は多くの有機物を栄養として体内に摂り込み,それを無機物に変える時に得られる化学エネルギーで生活しています。

placa_WS5_4.jpgこうした,有機物を生み出す植物(生産者),有機物を食べて暮らす動物(消費者),生きるためのエネルギーを得るために有機物を分解する微生物(分解者)の循環が生物社会を成り立たせる物質的基盤になっています。そしてこうした知識の元に、考えだされた考え方がオーガニックです。私たち生物社会が循環して、生き続けるために大切な授業だったと思いました。

オーガニック・アドバイザー認定講座:第4回

日 時:2012年1月28日(土) 13:00〜16:00
場 所:高知県工業技術センター5階 第三研修室
講 師:渡邊浩幸,渡邊高志

プログラム

①あいさつ/講師紹介,②第1部:特別講義第4回,
③第2部:特別講義第4回,④第3部講義(後半:試験問題練習

1部特別講義(第4回)講師:渡邊浩幸(高知県立大学健康栄養学部健康栄養学科・教授)

題目「食品と健康について」講義の内容は,下記の通り。
1.食品とは, 2.栄養素の機能, 3.栄養とは?栄養素とは?, 4.雑食の人間には、栄養素の偏りができる, 5.栄養の営みには、栄養素以外のものも必要。

2部特別講義(第4回)講師:渡邊浩幸(高知県立大学健康栄養学部健康栄養学科・教授)

題目「食品と健康について」講義の内容は,下記の通り。
1.栄養素の基礎知識,2.出生体重と関連して発症する疾患,3.朝食の欠食率,4.サプリメントとは?,5.薬の働き?食品の働き?,6.食品の機能性 ,7.法律で規定されている機能性食品,8.栄養機能食品と、その表示,9.特別用途食品,10.特定保健用食品とは、その適応範囲,11.これからのトクホ。

3部第6講(第4章) 講師講師:渡邊高志 (高知工科大学地域連携機構・教授)

「その他のオーガニック商品-ワイン、化粧品、アロマ、繊維製品などの安心安全について」の基礎知識を学ぶ講義の内容は,下記4‐1)〜4‐5)になります。4‐1)オーガニックワイン、有機清酒,4‐2)オーガニック・コスメティック,4‐3)オーガニック・コットン,4‐4)オーガニック・アロマ,4‐5)有機空間。

受講者は,高知県立大学健康栄養学部の渡邊浩幸教授による特別講義として「食品と健康について」を聴講することで現在日本人が抱えてる食育の問題とこれからの食産業の取り組みについて,地中海式料理を高知県の土佐料理に例え講義を追加することでオーガニックアドバイザーとしての素養を高める試みを行う。第3部の講義では講師による第4講~第5講(第3章‐②、③)の基礎知識を基に講義をすることで,理解度を深めて行きます。本講義は,農林水産省と厚生労働省との縦割り行政の中で抱える問題を「有機清酒」を例に挙げ,有機JAS農産物との違いについて受講者に解り易く解説する。また,受講者は,耳慣れないオーガニック・コスメティックやコットンについての疑問を質問形式で説いていきます。(渡邊記)

講師:渡邊浩幸教授(高知県立大学)

受講者の感想

placa_WS4_1.jpg本日最初の講義第1部{特別講義(第4回)}では,渡邊浩幸先生が「食品と健康について」話されました。講義は自分の体を知る上でとてもいい内容で,食品から得られる,人間に必要な栄養素についてでした。栄養とは,身体に必要な物質を体外から取り入れ,健康を維持・促進するために利用することだそうです。そして体外から取り入れる物質を栄養素といいます。ここで大切なことは,食品の中に含まれるのは栄養ではなく栄養素であり,栄養素を取り込むことを栄養といいます。私たち動物は,栄養素を他の動物,水,植物,微生物,から摂取し,食物連鎖を形成して,それぞれが生命を保ち,子孫を繁栄させて行きます。

食物連鎖では連鎖を続ける意味を知ることが大切だと思います。どこが欠けても連鎖することが難しくなます。また,この食物連鎖の中には,"強すぎる生物,弱すぎる生物はいない"ことに感慨深いところがあります。一定のバランスを維持できない生物は,自ら食物連鎖から外れ,自滅してしまいます。自然の状態では,生物にとって,自分より強い,自分を捕食する側の生物がいる事が,捕食する側の生物と同等に重要ということを学びました。また,生物は食物連鎖の中で様々な栄養素や物質を得ながら,代謝(同化と分解)を行います。口から得た食べ物は,体内で自分の身体と入れ替わり続けます。その事を考えると,人間という1つの生物はその他,何百万種もの生命と同時に生きているのだなと思い,不思議な気持ちになります。こうした生命観は,多くの研究者の苦労の結果,行き着いた答えだと思いますが,もしかすると「無宗教の国でしか受け入れがたいものなのかも」と思いました。科学と化学は神に近づきたい一心から始まりましたが,宗教の文化圏ではいったいどれほど距離を縮めることを許してくれるのでしょうか。とても興味深いです。これは,世界で食品や環境を理解する上で根底となる知識が,共有できるのかという問題に関わります。想像以上に根深い問題のような気がしました。講義中の話しでは,ベジタリアンの話しが出ました。日本人の半分の人は植物だけでは生きていけないそうです。理由は,身体に必要なビタミンB12は植物には含まれないからです。ビタミンB12は微生物によってつくられるので,ベジタリアンは抜け道として海藻を取る方法があります。因にモンゴルの人は野菜だけで生きていけるそうです。その理由は,遺伝子レベルの違いで,必要な栄養素に僅かな違いを与えるからです。講義では,サラダ油と天ぷら油が日本人の心理から生まれたという話がありました。商売戦略から分けられた話しや,アリシンとビタミンB1を合わせたものが,タケダ製薬からでているアリナミンだといった貴重な話を聞けました。

placa_WS4_2.jpg講義第2部{特別講義(第4回)}では,人が消費するエネルギーの話しからダイエットの興味深い話しが聞けました。人が消費するエネルギーは,大きく分けて3つあり,「基礎代謝/生活活動代謝/食事誘導性熱産生」ということを学びました。基礎代謝は寝ていても消費し,呼吸や内臓などをはじめとした生命維持のためのエネルギーを指すとのことです。生活活動代謝は,歩いたり仕事をしたり,スポーツ・エクササイズなどいった活動することで消費するエネルギーのことを学びました。そして食事誘導性熱産生は,食事をするときに消費するエネルギーで,DITと呼ばれます。この人が1日に消費するエネルギーの割合は,基礎代謝が7割,生活活動代謝が2割,食事誘導性熱産生(DIT)は1割だそうです。

体を動かして消費するエネルギー量は,意識して動かしてもたいして消費できません。ラクしてダイエットするにはDITを意識して高める方が簡単だそうです。例えば冷たいものより温かい食べ物を食べたり,香辛料が効いたものを摂ると消費エネルギー量が増えるそうです。講義では女性の方がなぜ長生きするかという話しがあり,老化促進の原因となる酸化ストレスを女性の方が軽減しやすく,体内の鉄分が深く関係しているそうです。更年期を迎えるまでの女性には生理があり,定期的に血液中に含まれる鉄を放出しているので,男性と比べ体内に鉄が蓄積しにくく,その有害作用を回避できるとのことです。逆に男性は,生活面で活性酸素が発生しやすい状況にあり,女性と比べ酸化ストレスによる老化促進から寿命の短縮が起こりやすいそうです。なぜ,女性の方が長生きなのか,はっきりした理由はいままで聞いた事がなかったのですっきりしました。今回の講義でも生活に密着した興味深い話が,ここまでに上げた話し以上に沢山ありました。特に胎児期の子供の話しは興味深いものでした。それは,胎児期の栄養不足によって,小さく生まれた赤ちゃんは,大人になってから,高血圧や心臓病,糖尿病などの成人病のリスクが高くなる,というものです。これは成人病胎児期発症説という学説でイギリスのサウザンプトン大学医学部のデイヴィッド・バーカー教授が20年ほど前から提唱し始めた説です。大人になってからなぜ成人病のリスクが高くなるかというと,例えば胎児の腎臓が作られていくある特定の時期に,栄養不足が起こると,腎臓糸球体の数が少なくなります。いったん減った腎臓糸球体は,再び作られることは無いので,生まれてからずっと負担を抱え,胎児期から何十年も経ったあとの病気のリスクに繋がるそうです。今後のためにとてもいい話しが聞けました。今日の講義は面白い話が沢山あったのでもっと時間をとって聞きたいと思いました。

placa_WS4_4.jpg本日最後の講義第3部{第6講(第4章)}は,「ワイン、化粧品、アロマ、繊維製品などの安心安全について」の講義でした。 授業の中で出てきたお酢の化学構造式CH3COOHの話しはとても新鮮でした。普段口にするお酢がこんな数字とアルファベットだけで表記できる事が目新しく,興味深かったです。化学構造式だと,他の食品の式を並べた時に関係性が垣間みれ,普段目にする食品名とは違った見方ができます。食品以外にもオーガニックが関わる物は多く,植物が原材料として関わるものが身の回りに多いことに気づかされます。特に化粧品は肌に触れるものなのでもっと詳しく聞きたいと思いました。参加者に女性が多いのでぜひともオーガニックを踏まえた上で化粧品についての講義を別コースで設けて頂きたいです。

今回の授業を受けて,私はオーガニックや環境について多くの人が共感するために何が必要か気づきました。それはオーガニックや環境に関する知識を専門的ではなく横断的に体系づけて説明する事です。専門的な解説だけでは,どうしてもその分野から外れた解説が曖昧であったり,迷信めいていたり,聞いている方が理解しがたく,勝手な解釈を進めてしまいます。このオーガニックや環境に関する知識や理解は,日本だからこそ共有しやすい,新しい未来の叡智であると私は思います。学校教育で,理科や数学,国語,社会のように分断された教育が行われるから,学校での勉強が社会に出てから何の役に立つのか分からない児童を生んでしまうのです。本来,学習と生きていくことは切っても切れない関係のはずです。もし人間が生きていく事に学ぶことが必要なければ,学習する行為は生まれなかったでしょう。オーガニックや環境に対する理解は生きていく事と分断して行うことができません,だからこそ,そこに新しい日本の教育モデルの未来があるように思います。オーガニックや環境に対する知識は,これからの社会を考えて行く上でとても重要です。なぜなら社会や国民の健康と安全は文化,農業や産業まで,国の安全や経済にまで深く関わります。そういう意味でプランツアカデミーができることは,とても大きいように思います。

