研 究 紹 介

1. 専門分野:
(1)ロボット工学において、高速度・高精度を目的とする産業用ロボット
           ではなく、インテリジェンスと心を必要とするヒューマン・フレン            ドリーロボットを研究している。          (2)制御工学において、単なる信号の流れだけを議論している所謂"現代 制御"ではなく、エネルギーの流れと感性概念をも扱える新しい制御 工学を構築し、そのヒューマン・フレンドリーロボットへの適用を研 究している。
2.研究テーマ: ○ 理論構築:   (1)感性フィードバック制御系の設計理論          (2)距離型ファジィ推論法          (3)ゴムストリング型連想記憶アルゴリズム ○ システム開発: (4)健康増進用乗馬ロボットシステム          (5)健康増進機能を有する知能電動車椅子 (6)マッサージロボットシステム (7)自立・自律型全方向知能移動ロボット (8)各種オリジナルな健康増進機器の研究開発
3. 内容紹介: (1) 感性フィードバック制御系の設計理論: 現在の制御工学では信号の伝達について議論している。 例えば位置、速度、電圧、電流、温度、圧力などのような「計れる」物理量によって表されている 制御量を対象としている。これらの物理量の大きさが一つの数値で定量化されている。数学の言葉 で言うと概念を表す集合における一つの要素によって表現されている。すなわち、現在の制御工学 は集合中の要素を動かす学問であると理解しても良い。しかし、現実の社会では集合で表す感性概 念そのものを動かす仕組みもたくさん存在し、もっと重要である。我々がこのようなシステムを感 性フィードバック制御系と呼んでいる。また、信号だけでは物を動かせない。物を動かすにはエネ ルギーが必要である。したがって、エネルギーと感性概念基づいて新しい制御工学の理論体系を構 築することを目指している。 (2) 距離型ファジィ推論法: 適合度を推論の根拠とする従来のファジィ推論法の問題点を根本的に改善 するために、ファジィ集合間の距離という概念に基づいて新しいファジィ推論法をシリーズ的に提案 している。本推論法は距離型ファジィ推論法と呼ばれており、既にPart1から〜Part12まで完成し ている。今後、色々な側面から理論的に議論していくと共に、大型推論エンジンを開発する。 (3) ゴムストリング型連想記憶アルゴリズム: 我々人間が過去の物事例えば友人の写真からこの友人の 性格を連想する場合もあるし、偶に本人から貰ったプレゼントから同一友人の性格を思い出す(つま り連想)こともある。また、同じ写真を見ても場合によって性格ではなく友人との遊び場面を連想す ることがある。つまり人間の連想においてロバスト性が存在している。本研究では、提案しているゴ ムストリング型連想記憶モデルに人間らしいロバスト性を持つ連想記憶アルゴリズムを開発している。 (4) 健康増進用乗馬ロボットシステム: 乗馬によるリハビリテーションはイギリスをはじめヨーロッパ では理学療法士によく使われている。これは、乗り手は馬の動きに合わせてバランスを取ろうとする ので、適度なリラックスと緊張感を産み、脳幹を刺激し、筋肉の発達、血液の循環を助け、肺活量も 増し、健康全般を促進するからである。しかし、リハビリ用の穏やかな馬が非常に少ないだけではな く、馬とリハビリとも分かる訓練の担当者の確保、場所の確保、馬の飼養などで高額な費用を必要と する。したがって、乗馬ロボットを開発し、実際にリハビリの臨床実験を行っている。本プロジェク トは、日本医科大学、高知医科大学、松下電工株式会社との共同研究である。 (5) 健康増進機能を有する知能電動車椅子: 高齢化社会に向かって、高齢者・障害者の足代わりになる 乗り物として電動車椅子の研究開発が盛んに行われているが、現状では病気や障害に陥ってからの消 極的な移動手段に過ぎでない。すでに歩く機能を失った高齢者・障害者にさらに腰にも障害が起こる と、車椅子さえにも乗れない寝たきり状態に追い込まれてしまい、家庭と社会に負担を掛ける。しかし、 歩けないため、上半身を鍛える運動方法が制限されている。そのためには、単なる移動手段としてでは なく、電動車椅子そのものに健康増進機能のあることが望まれる。また、従来型(前受動輪+後駆動輪) 電動車椅子が回転半径より狭いところでは使えないので、一般的な住宅内、病院、および施設で使用す ることが極めて困難である。従って、回転運動するのではなく、そのまま希望する前後左右の全方向に 自由に移動できる電動車椅子がもっとも望ましく、要望も強い。よって、我々が健康増進機能を有する、 室内外の両方とも使える全方向移動可能な電動車椅子を開発している。株式会社池内鉄工との共同研究である。 (6) マッサージロボットシステム: 物理的な健康増進法の一つであるマッサージの有効性が医学的に確認 されているが、ノーハウを持っている医者は非常に少ない。一方、簡単な電気マッサージ装置は販売さ れているが、プロのように位置や圧力などを柔らかく自動調節することができないので、その効果には 限界がある。ここでは、人間の感情や生理的状態などを動的にセンスし、それに従って積極的に反応し 動作を変えていくような技術を開発し、 マッサージロボットへ適用する。医科大学、リハビリテ−ショ ンセンターと共同で進めている。 (7) 自立・自律型全方向知能移動ロボット: 高齢者をターゲットとして、 ホームサービス知能ロボットを 開発している。主に人間行動の理解、感情の表現、経路計画、軌道計画、リアルタイム障害物回避など のアルゴリズムを開発している。移動機構はMITの全方向移動技術を利用している。サーボ制御と計画は、 提案したデジタル加速度制御法と、サーボ系の特性を考慮した最適軌道計画法を活用している。(株)松 下技研との共同研究である。 (8) 健康な長寿こそが幸福な人生であり活気ある社会となる。病気や障害に陥ってからの介護機器を開発する ことが必要であると同時に、健康増進や疾病予防に積極的に寄与することも大事である。このような研究 立場から、産・学・官・民の力を合わせて、色々なオリジナルな健康増進機器の研究開発を行っている。 機会があれば詳細に報告したい。

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