-
人力発電教材の開発
![]() |
1.人力発電の意義![]() ![]() 本研究会ではエネルギー教育の教材として人力発電を研究しています. 人力で電気を起こすことができる,という体験だけであれば 理科の実験で使う手回し発電機や自転車のダイナモ, ハンドパワーでの携帯電話充電器等があり,定性的には良く理解できます. しかしエネルギーと地球環境の問題を考えるときは, 常に定量的な把握に務めなければなりません. 発電量を正確に測定し,ワット(W)とはどのような単位なのか, 体感することが重要と考えます. 携帯充電器で鉄道模型を走らせる,それだけで面白く興味を持ってもらえますが, 我々はもう1歩踏み込んで,それはいくらの電力なのか, 人力を究極的に引き出して最大限のパワーを得ると何Wなのか, 正確に計測することに意義があると考えています. エネルギー教育における人力発電の意義について,日本エネルギー環境教育学会 第3回全国大会で発表しました. 講演で使用したスライドのPDFファイル 日本エネルギー環境教育学会の学会誌に関連する研究論文があります. 八田 章光:「人力発電機を用いたエネルギー科学教育の実践」 −理工学教育から学校教育へのアプローチ−, エネルギー環境教育研究, Vol.1, No.1, (2007) 40. 2.ハンドパワーで走る鉄道模型平成14年に拠点大学としてエネルギー環境教育に取組みはじめたとき, たまたま秋葉原で面白い発電機を見つけました. ハンドパワーで携帯電話を充電する,商品名『ドルフィンパワー』です. 理科教材として,直流モーターを手で回して発電する手回し発電機があり, 機械的な仕事が電気に変換されることが分かりやすい教材ですが, 『ドルフィンパワー』にはさらに魅力的な機能があります. まずは付属のケーブルで携帯電話を充電できること,携帯電話を充電するため, 発電した電力を安定な直流5Vに調整する電子回路が内蔵されています. 発電機自体は回転機ですが,ハンドルをまわすのではなく, 握力で握る動作がギアで弾み車を回転させて発電する仕組みになっていて, 我々が『ハンドパワー』と呼ぶ理由です. さらに携帯充電用の接続ケーブルに加えて,おまけの白色LEDがついています. LEDにはスーパーキャパシタが組み込まれていて,しばらく発電すると キャパシタに充電されて数分以上発光が続きます. そして商品名の由来と思われますが,洒落た形をしています. これで実売価格が700円程度とは信じられません. ![]() ![]() ハンドパワーの発電によりNゲージの鉄道模型を走らせてみました. Nゲージの模型は通常8V〜12V程度の直流電圧で駆動します. ハンドパワーの発電機は出力を5Vに制御しているため, 1個ではややパワー不足で,2個を直列にすると走ります. さらに2個直列を2回路並列に,4つの発電機を使うと, 列車を長くつないでも走ります. 大人がはまってしまうこの教材を,学校で使ってみました. 4人チームで発電して,模型を2〜3周,周回させる競争をします. やみくもに力を入れるよりも,掛け声を掛けてタイミングを合わせると 良く走ります.発電のタイミングを合わせないと, 発電していない発電機が直列の抵抗になって電流を妨げてしまうためです. 仲よく協力して発電したチームが好成績になるところがおもしろい. ハンドパワーの発電は安定ではありませんが,Nゲージ模型を走らせると 平均的には一つの発電機で0.5W程度の電力です. 3.自転車人力発電エネルギー環境問題を考えるときエネルギーを定量的に理解することが 必須です.良く使われる原油換算は物質量に換算して体積として 理解しようとするものですが,必ずしも容易にイメージできません. 電力量換算でkWhというのは,身近な電気のエネルギーで,しかも 電気代の計算に使われることから馴染みがあります. 人力発電を行うことはエネルギーの微分量である仕事率を体感し, その時間積分としての電力量のエネルギーを把握する教材として 有効であると考えます. 簡単にいえば100Wとは何?に正確に応えることです. ここで求められることは,定性的に『電気を起こすことができる』, という体験ではなく,定量的に100Wの仕事率を体感することです. 効率の悪い発電機で,肉体的には大きな負荷を負って仕事をしている, 一生懸命発電しているのに,出力の発電量が僅かというシステムは むしろ誤解を招くだけです. 電力の正確な計測や使いやすい電圧に変換する回路も含めた 人力発電システム全体を最適化し,人力を効率よく電力に変換する, 人間の限界を引き出すシステムが必要です. 人力を明確にすることでエネルギーを計測する単位を構築することが目的です. 高知工科大学エネルギー科学教育研究会における 自転車人力発電機,開発の歴史をご紹介します.(1) 自転車人力発電1号機平成15年9月に自転車型人力発電機第1号機を試作,最初は自動車用の オルタネーターを自転車に組み込み,10月28日大学で行った 楠目小学校の体験授業で初デビューをはたしましたが, 残念ながら出力は数ワットから高々数10ワットに留まりました. 本来の人力はもっと大きいはずであると考え,改良を検討しました. 平成16年に,人力をより有効に引き出すには,コギングトルクがなく 回りはじめの軽い『コアレス発電機』が適していると考え, 地元窪川のスカイ電子(株)が小型風力発電用に開発している 『コアレス発電機』を導入することにしました. コアレス発電機に取り換えたところ,人力で200W〜300Wが簡単に出力できること, 瞬間最大では600Wまで発電できることが実証されました. 記念すべき『コアレス採用自転車人力発電機第1号機』は,いまも高知工科大学 電子・光システム工学科学生実験室に展示(少しじゃまになっていますが) されています.
|