オーガニック・アドバイザー認定講座:第3回

日 時:2012年1月21日(土) 13:00〜16:00
場 所:マルニ高知店2F COMOサロン
講 師:許斐直人,守川耕平

プログラム

1部:あいさつ/講師紹介, 2部:第4講(第3章-②), 3部:第5講(第3章-③), 4部:特別講義第3回

○第4講(第3章-②) 講師:許斐直人(日本オーガニック推進協議会)
「オーガニック(有機)食品が食卓に届くまで」の基礎知識を学ぶ講義の内容は,下記3‐②‐1)〜3‐②‐4)になります。②‐1)オーガニック食品の見分け方,②‐2)オーガニック食品の表示,②‐3)誰が有機JASを貼るか?,②‐4)有機の輸入食品。
○第5講(第3章-③) 講師:許斐直人(日本オーガニック推進協議会)
「有機加工食品,有機畜産物,有機飼料」の基礎知識を学ぶ講義の内容は,下記3‐③‐1)〜3‐③‐5)になります。③‐1)有機加工食品,③‐2)有機加工食品の種類と表示について,③‐3)有機畜産物,③‐4)有機畜産物の表示について,③‐5)有機飼料。
○特別講義(第3回) 講師:守川耕平(北里大学医療衛生学部・客員研究員)
題目「安全性の評価基準について」

講師:許斐直人氏(日本オーガニック推進協議会)

受講者は,前回(第2回)の講義レポートの提出が必要ですが,講師による第2講〜第3講(第2章,第3章‐①)のおさらい講義をすることで,理解度を深めて行きます。本講義は,オーガニックという言葉が持つ疑問点をチョコレートを例に挙げ,有機加工食品と有機畜産物の違いについて受講者に解り易く解説する。また,受講者は,耳慣れない海外からの輸入品(有機農産物など)について,遠い原産地から運ぶ過程で,味や色が変わらないように酸化防止剤が添加され,時には毒性のある残留農薬が基準値を超え含まれるなど生物濃縮の問題と絡ませて,消費者に商品(食品)が届く過程の監視,即ちトレーサビリティについてしっかり学ぶべき事を質問形式で説いていきます。(渡邊記)

受講者の感想

placa_WS3_2.jpg義第1部(第4講)では,大阪校のマスターオーガニックコーディネーターである許斐(このみ)先生による講義から始まりました。許斐先生は,ハンカチなど身近にあるものからオーガニックを伝えていきたいそうです。
授業の初めにはコットンの原料になっている綿花が一面に咲いている美しい写真を見せて頂きました。しかし,その美しい綿花は生産を高める為に強制的に枯れ葉剤で枯らされた後,収穫されるそうです。そうして農薬づけになった物が手元に届きます。また労働者の健康被害も気になります。

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話しは変わり,2025年までに農業従事者は1/4に減るだろうと予測されているようです。農林水産省では,国農林業の生産構造,就業構造を明らかにするとともに,農山村の実態を総合的に把握し,農林行政の企画・立案・推進のための基礎資料を作成し,提供することを目的に,5年ごとに行う『農林業センサス』という調査結果を提供しています。この『農林業センサス』によると1955年を境に,5年ごとに100万人〜200万人のペースで農業従事者が減少しており,2005年には,約556万人まで減少しています。単純にこのペースだと2025年には156万人以下となり確かに農業従事者の人口が1/4まで減少しそうです。

この現状を改善する為に,どうしたら自分たちの食べものを安定して供給していく事ができるのか,真剣に考えていく必要があります。だからこそ子供たちのためにオーガニックを始めようと言うのが許斐先生の主張です。その許斐先生の活動の1つとして食育ハーブガーデン協会が紹介されていました。こちらの協会では,子供たちとハーブを栽培して,成長したハーブを使って料理を一緒に作る中で自然と触れ合い,未来の地球のことや,思いやり助け合いについて学ぶ活動をされています。

placa_WS3_4.jpg今日の講義第1部では,「オーガニック(有機)食品が食卓に届くまで」について学びました。食品の授業は身近な商品なのでとても興味深かったです。手元にチョコレートがあったので,パッケージの裏面を見ると農縮ホエイ,酒精飲料,野菜色素,トレハロースなど自分が料理をする時には全く使った事も聞いた事もない材料が見られます。こうした耳慣れない材料は,例えば遠い原産地から運ぶ過程で,味や色が変わらないように添加される酸化防止剤のように,味とは関係なく,消費者に商品が届く過程で必要になるものがあるそうす。因に,濃縮ホエイは乳を乳酸菌で醗酵させ,又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清を濃縮し,固形状にしたものでした。

こうした表示に関する内容は食品表示制度で定められており,消費者庁が担当しています。そうした制度自体意識して聞くのは初めてでした。また商品の裏側には「本品は卵,小麦,落花生を使用した設備で製造しています。」といった,製造設備に関する表記もあります。これは重篤なアレルギーの方への注意喚起表示です。原材料として使用していないにもかかわらず,特定原材料(卵,乳,小麦,えび,かに,そば,落花生)等が意図せずごく少量,混入することがあるので原材料欄外に注意喚起表示をすることが求められています。食品に関する情報を正確に知るには,そうしたアレルギーなど,人がもつ病気についても学ぶ必要がありそうです。食品表示の話しになると,知っていてもおかしくないような事を,私は何にも知らないんだなと思わされます。今日の話しででてきたバターについて成る程なと思うことがありました。バターの色は薄い黄色です。この黄色は草の色だそうです。この草の色は牛が季節ごとに食べている植物の種類で変わってしまいます。その色を調整するために加えるのがベータカロチンです。今の社会は私たちが食べている物の色や味が,いったい何なのか?当たり前にしっているべきことが分からなくなっているように思います。社会にいろんな物が増えたことで分からないことが増えてしまったのではないでしょうか。

placa_WS3_5.jpg講義第2部(第5講)では,畜産物の話しを中心に聞きました。オーガニックの畜産の話しは環境愛護と動物愛護の視点を中心に考えると理解しやすいそうです。牛は草を主食としますが,草は栄養素が少ないので消化しにくい上に大量に食べる必要があり,胃が4つあります。しかし今は飼料にコーンを与えられています。コーンは消化しやすいので胃が1つしか必要なく,残りの3つが病気になるといった問題が起きているそうです。こうした畜産業の怖い話を今日は2・3紹介して頂きました。特にこれは酷いと感じたのが霜降り牛の作り方です。普通に牛が健康な状態で暮らしていれば霜は筋肉の間に入りません。

霜降りが沢山ある,脂身の多い牛を育てるには,塩をなめさせて生活習慣病にさせ,動かないようにさせるなど,不健康にして動かないようにするそうです。凄い話しです。鳥の場合は,3ヶ月で育つところを,生産性を上げる目的で成長ホルモンを与えて,1ヶ月で成長させるケースがあるそうです。1ヶ月で育つ鳥は骨が成長しきらず,走ることが儘ならず,ますます太らせることができます。動物愛護の視点で考えると非常に不自然な育て方です。それがオーガニック畜産物の思想の原点です。畜産物の動物たちがいったいどういう扱いを受けているのか,考えるきっかけになる話しでした。

この畜産の話しの中には,生物濃縮の話しがありました。生物濃縮とは,生態系での食物連鎖を経て生物の体内に化学物質が濃縮されてゆく現象です。飼料の中に健康を害する化学物質が瞬間的には健康被害を起こさない程度にしか混入していなくても,生物の中で自然に凝縮され,健康被害を起こすレベルまで濃度が上がっていきます。それが何十年という長い時間をかけて行われるので分かりにくいことが問題を浮き彫りにすることを拒んでいます。こうした分かりにくいことや,分かっていない食の安全事例として遺伝子遺伝子組み換え食品が紹介されていました。この遺伝子組み換え食品は安全か?危険か?まだ分からないのが現状で正確な評価がまだでていない状態だそうでうす。しかしそれでも食卓に並ぶこともあるのが現状で,将来想像できない健康被害に結びつく怖さを秘めています。そうした情報をもっと社会全体で声をあげて考えていく必要があると思います。フランスでは国家予算でオーガニックのPR事業が組まれているそうです。前回の歴史の授業からオーガニックが国民に広がるのは簡単ではなく,フランスに見られるように国家予算を使ってPRしていく必要があると思いました。今回の講義は許斐先生が講義の始めに話されていたように身近なところから食品の安全を考えさせられる講義でした。また,講義では参考となる映像作品として「フードインク」や「未来の食卓」「複合汚染再び」を紹介されていました。参考本としては「有吉佐和子著/複合汚染」が紹介されました。是非見たいと思います。

本日最後の講義第3部{特別講義(第3回)}では,守川先生がオーガニックの分野に興味を持った理由について話されました。第2部で話しが出たように,食品の安全性の評価基準が,法律や規制が曖昧で確立していないと気づいたのがきっかけだそうです。また,安全性を証明する実験データや研究結果が乏しいのが現状で,健康な人に対して安全性を謳っているだけで,化学物質に過敏な人や,すでに疾患を持った患者に対しての安全性は確認されていないなど,現在の食品の安全評価の甘さを指摘されていました。食品に対しての制度や規制,安全性の評価や安全認証のプロセスなど,まだまだ考える事が山積みであるということを感じました。

