科学研究費補助金基盤研究(S)
「西アジア死海地溝帯におけるネアンデルタールと現生人類交替劇の総合的解明」
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■研究計画(2)
シリア・デデリエ洞窟発掘
[研究目的]
今や西アジア死海地溝帯を代表する旧石器遺跡であるシリア・デデリエ洞窟の発掘を進め、ヤブルディアン(30万年前-)、初期ムステリアン(20万年前-)、後期ムステリアン(7万年前-)、ナトウーフィアン(1万4000年前-)に到る長大な洞窟史を復元し、旧人ネアンデルタールと新人ホモ・サピエンスの交替劇の真相に関わる一次資料の一層の充実をはかる。なお、同発掘調査はシリア文化省との共同調査であり、同国Sultan Muhesen、Adel Abdul-Salam、Youssef Kanjo、Bassam Jamousが調査組織に加わる。
[2005-2006年度計画]
1)ナトウーフィアン建造物の発掘(1万4000年前以降)
2004年度発掘で現れた1万年前のナトウーフ期の建造物の発掘を実施する。同期の建造物の発見はシリアでは初めてである。同期は西アジアで起こった食料革命の直前に当たり、狩猟採集社会から農耕社会への移行人類史の時代的・社会的背景を説明するために欠かせない。従って、共伴する動物化石・植物化石の同定がきわめて重要であり、それぞれ、Christophe Griggo、George Willcox、Lionel Gourichonとの共同研究を立ち上げる。また、同期の代表的文化遺物である貝器の研究をSofie Debruyneとの共同研究として実施する。
2)後期ムステリアンの発掘(7万年前以降)
1995,1997年に現れたデデリエ・ネアンデルタール第1号、第2号埋葬人骨出土地点の発掘を継続拡張し、ネアンデルタール人骨ならびに関連する後期ムステリアン旧石器資料、動物化石・植物化石資料の一層の充実をはかる
3)初期ムステリアンの発掘(20万年前以降)
2003年度発掘で上記ナトウーフ建造物の下層3-4メートルから発見されたムステリアン石器は当洞窟で発見された5万年前以降のネアンデルタール人骨に伴った石器と形態学的に異なり、既設の編年知見に基づくと10万年前の初期ムステリアンである。ただ、発見資料は少量でその全貌を明らかにし、併せて動物化石・植物化石さらに化石人骨の発見を目指して発掘面積を拡大する。
4)ヤブルディアンの発掘(30万年前以降)
2003年度発掘で上記初期ムステリアンの下層からムステリアン石器とは異なるタイプの石器が発見された。既設の編年知見に基づくと30万年前以降の前期旧石器ヤブルディアンである。西アジアにおいては、ハンドアックスを伴うアシュレアン文化とムステリアン文化との橋渡しを演じたと考えられている謎の文化である。発見例がきわめて少なく、その担い手については全く謎である。きわめて重要な発見であるが、発見資料は少量でその全貌を明らかにし、併せて動物化石・植物化石さらに化石人骨の発見を目指して発掘面積を拡大する。
5)遺跡年代測定
発掘の経過に準じて年代測定試料のサンプリングを行い、各地層、言い替えれば、上記各時代文化の年代の確定をはかる。測定法として放射性炭素年代測定のはかに、光励起ルミネッセンス、熱ルミネッセンス、ウラン・トリウム法の原理に基づく測定法も計画し、Hélèna Valladas、Jean-Luc Schwenningerとの共同研究を立ち上げる。
6)自然遺物の同定
動物化石・植物化石の同定については、わが国に当地域をフィールドとする専門家がいないため、Christophe Griggo、George Willcox、Lionel Gourichonとの共同研究を立ち上げる。また、花粉分析を行うためにAline Emery-Barbierとの共同研究を実施する。
7)土壌堆積物の分析
洞窟土壌堆積物の分析については、Marie-Agnes Courtyとの共同研究を立ち上げる。
8)デデリエ洞窟三次元計測
洞窟の形態および発掘状態ならびに発見物の分布状態を立体的に復元するための三次元計測の方法技術を検討し、Aline Emery-Barbierによる予備的計測を実施する。
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