オーガニック・アドバイザー認定講座:第2回

日 時:2012年1月 14日(土) 13:00〜16:00
場 所:高知県立牧野植物園内アトリエ実習室

プログラム

○第2講(第2章) 講師:杉谷あきの(日本オーガニック推進協議会)
「オーガニックの歴史と、第三者認証について」の基礎知識を学ぶカリキュラムの内容は、下記2-1)〜2‐3)になります。2-1)環境と調和した農業から「工業」的な農業へ,2-2)オーガニックの国際規格―Codex,2-3)ポイントは利害関係のない第三者認証。

○第3講(第3章) 講師:杉谷あきの(日本オーガニック推進協議会)
「オーガニック(有機JAS)食品の作りかた」の基礎知識を学ぶカリキュラムの内容は、下記3-1)〜3‐3)になります。3-1)第三者機関(登録認定機関)とは,3-2)有機JASの種類,3-3)有機農産物の作り方。

○特別講義(第2回) 講師:渡邊高志(高知工科大学地域連携機構)
題目「マクロビオティックと漢方薬に用いられる薬用植物の考え方」

講師:日本オーガニック推進協議会・杉谷あきの氏

受講者は、前回(第1回)の講義レポートの提出が必要ですが,講師による第1講(第1章)のおさらい講義をすることで,理解度を深めて行きます。本講義は,なぜ環境と調和した農業が大切なのか理解し,環境と調和して行われてきた農業が「工業」的なものに変わった結果いろいろな弊害に繋がっていることを正しく知ることが大切です。また,昨今のオーガニックブームとは一線を画し、オーガニック(有機)という言葉の持つ本質を学び、言葉の信頼性の根源はどこに由来するのか、第三者認証を受けた有機JAS農産物を例に解説します。受講者はオーガニックの背景にある環境問題について,世界規模で取り組むべき過去の悪しき環境破壊ついてとりあげ質問形式で説いていきます。(渡邊記)

受講者の感想

講義第1部(第2講)では、先週の授業内容を、生徒の授業理解度の確認も含めて復習するところから始まりました。講義は第1部・第2部(第3講)を通して「オーガニックの歴史とオーガニックが社会的信頼を成立できる、その仕組み」について学び、オーガニックを取り巻く農業界のことや、社会問題やオーガニックの基準を作ることの重要性を知ることができ、貴重な講義であったと思います。また今日の講義でオーガニックについてより多くの興味や好奇心を抱きました。というのもオーガニックという制度を成立させるシステムを知る事で消費者と生産者と管理する側の三者の思想が垣間見れ、講義を含めオーガニックを考える上での重要なポイントが掴みやすくなったからです。

今日の講義でオーガニックという制度を支えているものが、オーガニックの基準と認定機関であることを知りました。講義では、まずは農業が歩んだ道程から、オーガニックの基準が作られ、認定機関が生まれるまでを第1部(第2講)で学びました。私は農業中心に歴史を学ぶことは初めてで、「本来、農業は自然と調和しながら生産するものであった」という昔の農業の歴史の始まりの一文からとても興味がわきました。この農業の歴史を語る最初の一文は、今日の講義第三部(特別講義)で渡邊先生が話された、昔の医学者の「人体は自然の縮図である」という思考に関連した、食物の生産方法だろうと後で思いました。

私は、農業が生まれた時、すでに農業はオーガニックであり、食の安全と安心を求めてオーガニックを求める今の社会を思うとわだかまりを感じます。農業は歴史の中で生産性を求めるあまり、生物の生態を破壊し、環境破壊を生み、いくつも社会問題を引き起こしてきましたが、しかしそのきかっけは生命を守るためであり、食糧安定生産を望んだからであり、現在の繁栄に多大な貢献を果たしただろうと思います。さらに70億人にまで膨れた世界人口と食糧問題を考えると麻薬のような依存性が無いにしても、切っても切れない状況にあるのではと思いました。まだまだ農薬がもたらす社会問題は続きそうに思え、オーガニックの思想は暮らしの安全と安心を守る上でこれからさらに大切になるだろうと思います。ただし、食糧問題も見過ごせず、オーガニックでありながら世界の人口を支える食糧生産などありえるのだろうかと疑問に思います。

しばらくは生産量を求める農業と、安全安心という質を求める農業が並行する社会になるのではないでしょうか。

歴史の話しでは昔の農業風景を感じられるトピックがいくつか紹介されていました。例えば昭和30年代の日本の田んぼにはイナゴが沢山いて、農村地帯では学校行事の一環として「イナゴ取り」をしていたという面白いトピックがあげられていました。また、江戸時代では農作物の害虫は悪霊によってもたされるものとして、悪霊をわら人形に移し、村境に送り出す風習などがあったそうで、夏の風物詩の怪談ででてくるわら人形が連想され、歴史の面白さを再確認しました。

国際的なオーガニックの基準が生まれ、それを利害関係のない第三者が基準に沿って作られたかどうかチェックすることでオーガニック商品は信頼を得る事ができます。第2部(第3講)では、この第三者にあたる有機JASの認定機関の話しと有機農産物の作り方を学びました。学習すればする程に、有機農産物を作るには、想像している以上の苦労が付いて回りそうだと思いました。というのも、農薬などの汚染物質は撒いた時だけが問題ではなく、近隣から風や水にのって来るからです。また自分が持っている農地が昔どういう土地であったかという地歴も重要になってきます。自分がオーガニックを始める以前に汚染との戦いは始まっていて、オーガニックの知識を知った時には遅いのです。

つまり、これからの食べ物の安全を守るのは私たちであり記録を残すことが重要であると言えます。昨年起きた原発事故による放射能汚染が、未来の食糧に与える重大な問題であったこともうなずけます。 なぜなら有機JAS認定は作物に対してではなく「ほ場=田圃や畑(作物を栽培するところ)」に対して行われるからです。1度の汚染が取り返しのつかない自体を招く事を知りました。有機JASの認証機関では「ほ場」に対し認定を行い、ほ場で栽培されたものは、全て「有機」の生産物になります。

有機JASではたい肥づくりや、農薬を使わない病害虫防除方法や除草がまとめられており、必ずしも農業従事者だけが必要な知識では無いと思いました。自分たちが暮らす地域を守る上で大切な知識だと思います。考えてみれば、農業で生産されるものは食べるものだけでなく、衣服や化粧品の原材料なども含まれていて、非常に暮らしに深く関わっている事が分かります。また食に限らず、アトピーや花粉症といった化学物質が社会問題視される今、身近にある化学に対し教養を深める意味でも小学生レベルの教育段階から学べる環境が広がってもいいだろうと思いました。なによりこうした身近な食べ物や環境、衣類などから化学や生物に対する知識が学べられるとてもいい教材だと思います。

また、食糧に関わる貿易や食糧問題など国際的な内容を含み、環境問題やエネルギー問題といった授業内容を含むと多くの大人から子供まで価値のある授業になるだろうと思います。

最後に授業中杉谷先生から、最近のオーガニックの潮流の中には、食べ物の安全に関心のある生産者や消費者、家族や本人にアトピーなど健康問題がある方といった人だけでなく、ファッション性を重視している流れもあるというお話を聞きました。オーガニックを取りまく社会が、昔も今も、食べ物の安全に対してだけ広がりを見せているわけではなく、売り手と買い手からなる経済社会や、人口の増加に対する食糧生産の課題など、とても深く広がっおり、オーガニックという考え方が広がるには広い見識が必要だろうと思いました。

第3講義(特別講義)では渡邊先生の「マクロビオティックと漢方薬に用いられる薬用植物の考え方」の講義に移りました。マクロビオティックという言葉を時々耳にはしていましたが、ぼんやりとしか知らなかったので、あらためて調べてみるとマクロビオティックとは長寿法を説くものであり、人と生き物と環境のバランスを保ちながら健康の根源を支えるものだそうです。食事に関する作り方や食べ方の作法のようなものかと思っていたら、食材の品質基準なども決められていて内容もオーガニックの考え方と深く関わりあっていました。また「マクロビオティック」は、「マクロ=大きな」「ビオ=生命」「ティック=術、学」の3つの言葉から成り立ち、古代ギリシャ語を語源とした、「自然に即した命のあり方」という意味でした。またその歴史は古く思想家であり、食文化研究家であった桜沢如一が今から80年以上昔の1930年頃に提唱した手法です。オーガニックの思想が始まったのが1924年頃だった事実と照らし合わせると1920年代頃は農業や食文化が大きく変化したのではないかと思いました。1920年代について調べると第一次世界大戦後の時代で、アメリカでは狂騒の20年代と呼ばれ、またヨーロッパでは黄金の20年代と呼び名が付いており、それまでに無いほど、製造業が成長をとげ、消費者の需要とが増え、生活様式の変化があったようでした。戦後の食糧安定の渇望から大量生産の技術の確立と実現を繰り返し、急成長を遂げるその陰で、環境破壊や食文化の再構築を叫ぶ声が上がったのではないかと思いました。
漢方薬の話しの中で、古代の医学者は自然に対する観察力に優れており、「人体は自然の縮図である」という考え方を持っていたことが紹介され、その言葉が耳に残りました。私たちは自然のルールに従い生命を維持しており、自然に歩調を合わせて生活を営めば、健康な日々を送れるということ学び、オーガニックの考え方は幅広い分野に広がりを持ち、安心した生活を営む上で大切な知識であることを感じられました。

オーガニック・アドバイザー認定講座:第1回

日 時:2012年1月8日(日) 13:00〜16:00
場 所:マルニ高知店2F COMOサロン

プログラム

13:00  開会あいさつ 高知工科大学地域連携機構・教授 渡邊高志
講義 日本オーガニック推進協議会・理事長 山崎泉
講義 Plants Academy校長 稲垣典年

カリキュラムについて

オーガニックを学ぶにあたっての基礎知識を学ぶカリキュラムの内容は、下記1)〜7)になります。
1)オーガニックアドバイザーとしての心構え『オーガニック』の背景にあるもの
2)有害化学物質とは
3)生物濃縮とは
4)新たな脅威― 「環境ホルモン」
4)界面活性剤も環境ホルモン
5)有害化学物質の代表は農薬
6)農薬、化学肥料多用の反省に立つオーガニック
7)食品だけではない「オーガニック」

高知工科大学渡邊高志教授

講師:日本オーガニック推進協議会の理事長、山崎泉氏

講師:Plants Academyの校長、稲垣典年氏

受講者のみなさん

講義終了後の薬膳料理の試食会

受講者は、講義後レポートの提出が必要になります。次回の講義前または講師へのメールでの提出が必修です。講義内容の理解度を深める為のレポートですが,参加された受講者の皆さまからは,ご自分で調べてまとめられた解答もあり大変関心を寄せていることが伺えます。本講義は,なぜオーガニック生産を促進していかなければならないかに繋がっていく大切な部分になります。また,食物連鎖による生物濃縮を経ながらPOPs (有害化学物質)が濃縮され、地球上の食物連鎖の上位に位置する動物群に重大な奇形や健康障害があらわれるのです。健康や環境に悪い影響を与えるものに有害化学物質などがあり,現在までに解っている化学物質の総数は2009 年時点で5,000 万と考えられ,その中で有害とされるものは約1,500 物質とされています。講義の中では,オーガニックの身近な疑問について質問形式で説いていきます。(渡邊記)

受講者の感想

「オーガニックアドバイザー講座 第1章 を受講して」

オーガニックという言葉を最近よく耳にします。自然の力で作られたものというイメージがありますが、多くの人が言葉は聞いたことがあっても、詳しくは説明できないのではないでしょうか。
オーガニックアドバイザーとは、衣・食・住に関わるオーガニックの基礎知識を身につけ、健康で安心・安全な暮らし全般のアドバイスができる人のことを言います。
今、アトピーや花粉症など昔はなかった病気や症状が増え続けています。いろいろな化学製品が出回っているなかで、私たちは知らず知らずのうちに体に悪いものを使い、併用することで新しい病気を生み出しているのです。農薬をはじめとする有害な化学物質から私たちの身を守るためにも、オーガニックに対する知識はますます重要なものになってきています。
今回の講座では、国内におけるオーガニックの基準である有機JASの理解から、オーガニックを学ぶにあたっての基礎知識を学びました。

オーガニックの背景には、有害化学物質の厄介な性質があります。有害化学物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)や農薬のDDTが、先進国で既に使用禁止になって数十年経ってから、遠く離れた北極圏の哺乳類の体内から高濃度で発見されたという事例があります。高濃度の有害物質を取り込んでしまった生物は、免疫力が低下したり、雌雄同体の個体や奇形児が生まれたりと、事態はかなり深刻です。都市圏から離れ、環境汚染とは無縁の北極圏に生息する生物たちに、このような異常が見られるということは、温暖化と同様に、私たちに地球規模で環境問題を本気で考えなければならないということを警告しています。
有害化学物質は、自然環境で分解されず、また大気や海水に混じって地球規模で移動し、そして生物の脂肪組織に濃縮されやすいという性質を持っています。そのため、弱肉強食の食物連鎖の頂点にいる生物に、最終的に濃縮された有害物質が取り込まれ、大きな被害を与えるのです。

農薬は工場だけで使われるのではなく、実は私たちの毎日の食事の中にも入り込んでいます。メチル水銀は日本国内で使用されなかったものの種子の農薬(殺菌剤)として利用された結果、地球規模で見ると川や湖でしばしば発見されます。これは魚やそれを補食する私たち人間など他の生物に深刻な健康被害をもたらすので、厚生労働省でも妊婦へは魚介類の節食をするように呼びかけています。
農薬だけではなく、合成化学肥料も合成化学物質でできています。自然界にはなかったものを私たちが作り出してしまったために、それが分解されず、私たちの体内や周りの環境に残留し続けているのです。
第二次世界大戦で世界は食糧難に見舞われ、人口が急激に増加したことから、効率的な農業が求められました。しかし、化学的に合成された農薬や肥料が使われるようになると、農業は環境を破壊する産業へと変わってしまいました。農薬は、病害虫や雑草などの防除などを目的として農作物に散布されますが、目的とした作用を発揮した後なくなるわけではありません。作物に付着した農薬が収穫された農作物に移ったり、農薬が残っている農作物が家畜の飼料として利用され、ミルクや食肉を通じて人の口に入る事もあります。このようにして、農薬は多くの野生生物や人にも被害をもたらしたため、徐々に農薬や化学肥料を一切使わない現在の「オーガニック農法」が世界各国に広がってきました。

オーガニックという言葉は、元々はギリシャ語のorganから派生した言葉で「内臓、器官」を意味しますが、それが転じて「生命体の」という意味を持つようになりました。オーガニック農法が誕生してからは、環境に負荷をかけない農業と健康に配慮したものを示す使われ方もされるようになりました。日本語に訳すと「有機」となります。

正しいオーガニック商品には、登録認定機関という第三者機関が、その生産や製造方法が有機JAS規格を守って作られたことを認証する「有機JASマーク」というマークがついています。オーガニック農法によって生産される農産物は、食べ物だけではありません。衣類や化粧品の多くも、綿やハーブなどの農産物から作られています。商品を選ぶ際に、このマークがついていれば、安心・安全だと考えてよいので、正しいオーガニック商品を選ぶのは、実はそんなに難しいことではないのです。
オーガニック商品は他の商品より値段が高めだと感じるかと思います。それは、商品の値段の大部分が輸送費にかかっているためです。ヨーロッパやアメリカなどでは農業のおよそ20%前後が有機農業になっていますが、日本は2010年時点で有機農業は全農地のわずか0.19%しかありません。消費者がオーガニックを支持すれば、日本のオーガニック生産者も増え、安心・安全な食物も安く手に入れることができるようになるでしょう。

私たちのこれからの日本を、そして地球全体の環境問題や人類の健康を考えていくためにも、オーガニック農法は大変重要なことなのだと感じました。(受講者(渡邊研)記)

プランツ・インキュベーションコース

「プランツ・インキュベーションコース」:第4回

日 時:2012年2月26日(日) 13:00〜16:00
場 所:高知県民文化ホール3F第3多目的室
講 師:ロギール・アウテンボーガルト/金 哲史

プログラム

①あいさつ/講師紹介,②第1部,③第2部,④第3部

講師:ロギール・アウテンボーガルト氏

第1部

講師(Lecturer):ロギール・アウテンボーガルトRogier Uitenboogaart (かみこや 代表)
内容:日本の伝統工芸と土地の材料
1. 大切な水
2. 植物と貿易-コットン-
3. 紙でつくる暮らし
4. 地域で育つ紙

第2部

講師(Lecturer):ロギール・アウテンボーガルトRogier Uitenboogaart (かみこや 代表)
内容:紙の歴史と和紙の原料
5. 植物を知る
6. 畑の美
7. 植物から学ぶ

第3部

講師(Lecturer):金 哲史(高知大学農学部 教授)
内容:農薬は危ないの?
1.植物の特徴
2.農薬の歴史
3.農薬とは
4.増える人口、減る耕作地
5.農薬はガンを引き起こすの?
6.農薬の安全基準
7.大量の農薬が漂う中での有機野菜の食事
8.それでも農薬は危ない-農家・副作用-
9.新しい農薬の創造を目指して-化学生態学は人類を救う-

受講者の感想

講義第1部の感想

第1部は和紙の匠ロギール・アウテンボーガルト先生の講義でした。今日の講義も和紙づくりから自然を見つめ直す内容でした。ロギールさんが暮らす梼原町は日本でも有名な四万十川の源流があります。和紙造りにとって水はとても大切な存在です。それは和紙だけでなく、私たちにとっても同じです。東北では放射能の問題で川での釣りが禁止されてきています。このプランツアカデミーでの授業でも習いましたが、山の恵みは少しずつ川へと集り濃縮されます。東北では結果的にこうした自然の循環が裏目にでました。この川から流れる放射能物質が、田園や、畑、公園の池に流れ込み、人が暮らす町を通って海に流れ着きます。当然その過程で、植物プランクトンや動物プランクトンから小魚に、小魚から小動物へ、そして大型の動物から我々人間まで徐々に濃縮された状態で届きます(食物連鎖‐生物濃縮)。そう思うととても怖い事だと思いました。体の大きな大人の人間には大きな問題では無いかもしれません。しかし、小さな生命の中で異形のモノが出てきたり、変異した子供が生まれれば社会的な不安は大きいです。

ロギールさんが語る、日本が誇るモノ造りの源流は今日問題視した自然との関わりを語らずにはいられません。話しの中でコットンと貿易の話しがありましたが、今回の原発問題で日本のクラフト製品にも大きな打撃があっただろうと感じました。

講義第2部の感想

第一部で語られた、モノ造りと自然と貿易が発展する為に、私たちがいつも大切にしないといけないことがあります。それは植物について深く知る事です。同じ植物でも気候や周りの環境が違えば同じものはできないからです。そう思うとなぜか、自然を相手にしたモノ造りは、武士道に通じるような清さと迫力を感じます。それはきっと、材料から育て、形にするという一環したサイクルに現代に無い"永久"につづく力強さを感じるからです。それは、モノという形を与えられる前の「畑」にも感じられます。授業の中でみた畑の写真は美しく、そうした畑から学び、いいモノ造りが生まれるのだそうです。そうした美学は格好いいと思います。私の場合、モノ造りとまでは行きませんが、自分が食べる食べ物くらいは自分の美学に徹するものを自らつくってみたいと、今日のロギール先生の講義を聞いて思いました。

講義第3部の感想

第3部は高知大学農学部の金 哲史教授の講義でした。講義の冒頭では、マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類ドードー(Dodo)の話しを聞きました。人間に発見されてからドードーは、人間による捕獲以外に、人間が持ち込んだイヌやブタ、ネズミによる雛や卵の捕食が原因で、わずか180年で絶滅しました。この事実は私たちとっても衝撃的でした。生態系を維持することの大切さを伝える様々な場面で語られるだけでなく、「不思議の国のアリス」や「ドラゴンクエスト」「ポケットモンスター」「ハリー・ポッター」といった子供たちが聞き、見る物の多くに題材として扱われその知名度と、我々自身の行いについて考えさせられるきっかけを作っています。余談ですが、ドードーについて調べてみると、単にドードーと呼ぶ場合は、モーリシャスドードーを指し、モーリシャスドードーが属すドードー科には他に2種、レユニオンドードー、ロドリゲスドードーがあり、いずれも絶滅しています。このドードーのヒストリーから、固有種の絶滅は思っている以上に些細な原因で起きていることが分ります。それがもし、私たちが食べている食べ物を作る過程で生まれていたらどうでしょう?そう考えた時に気になるのは、生産過程で様々な生物を死に至らしめている薬、農薬の存在です。今日の講義ではこの「農薬の安全性」について学びました。

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講師:金哲史高知大学教授

まず、結論から述べると「農薬は今を生きる我々にとっては安全であり、これから生まれる次の世代については保証できない、また生産者にとっては大変危険な劇物」です。それはなぜか、順に説明して頂きました。まずはその前に、化学的に物事を考えることの大切さについて大変面白いお話を聞きました。最初は狂牛病についてのお話です。アメリカの牛の飼育数は約3,500万頭です。過去10年間でアメリカ産の牛の狂牛病になったのは3例で1人死亡しています。死ぬ確率は120億分の1の確率で100年にたった1人ですが、アメリカに日本は全頭検査しなさいと言っています。1頭検査するのに2000円掛り、それを10年間続けると20兆円もの費用がかかります。日本では交通事故で年間6000人死亡していますが、自殺で年間3万人も死亡しています。検査をして何兆ものお金を失うよりは、自殺する人に支援金を与えたら死ぬ人はどれだけいなくなるでしょう?こういうことを化学的に考えて行くのが化学生態学という学問です。

癌についての認識の仕方も間違った考えが蔓延しています。主婦は癌の原因として食品添加物、農薬、喫煙などをあげていますが、癌の医学者が考える癌の原因は、1番に食事をあげています。それは、年を重ねるごとにたくさん食事をしているからです。私たちの体に人工化学物質は1日0.1mg取り込まれています。一方、植物起源の有毒物質は1日に1.5g取り込みます。植物起源の有毒物質は食事をすることによって摂取し、1日1日人は癌になる確率を高くしているのです。とても衝撃的な話しでした。なぜそうなるのでしょう?
植物の特徴は、一言で言うと「動けない」ということです。だからこそ、トゲを持ったり、皮膚を硬くしたり、ワサビや菜の花のように刺激物質を蓄えたり、虫の嫌がる物質を蓄えて身を守っています。これが農薬の原点であり、アコニチン(トリカブトの毒)や、発がん性のある成分を持つ化学的な防御方法です。農業はその植物が本来もつ牙を抜き、育てやすくしています。牙の抜かれた植物は当然、昆虫達の標的となり集ります。そこで農薬を使うという非常に不自然な、悪循環が繰り返されています。しかし一方で地球の人口は70億人を突破し、誰もが口にする野菜を作ろうと思ったら、農薬なしでは食べて行けず、農薬のない暮らしは考えられないのでは無いかと思われる状態です。

農薬の安全基準では、急性毒性、慢性毒性、次世代に及ぼす影響(繁殖能力や催奇性)、生体機能に及ぼす影響などを調べなければなりません。唯一医薬品と食品添加物、農薬などは調べられています。みなさんはこういうハンカチなどについている化学繊維は気にならないのに、農薬は気になる、野菜に対してはとても神経質に言われています。しかし、農薬はあらゆるところで使われています。例えば、抗菌グッズや抗ダニ加工、におわない防虫剤などの商品は、だだ農薬を塗っているだけです。農家の人が農薬を使うと農薬取締法にひっかかりますが、一般の家庭で使うのは許されています。今日の講義を聞くまでまったく知りませんでした。そして、個々の化合物の活性の評価は現在、可能ですが、複合作用については全くわからないそうです。また、濃縮された場合は当然危険です。今の社会では農薬は不可欠になっているかも知れません。だからこそ、生物のことをもっと深く突き詰め、農薬を希釈し、不必要な使用を抑えて行く事が大切だと学びました。

「プランツ・インキュベーションコース」:第3回 入門講座

日 時:2012年2月18日(土) 13:00〜16:00
場 所:マルニ高知店2F COMOサロン
講 師:John Moore/ 渡邊高志

プログラム

①あいさつ/講師紹介,②第1部,③第2部,④第3部

第1部

講師(Lecturer):John Mooreジョン・ムーア /JMA代表(John Moore Associates)
内容: What is power of Roots?
1.根のもつパワーと機能
2.コンパニオンプランツ(2)について
3. 植物を使った事業の考え方

第2部

講師(Lecturer):John Mooreジョン・ムーア /JMA代表(John Moore Associates)
内容: Let's Nature's genius be!
4. 植物の栄養
5. Nature Geniusな人たち
6.大切な情報は目の前にある

第3部

講師:渡邊高志 /(公)高知工科大学地域連携機構補完薬用資源研究室・教授
内容:持続可能な生活環境
1. アレロパシー
2. 生命の種
3.地球環境の指標としての植物の話

本講座は植物を学ぶにあたっての基礎知識を学ぶカリキュラム内容1)〜6)になります。1)根のもつパワーと機能,2)コンパニオンプランツ(2)について,3)植物を使った事業の考え方,4)植物の栄養,5)Nature Geniusな人たち,6)大切な情報は目の前にある等にについて。講師のジョン・ムーア先生による前回の講義の復習から話が始まりました。続いて根の力と自然のもつ天才的能力とは何か?という問いかけにより,コンンパニオン・プランツの本質に迫ります。ジョン先生は,植物にしろ,人間にしろ,外見だけでは判断出来ないと,先生のオリジナルスライドを使って話します。見えないところが大切です。植物体のほぼ70%は根であり,土の中の見えない部分に占めます。一つ一つの植物はそれぞれ根の周りに別々の微生物をもっていて,植物を隣同士で植えるときは,その植物同士の相性がよくなければなりません。また,人間が一人では生きていけないように,木々も一本だけでは生きていくことが出来ないと説いています。何百年と続いている森の木たちは,根が絡み合っています。そのため,どれか一本の木が病気になると,一緒に生えている他の木も病気になります。土壌中には虫のフンや空気,微生物,根があります。このうちの何れかが抜けても(一つだけでは),植物は育たないのです。講義の中では,そんな彼の自然に対する潜在能力を通して身近なコンパニオンプランツに関する疑問について対話方式で説いていきます。

John Mooreジョン・ムーア先生{日本語カリキュラム内容1}〜6}と対応}
1. about Nature Genius
2. Nature Companion Herbs
3. Nature Genius: Rhythms and Pattern!
4. WHO?: Tomitaro Makino, Chales Darwin, and Hendry David Thoreau
5. Simplify, Simplify:
6. LOOK: Truly - See - Hear - Feel
7. Basil Monn Light Cycle:
8. GARDEN: Kapa!
9. TAMBO Master:
10. Mr. Bean:
11. Mr. Forest:
12. Mountain Man:
13. Mrs. Hateke:
14. 100% Organic: See you in the garden!
15. ROOT:
16. INVISIBLE:
17. ROOT BALL:
18. HEALTHY SOIL LIFE:
19. FOOD LEVELS:
..................................................
58. AS ABOVE, SO BELOW:
(渡邊記)

受講者の感想

講義第1部の感想

今日は第3回目のインキュベーションコース。講義第1部は,ジョン先生から植物の根っこの話しをはじめに聞きました。私たちが見ている植物は植物の全体の半分くらいです。本当は根っこの方が大きいからです。植物は土の中で色んな分解動物と微生物と暮らしています。その一例が細菌や菌類など微生物との栄養共生です。共生とは,種類の異なる生物が利益を交換し合って共生している関係です。

植物の共生で非常に有名なのが,マメ科植物と根粒菌という菌類との栄養分の交換です。大豆や空豆などのマメ科植物の根には,こぶのような根粒が付いていて,このこぶの中に根粒菌を住まわせています。植物は光合成で作った糖分などを根粒菌に分け与える代わりに,根粒菌から大気中の窒素を固定して硝酸塩などに転換した栄養分を分けてもらいます。こうした,細菌や菌類など微生物との共生は人の人体の中でも行われています。非常に興味深いです。人体には500種を超える細菌が存在していて,その細胞の数は合計で100兆以上になるといいます。これは人体のおよそ10倍の細胞数です。人も植物も無数の生物と共生しています。それも想像を遥かに超える壮大な数の生物と連携しています。面白い世界です。

休憩タイム 14:05(10分休憩)

講義第2部の感想

第2部では,植物の栄養素の話しから始まりました。植物は炭素C,酸素O,水素H,の3つの元素から重量のだいたい96%を構成しています。また,この3元素は光合成によって獲得されます。植物は光合成を行うことで,空気中の二酸化炭素と根から吸い上げた水を原料にして,デンプンやブドウ糖など炭水化物を合成しています。岩石や砂,鉱物や金属のことを無機物といい,炭水化物やタンパク質など,生物が作り出す化学物質のことを,有機物といいます。私はプランツアカデミーの授業をきかっけに,始めて有機物が何か知りました。それまで有機栽培など有機という言葉を耳にはしていましたが,なんのことかちゃんと理解していませんでした。有機肥料というのは,生物由来の化学物質である有機物が含まれた自然肥料のことを指します。
この話しで面白いのは,「地球上で植物だけが自給自足で自分の体を作り上げて,有機物をつくることができる」という点です。生態系の話しでは,こうした植物のことを生産者と言います。生態系の中で「独自に栄養分をつくれるのは植物だけ」ということが重要です。これに対して,微生物や動物は,植物が用意してくれた有機物や,ほかの動物を栄養分として摂り込まなければ生きられない従属栄養生物です。動物や微生物は多くの有機物を栄養として体内に摂り込み,それを無機物に変える時に得られる化学エネルギーで生活しています。こうした,有機物を生み出す植物(生産者),有機物を食べて暮らす動物(消費者),生きるためのエネルギーを得るために有機物を分解する微生物(分解者)の循環が生物社会を成り立たせる物質的基盤になっています。このことは人が今考えるべきエネルギー問題や,リサイクル問題,食糧問題にとってとても重要だと思います。

今日の話しではジョン先生は,自分に影響を与えた人たちを紹介していました。特に,心に残ったのは,ツバ山に住んでいる叔母さんの話しでした。彼女にジョン先生が,そばの種を撒く時期はこの辺りだといつ頃ですか?と聞くと,その月の最初に雨が降った日だと答え,収穫する時はあの木の白い花が散った頃だと答えます。それが自然に生きる事だと思ったそうです。日にちじゃない。いつ植えるかという情報は目の前に広がっていて,自然が教本です。それは,誰でも読めるはずです。だけどいつしかマニュアルに慣れてしまった人間はその読み方を忘れてしまいました。こうした情報化できないものが忘れられやすく,それは情報化社会にとってとても致命的なのかもしれないと思いました。
最後にジョン先生は,「東京の人たちは今日紹介した自然の中で暮らす人たちの人生を知らない。自然を知らない。だから私は授業をやります。植物だけが土を豊かにして,綺麗にします。水を綺麗にします。だから私たちは種を撒かないといけない。」と言っていました。私もそう思います。

休憩タイム 15:25(10分休憩)

講義第3部の感想

講義第3部は渡邊先生の講義でした。今日は多感作用(アレロパシー)の話しから始まりました。アレロパシーとは,植物に含まれる天然の化学物質が他の生物の成育を阻害したり促進したりする。あるいはその他の何らかの影響を他の生物に及ぼす現象を意味し,ここで作用する物質を多感物質(アレロケミカル)と呼ぶそうです。アレロパシーは自然界では植物間や植物と他の生物間の相互作用に関与し,種の生存や群落の維持に関与していると考えられています。農業では,アレロケミカルを使って雑草や病害虫の防除が期待されています。

その他の話しに,トウモロコシの澱粉がタブレット(錠剤)に使われている話しや,ピーナッツの皮をタバコのフィルターに使われている話しがありました。

「プランツ・インキュベーションコース」:第2回 入門講座

日 時:2012年2月 4日(土) 13:00〜16:00
場 所:高知県工業技術センター5階 第三研修室
講 師:ロギール・アウテンボーガルト/渡邊高志

[プログラム]
①あいさつ/講師紹介,②第1部,③第2部,④第3部

講師:ロギール・アウテンボーガルト氏

第1部

講師(Lecturer):ロギール・アウテンボーガルトRogier Uitenboogaart /かみこや 代表
内容:日本の伝統工芸と土地の材料
1. 当時の日本と和紙
2. 紙の材料と強度
3. 作品づくり
4. 紙をつくる土地

第2部

内容:紙の歴史と和紙の原料
5. 紙の歴史
6. 紙の原料
7. 紙ができるまで
8. 道具の話し,道具に使う植物

第3部

講師:渡邊高志 /(公)高知工科大学地域連携機構補完薬用資源研究室・教授
内容:植物の基礎知識
1. 世界の植物
2. 紙の原料について
3.漢方医学,中医薬,アーユルヴェーダ

第1回 入門講座

本講座は植物を学ぶにあたっての基礎知識を学ぶカリキュラム内容1)〜8)になります。1)当時の日本と和紙,2)紙の材料と強度,3)作品づくり,4)紙をつくる土地,5)紙の歴史,6)紙の原料,7)紙ができるまで,8)道具の話し,道具に使う植物。講師のロギール・アウテンボーガルト先生による和紙WASHIとは何か?という問いかけから始まり,オーガニックペーパーの本質に迫ります。講師のロギール・アウテンボーガルト先生は,梼原町で「梼原和紙&紙漉体験民宿かみこや」を営んでいます。先生の奥様と息子さんと研修生が1人います。山の中で暮らしながら和紙をつくるということは「どういうものなのか」を探りながら作品づくりをしているそうです。

オランダから日本に来たばかりのときは日本語が全然しゃべれなかったそうですが,東京に暮らしていた時にはすぐに話しかけてくれる方がいたので,そういう親切なところが日本のいいところだという感想を述べています。まず初めに先生は,日本に点在する紙すき屋さんのリストを手に入れ,いろいろな紙すき屋さんを巡ったそうです。福井,鳥取,京都,沖縄にも行ったそうです。彼は日本で最初に伺った紙すき屋さんの方に,和紙にとって大切な知恵を教えていただいたそうです。講義の中では,そんな彼の植物との交流を通してオーガニックの身近な疑問について対話方式で説いていきます。

Rogier Uitenboogaart ロギール・アウテンボーガルト先生{日本語カリキュラム内容1)〜8)と対応}
1. Why Kamikoya inYusuhara, is located at the origin region in Shimanto River?
2. Mountain life can be cool.
3. Air ,water climate influence the washi craft and lifestyle.
4. Washi works
5. Learning through experience as Workshops
6. Why is Washi so beautiful?
7. How did the technology and culture of making paper come to Japan?
What is" real" organic Washi?
Let's show Machine-made-paper, Hand-made-paper, Washi, and Washi-fu for Paper samples.
Traditional Washi, making" Step by Step"
8. How is Washi made traditionally?
What is organic paper in Washi culture?
Washi, making process"step by step" using Kozo (Broussonetia kazinoki × B. papyrifera) and Oriental paperbush as Mitsumata (Edgeworthia papyrifera) in Japanese.
9. Hard labour: Harvesting and steaming the fiber.
10. Using wood for fuel seems most natural. Precize and clean work is needed.
11. Boiling and sun bleaching / no chemicals used
12. Don't need machines!: Hand beating / pounding of the fiber and nagashisuki.
13. Pressing and drying
14. "Magic power plant ": Aibika as Tororoaoi (Abelmoschu manihot )in Japanese.
15. History of paper-making related to local available fiber materials.
Every region had it's own natural paper fiber.
History repeats itself again.
16. Materials of paper Look back upon 2000. 紙の原料2000年をふりかえって
17. Woods decreased for agriculture, industry, energy, and paper.
18. About Reduce - Reuse - Recycle
19. Let's prize paper and protect woods!
(渡邊記)

受講者の感想

講義第1部の感想

第1部では最初にロギール先生の修行時代の話しを聞きました。ロギール先生の昔話には,日本の話しがほとんどなのですが,オランダ人のロギール先生から日本の昔の話を体験談として聞けることに新鮮さを感じました。とても興味が沸き,凄く貴重なことだと思います。そういうロギール先生は,今はオランダ人ではなく梼原人になっているそうです。修行時代は,まず原料を作るところから始め,自給自足の暮らしをしていたそうです。

話しの中で「自然農法 わら一本の革命」という本が紹介されました。著者は福岡 正信(ふくおか まさのぶ,1913年2月2日 - 2008年8月16日)さんで,自然農法の創始者だそうです。私も含め,日本ではあまり知られていないようですが,アジアやアフリカなど国家予算をつけて農法を学ぶ国もあり,海外でも実践されています。また,粘土団子と呼ばれる様々な種を100種類以上混ぜた団子によって,ギリシャ,スペイン,タイケニア,インド,ソマリア,中国,アフリカなどの十数カ国の砂漠の緑化を行おうとしました。略歴を見ると高知県農業試験場(現・高知県農業技術センター)に勤務されていたそうです。

ロギール先生は現在紙漉体験民宿を始め,ものづくりの原点を見たい人々が,国内外から泊まりにきています。私も何度か宿泊させて頂いたことがありますが,とても気持ちいい場所です。授業では,4種類の和紙のサンプルが配られました。4種類のうち,ロギール先生が漉いたものは1種類で,3つは化学薬品が使われているため,だんだん朽ちるのに対し,ロギール先生の漉いた和紙は化学薬品を使っていないので1000年経っても朽ちません。実際に破いてみてもロギール先生の紙は強く,繊維が切れにくかったです。最近は環境問題や,シックハウスの問題をうけて,紙に興味がある人が増えているそうです。特に女性の中に興味を持つ人が多いのですが,和紙造りは体力勝負な面があるので,なかなか辛いことも多いようです。たしかに実際に素材を植物からつくるとなると大変だと思います。

和紙の産地は全国に点在していますが,有名な和紙は,「越前和紙(えちぜんわし)」「美濃紙(みのがみ)」「土佐和紙(とさわし)」とされており,3大和紙産地と呼ばれています。和紙は高知の大切な特産品です。元々物造りは,素材づくりから始まります。和紙は現在でもそうした素材造りから物造りを学べます。和紙は山と川と,沢山の働き手があって出来上がります。しかし現在では過去に作られた原材料が売れずに残ってしまい,原材料が売れない時代になってきています。原料を作ってくれる人が居なくなると文化も廃れてしまいます。とても重要な問題です。また,最近100円ショップで安い手漉き和紙が増えてしまったことも問題です。それが本当に和紙なら問題無いのですが,タイやインドで作った紙が和紙として売られてしまっています。
オランダの紙は道具を見て,日本は紙から山の自然を見るという違いがあるそうです。和紙の話しでは,道具の話しが出て来ました。僕は道具というものが大好きです。紙を漉く,圧縮する,乾かすといった行程で必ず道具が必要になります。こうした道具を作る職人が技を受け継ぐことも大切だと思いました。

休憩タイム 14:05(10分休憩)

講義第2部の感想

第2講義は歴史の話しを聞きました。紙の無い時代,木の葉や,樹皮,石や動物の皮に文字を書いていました。紙が登場するのは紀元前2世紀頃で,今の中国で発明されたと考えられています。しかしこの時は,麻のボロきれや樹皮などを使っていました。その後製紙法は,西アジアに伝わり,エジプトや地中海沿岸を経てヨーロッパに伝わります。日本に伝わるのは7世紀です。当時と今の伝達の時間差に驚きます。調べてみると当時の和紙は高価だったため「古紙の漉き返し(リサイクル)」が行われていました。その後,1840年に木材を使った製紙法が発明されて以来大量に使用されるようになりました。私は,紙は産業や学問の発展に紙は大きな貢献をしたと思います。現在はデジタルベースの書籍も増えていますが,まだまだ紙ベースの書籍や印刷物が大きな役割を果たすと思います。

休憩タイム 15:15(10分休憩)

講義第3部の感想

第3部は渡邊先生の講義でした。ほとんどの植物は花を持っているそうです。今日は植物のつくりを図解して頂きました。花の構造や花の付き方,果実の形など,色,形,さまざまな姿をしている植物もある程度パターン化して分類することができます。根の作りも様々で,とても興味深いです。現在,地球上にある生物は170万種で植物はそのうち20〜30万種だそうです。こうした数多くの植物の系統と分類法を決めたのが,分類学の父と称されるリンネです。リンネは生物の学名を,属名と種小名の2語のラテン語で表す二名法を創りました。

リンネの名前は植物の学名の最後に命名者として「L.」と記されています。私はずっと短くて良いなと思っていました。しかしこのたった1文字の略称が使用できるのはリンネのみだそうです。

話しの最後に漢方医学の話しがありました。勘違いしていたのは漢方とは日本固有の医学だそうです。もちろん大陸から渡ってきた知識が基礎になっていますが,私はてっきり日本の物ではないと思っていました。中国の場合は中医薬と呼ばれています。日本に渡ってくる時に漢方と呼ばれるようになったそうです。その他にもインド大陸の伝統医学,アーユルヴェーダの話しがありました。こうした伝統医療の考え方の根底には共通した考え方があるそうです。言葉はそれぞれ違いますが,体が冷えている人にはスパイスなど身体を温めるものをとるといい。体が熱い時には青汁など冷性のある食品を口にするといったことが基本的な考え方です。また,年齢によって温めた方がいい時期や悪い時期もあるようなので,複数の経験医学を統合させながら,個々にあった食べ物に対する考え方が提唱できると面白そうです。紙が生まれてから日本に伝わるまでに何百年もかかっていますが,今の時代なら数日で伝わるでしょう。そういう時代だからこそ,複数の医学を統合させるような新しい取組みができそうだと思いました。

「プランツ・インキュベーションコース」:第1回 入門講座

日 時:2012年2月1日(土) 13:00〜16:00
場 所:マルニ高知店2F COMOサロン
講 師:John Moore/ 渡邊高志

プログラム

①あいさつ/講師紹介,②第1部,③第2部,④第3部

ジョン・ムーア氏(John Moore Associates代表)

第1部

講師(Lecturer):John Mooreジョン・ムーア/JMA代表(John Moore Associates)
内容: What's 100% Organic ?
1. 100%オーガニックはどこまでできるの?
2. コンパニオンプランツについて
3. 昆虫と植物の関係
4. 種の本質

第2部

講師(Lecturer):John Mooreジョン・ムーア/JMA代表(John Moore Associates)
内容: What is organic essence?
5. 植物との関わりの中で,光とはなに?
6. 在来種について

第3部

講師:渡邊高志 /(公)高知工科大学地域連携機構補完薬用資源研究室・教授
内容:オーガニックの基礎
1.有機ハーブの栽培と生産までの道のり
2.地球環境の指標としての土壌の話し

第1回 入門講座

本講座は植物を学ぶにあたっての基礎知識を学ぶカリキュラム内容1)〜6)になります。1)100%オーガニック,2)コンパニオンプランツについて,3)昆虫と植物の関係,4)種の本質,5)植物と光,6)在来種について。講師のジョン・ムーア先生による100%オーガニックとは何か?という問いかけから始まり,オーガニックの本質に迫ります。ジョン先生の祖母は,絶対に売店で食べ物(農産物)を買わない女性とお聞きしました。彼のお母さんは全ての農産物を自分の畑で作っていたそうです。畑は小さいスペースですが,必要な野菜はそこから全て採れ,季節や日陰,陽の向き,コンパニオンプランツ,さらにどんな虫がくるのか把握し,肥料を使わず全て自然の力で植物を育て,それらを収穫し食卓に出してくれたという大切な話があります。彼のお母さんはハーブをブレンドして売っていました。多くの人が彼女のハーブを買いに来ます。何故かというと,彼女は「この人にはこのハーブとこのハーブをブレンドするといい」というのが,見ただけで分かるとのこと。ジョン先生自身も自分で栽培したハーブを売って大学3年間の学費を稼いだそうです。今まで何十年も,農家の多くの人たちは農薬を使ってきました。私たちはその農薬を使った野菜を長年にわたり食べてきました。このままでは,私たちの子供や,今の若い世代から,次の世代にまで体に悪い農薬が受け継がれてしまいます。ジョン・ムーア先生の生き方のルーツは,生まれ育ったアイルランドに住むお母さんの大きな影響があるのです。講義の中では,そんな彼の植物との交流を通してオーガニックの身近な疑問について対話方式で説いていきます。

受講者のみなさん

John Mooreジョン・ムーア先生{日本語カリキュラム内容1)〜6)と対応}
1. WATER: In Tosa is cleaner than the rest of Japan. Is it safe? Organic? Is rain water clean?
2. H2 O: This molecular structure makes water elastic.
3. PET BOTTLES: Human`s created a worldwide mess with PET bottles. False cheapness that our grandchildren will pay for and not us!
4. TAP WATER: This is 500 times cheaper than bottle water, but is tap water safe recently?
5. SOIL: What is organic? Natural balance of bacteria makes organic soil, humans are not smart enough to create that balance. We are too young on this planet.
6. ORGANIC IS HEALTHY: Healthy soil means healthy plants, healthy life.
7. INVISIBLE IS MOST IMPORTANT: People and plants, it is the invisible that is most important, the roots and not the face.
8. ROOTs LIVE TOGETHER: Nature is a whole, not parts. It does not live alone. Roots feed each other, create food for plants and soil and insects.
9. BACTERIA: Is the secret to healthy roots and food plants. Each plant attracts a different unique balance of bacteria for optimal growth and this is the base of companion planting.
10. AS ABOVE: So below and this tree shows the root life is at least the same as the leaf growth.
11. Beans and Peas: Increase nitrates and food content in soils, natural fertilizers.
12. Companions: Assist each other to grow healthier when planted next to each other, just like good human friends. Smell, shade, insect attraction or repulsion.
13. PLANT: At all levels plants attract each other or fight each other. In a small garden space or large farm this is most important in growing healthy good food.
14. Insects: 80% of insects are your friend in your garden
15. Humans LIMIT: Our eyes only see a small spectrum of light. But we think we should make decisions based on this limited input!
16. INSECT EYES: They see the ultra violet light rays the human eyes cannot see.
17. PLANTS ARE LIGHT: Red light and blue light, they reject green light and that`s why we see leaves as green.
18. MOONLIGHT: The moon and sun cycles are so important in the balance of light they give to plants to grow them. When we eat a leaf, we are eating light. The quality of light that grew that plant.
19. ORGANIC: We are eating light, taking a balance of light into our bodies. So we must grow plants and dry our leaves with this in mind. Not using chemicals is only the first step. Real organics is much more.
(渡邊記)

渡邊高志教授

受講者の感想

講義第1部の感想

今日から,新しいプランツアカデミーのコース,インキュベーションコースが始まりました。初回はジョン•ムーア先生の授業でした。昨年もジョン先生の講義を聞かせて頂きましたが,ジョン先生の問いかけにはいつも強いメッセージがあります。冒頭の話しでペットボトルの話しがありました。「今のペットボトルジュースは150円で買う。でもそれは本当の値段ではない。次の世代の子供たちはそのつけを払わないといけない。」考えさせられます。私もペットボトルのリサイクルには疑問があります。今のペットボトルはほとんどリサイクルされていないと聞いた事があります。その理由はリサイクルした時の方がおよそ7倍のエネルギーを使うからです。これでは本末転倒です。もちろん家庭からリサイクルごみ分別された場合やコンビニやスーパでの回収もされているので,全てと一概に言えないと思います。リサイクルについて調べれば調べるほどに,頭が混乱してきます。その原因は情報の混乱です。というより情報操作されている気になります。ペットボトルのリサイクルには年間で推定600億〜1000億円の予算が使われています。いろんな利権が絡み合っているのでは無いでしょうか。リサイクルというと,綺麗なイメージがありますが,そのイメージを使って汚いことが行われている気がします。こうした間違ったリサイクルの現状を見ていると,正しい方法を模索できない理由は「誰も自分でリサイクルをしたことがないから」ではないでしょうか。木も落ち葉を自分でリサイクルしたりはしません。もし,リサイクルすることが合理的ならば,リサイクルをしている生物がいてもおかしくないと思います。しかしそんな生物は聞いた事がありません。ですが,大きな循環サイクルの中でなら可能だと思います。もしくは,リサイクルではなくリユースし続けるシステムがあればいいのではないかと思いました。

ジョン先生は,自分でやってみることを大切にしています。それは自分でやってみて感じた事を大切にしてほしいからです。 ジョン先生は種を混ぜて撒くそうです。ソバは,深い地中から栄養を集めてくれて,根っこの周りに微生物を集めます。その根っこの周りで,微生物は土に栄養をつくります。そうして地中の中で循環したエネルギーのサイクルが起きています。ほうれん草とジャガイモは別の栄養と微生物を集めるので,一緒に育つ事ができるのです。こうした共生しあう植物たちをコンパニオンプランツと呼びます。コンパニオンプランツは隣に置くと互いを高めあってくれ,仲良く育つ植物を言います。その中で特にジョン先生が結婚したという大好きなマリーゴールドの話でした。ジョン先生の庭の話しを聞いているとジョン先生自身もコンパニオンプランツの一つとして一緒に生きているように感じました。その庭や畑にいる80%の虫は植物の友達だそうです。虫は虫を食べてくれます。残りの20%の虫だけが悪さをします。しかし,そうした悪さをする虫は鳥が食べてくれます。

話しの中でジョン先生が「人間の考え方はおかしい。作っている植物や野菜は自分のものだけじゃない。虫や鳥や隣のおじいさんのものでもあるんだ!全部自分のものだと思って作る事に無理がある。この星は1つしか無い惑星。全部自分のものだなんていう考え方自体が不可能です。100%自分の物として得ようとするから薬に頼ろうとする。」という言葉に感銘を受けました。たしかに話しの通じない虫や鳥から畑のものを100%守ろうとすると,対抗策として農薬に頼らないといけません。それは自然なことではありません。自然の利を活かして向き合う事が大切だと思います。

休憩タイム 14:05(10分休憩)

講義第2部の感想

第2部では光と植物と虫の話しになりました。私たちが目にしている光は可視光線と言って,太陽の光や闇夜を照らす光など,私たちが物を見るために目に入って明るさを感知させる波長です。この可視光線は,波長380nm〜780nm(ナノメートル)で,可視光線以外にも紫外線:〜380nm(肌が焼ける波長),近赤外線:780nm〜2500nm(物を温める波長),遠赤外線:2.5μm〜220μm(物を温める波長)などがあります。そうすると私たちが見ている光とはごく一部の波長でしかありません。また,虫や鳥の目と私たち人間の目とは大分かけ離れています。ハチが飛び回って花を探すのが上手いのは何故か疑問に思って調べてみると虫の視力は人と比べるとかなり悪く,0.1にも満たないそうです。それでも花を見つけるのが上手いのは,花の多くは中央部分で紫外線を吸収し,昆虫も紫外線を感じる目を持っているからです。植物は紫外線の反射と吸収を上手く使い分ける事によって,昆虫に分かりやすいサインを出しているのです。また植物が緑色をしているのは「光合成を行うために,長波長(赤)と短波長(青)の色を植物は使っていて,緑を使っていないから,反射される緑の光の波長を人間が見て,緑だと思っている」という話しが興味深かったです。今まで色を波長だとか,吸収といったことでは考えていなかったので,新しい見方ができるようになった気がします。例えば花を認識するために,可視光線外の領域もカバーして測定できれば,より高い精度で花を特定できるのではないでしょうか。植物は,光なんだよ!という話はとても新鮮でした。
ジョン先生の哲学は,なぜ,なぜ,なぜ,そしてなぜと問いかけ,自分で考えることを大切としています。考え抜く事で本当のことが見えてきます。リサイクルについて調べる中でも,よりよい社会のことを考える上で,「なぜ」という問いかけはとても重要だと思いました。

休憩タイム 15:15(10分休憩)

講義第3部の感想

第3部では渡邊先生の話を聞きました。自然は土を1cm作るのに100年を要するそうです。そうすると畑にはだいたい30cmの深さが必要なので,自然な畑作土壌が形成されるには4500年も必要です。ものすごい年月です。また土壌には,細菌,放線菌,糸状菌,藻類,原生動物,線虫などが含まれています。実に多くの生物が生きています。畑の土壌1g中には約1億以上の微生物がいると言われています。その重量は土壌の0.5%にもなるそうです。畑の土壌を1掴みすれば地球上の人口と同じぐらいの微生物がいることになります。こんな小さな世界に広大な世界が広がっています。興味深いです。微生物に関して調べてみましたがいまいち,ピンとくるような資料が見つかりませんでした。しかし,調べるうちに微生物だけでなく土壌動物など,土をつくるために不可欠な生物は沢山いて,興味深い分野だと思いました。今回,リサイクルについても考えたので,こうした自然がもつ分解機能を上手に活用して,ミミズや団子虫などを含め土壌動物や微生物をうまく育て,森を育み,土を肥やし,食物を作るような自然のサイクルで行う生産が,もっと分かりやすく,提唱していけないものか考えました。人間が作る物が土壌動物と微生物に分解できるものであって,もしできないのならリユースするという循環可能な生産が望ましいと思いました。そう思うと,本当のリサイクルとは人間のことだけではなく,地球全体を通して考えなければ環境に優しいなどとは言えないと思います。

人が作ったリサイクルの概念では,矛盾を偽装しやすいので,現在の間違ったリサイクルに問題定義を与える意味でも,こうした自然の循環サイクルを基軸にした,新しいエコスタイルの提案ができればいいのではないでしょうか。

フィールド(野外)授業

フィールド(野外)授業

日時および開催場所:(全日程ともに13:00〜16:00の間で約3時間の授業内容)

第1回 2月19日(日) COMOサロンにて 中部大学応用生物学部教授及び熊本大学留学生(ネパールより)によるセミナー
第2回 2月20日(月) 梼原町での野外散策
第3回 2月21日(火) 梼原町での野外散策
第4回 3月10日(土) 梼原町での野外散策
第5回 3月11日(日) 梼原町「かみこや」にて紙すき体験および卒業証書の作成

<カリキュラム>

1)龍馬の森植物観察会 講師:稲垣典敏/土佐植物愛好会
2)森林の健康診断 講師:南基泰/中部大学応用生物学部教
4)久保谷渓谷セラピーロードでの植物観察会 講師:稲垣典敏/土佐植物愛好会
5)有用用植物資源として約50種類の観察ノート記録
講師:渡邊高志/公立大学法人 高知工科大学地域連携機構補完薬用資源研究室・教授
6)紙すき体験工房「かみこや」にてワークショップ(卒業証書制作)
講師:紙すき指導:ロギール・アウテンボーガルト客員教授(和紙職人)

受講者の感想

フィールド授業では、梼原町の自然を満喫しながら、授業に出てきた紙の原料になるミツマタを観察したり、お茶にできる植物などを、実際に採取したり匂いをかいだりと、体験的に学ぶ事が新鮮でした。

今回フィールドになった梼原町は、高知自動車道路の須崎東ICから、四国カルストに向かって三桁国道の上り坂を車で1時間程かけてたどり着きました。少し目線をあげると山の頂きに風車が周り、一面高い山に囲まれた緑の深い土地でした。北と西が愛媛県に接する県境の町で、四国力ルストの麓に位置しています。四国カルストでは、草原に連立する白い石灰岩が雄大な景観を作り出していました。また、1,000mを超す四国山地に囲まれている自然豊かな里山が維持されています。一方で町の面積の91%を占める森林を活用した木質バイオマスの利用や、太陽光発電、風力発電、小水力発電など、自然エネルギーを活用した街づくりを行っており、2009年1月22日に政府より環境モデル都市に選定された先進的な取り組みを行っています。

そうした先進的な取組みは森の中にも広がっています。例えば今回植物観察を行った、久保谷渓谷セラピーロードではふかふかしたコケの道やカサカサした落ち葉の道など変化に富み、気持ちのいい散歩が楽しめます。また、およそ100年もの間、水田を潤わし続けている水路と並行しているため、苔やシダなど水辺を好む植物も楽しめました。こうした森林浴のできるセラピーロードを積極的に整備している梼原町はとても素敵だと思います。

今回始めて"森の健康診断"という森林の評価方法を体験しました。こうした森林の健康診断が必要な理由は、人工林の植栽木の密度が過密な場合、雨水の土壌しみ込みが悪い場合や、貧弱な樹木が増えることがあり、大雨の際に土砂崩れを起こしやすい危険があるからです。例えば過去には、2009年8月9日から10日未明にかけて発生した台風9号による豪雨で、兵庫県の佐用町、宍粟市、朝来市などに、土砂崩れによる大きな被害がおきました。佐用町だけで死者・行方不明21名、全半壊8棟、床上浸水774棟、床下浸水579棟、落橋14カ所などの大惨事に発展したこの大雨の被害原因は台風による大雨に加え、スギとヒノキの放置人工林が原因だったそうです。戦後の拡大造林政策によって、自然の森が植えかえられ、樹木が売れなくなると、日本各地で放棄された人工林が増えました。

実際に受講生と共に梼原の龍馬の森の山腹において,"森の健康診断"を行った結果、梼原の森は健全な植栽管理がされていることが判り,フィールド授業の大切さを知るきっかけになりました。
いつの時代も大きな自然災害の前にはどんな文明も太刀打ちできません。今回のフィールド授業のなかで、梼原町の深い森のなかでよりいっそう自然と上手くつき合うことの大切さを学ぶことができました。

最終日には野外授業として,ロギール・アウテンボーガルト客員教授(和紙職人)による紙すき体験実習と卒業証書の制作を体験しました。
午後13時より梼原町太田戸の「かみこや」に於いて、楮,ミツマタ,そしてガンピという日本の三大和紙の原料植物を使った卒業証書の制作と紙すきに関する約2時間の実習講義を受けました。卒業予定者5名分の卒業証書の制作にあたって,「かみこや」付近に観られる植物を採集し,紙にすき込んだ作品を制作することになりました。生きた植物の葉や枯れた葉を使って、和紙原料をすきながら上に乗せ,そしてさらに原料を流し乗せながら厚みを出し、重ねて行く作業を繰り返しました。

最後に,「龍馬脱藩の道」の土など3種の別々の土を混ぜた紙(楮)の原料繊維を使いました。それから青色の紙(ガンピ)の原料繊維,ミツマタの繊維などを最後に上から薄く幾度か重ねがけして卒業証書の骨格が仕上がりました。参加者の作品は,全て作風が異なり、どれも個性的なものでした。普段では体験できない紙すき体験実習を通じて,植物を学ぶ楽しさと日本の伝統文化と技術を知ることができる一日となりました。制作した卒業証書は,さらにロギール・アウテンボーガルト先生の手により圧搾,乾燥,仕上げという工程を経て,後日無事届くということなので、出来栄えを楽しみにして,紙すき体験工房「かみこや」を後にしました。