科学研究費補助金基盤研究(S)
「西アジア死海地溝帯におけるネアンデルタールと現生人類交替劇の総合的解明」
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■研究経過(1)人類進化博物資源ポータルサイト

1. 人類進化博物資源データベース

[研究目的]
旧人ネアンデルタールと新人ホモ・サピエンスの学習能力の優劣を探り、違いがあるとすればどのような違いであったかを論じるために、両者の知的情報処理の所産物、言い替えれば、両者の遺跡遺物の種類内容を組織的、系統的に比較することのできる「人類進化博物資源データベース」の構築を目指して、これまでに蓄積されている膨大な知的所産物の収集整理入力を行った。

[研究組織]
赤澤 威、西秋良宏、近藤 修、米田 穣、石田 肇、森 洋人、仲田大人、山藤正敏、石井理子、福本郁哉

[当該年度中に対象とした遺跡群]
1)東京大学西アジア調査団が調査した遺跡
  • シリア・デデリエ洞窟
  • シリア・ドウアラ洞窟
  • レバノン・ケウエ洞窟
  • イスラエル・アムッド洞窟
  • 2)内外研究者によって調査された世界各地の旧人ネアンデルタール、新人プロト・クロマニョン、新人ホモ・サピエンス居住遺跡
    [データシート目次]
  • 遺跡書誌情報
  • 遺跡遺構の写真・測量図・堆積物データ
  • 化石人骨・石器・動物化石・植物化石の写真・実測図・計測値データ
  • 報告書論文要旨・ビジュアルデータ・計測データ
  • 現地の自然・地形・風俗・民俗・民族・遺跡等の現状写真データ
  • [デジタル化データ量]
  • 遺跡データ:1034遺跡
  • 画像データ:10,034点
  • 図面:217枚
  • 古写真プリント:385枚

  • 2. 化石人骨データベース

    [研究目的]
    世界各地で発見記載されている化石人骨の総合目録化のためにデータの集積整理およびデジタル化を行った。

    [研究組織]
    近藤 修、石井理子、福本郁哉
    [データシート目次]
  • 化石人骨資料名
  • 時代年代
  • 年齢性別
  • 保存部位
  • [ データ量]
  • 遺跡データ:42遺跡
  • 人骨個体数:147個体

  • 3. 西アジア旧石器時代遺跡データベース

    [研究目的]
    死海地溝帯が位置する西アジア・レヴァント地方における時期別の化石人類拡散状況、適応の諸相等について分析するために不可欠な旧石器時代遺跡の網羅的データベース化を実施した。

    [研究組織]
    西秋良宏、仲田大人、山藤正敏

    [研究方法]
    データベース化項目、書式の決定、関連文献の収集、遺跡のマッピング、該当データの入力、作成データベースを用いた分析

    [研究経過]
    今年度は項目、書式等をととのえた上で、シリア、レバノン地方の旧石器時代遺跡につき文献を収集し、データベース化にとりくんだ。旧石器時代末から新石器時代初頭にかけての変化も探るため、初期新石器時代遺跡もリストアップした結果、レバノンで253遺跡、シリアで274遺跡を認めることができた。これらの遺跡を地図に落とし、時期、調査成果の概要を一覧表にする作業をおこなった。詳細な分析は未了だが、シリア、パルミラ地区遺跡群については若干の分析を加え、時期別に極端に遺跡数が変化する事実を明らかにした。

    [現時点の研究成果の自己評価]
    レバノンの遺跡群については現地研究者が作成した遺跡リストが既に存在したが、シリアについてはこれに類したデータベースは国際的にも皆無である。したがって、その作成・公表のみでも大きな貢献となる。なかんづく、パルミラ地区のそれは、東京大学が1960-1980年代に現地調査で得た原データを用いて作成しているため、完全にオリジナルなデータベースとなる。


    4. 遺跡年代データベース

    [研究目的]
    本研究では、旧人ネアンデルタールと新人ホモ・サピエンス交替劇に関するタイムフレームの高精度化を目的とし、西アジアを中心とした中期旧石器遺跡の年代データを集成し、地理学情報システム(GIS)に基づくデータベースを構築する。これは将来的に人類進化博物資源データベースの一環をなすものとなる計画である。このデータベースを構築することによって、過去の環境変動と遺跡の立地条件の関係を視覚的に理解することが可能になり、また化石人類頭骨に関するデータベースと連動することで、人類の形態や行動の地域的変動の背景をうかがい知ることができる。

    [研究組織]
    米田 穣、小口 高、鵜野 光

    [研究方法]
    本研究では、文献資料からすでに発表されている西アジア地域における旧石器遺跡の絶対年代に関する文献を集成し、データベースを構築する。さらに、地理的な情報や、発見された遺物の文化編年、人骨化石の特徴などの関連情報を原資料にあたって確認し、GISデータベースに必要な情報を集成する。それをもとに、地理学情報の知識をもつ専門家と共同で、GISデータベースを構築する。

    [研究経過]
    西アジアにおける遺跡年代データベースの構築にむけ、地理学情報システムの専門家と具体的なデータベース構築に向けた議論を開始した。その結果、昨年度まで集めた情報にいくつかの地理情報を付与することが必要であることが明らかになり、それらの情報を追加することで既存のGISデータベースを利用することが可能であることが確認された。現在、追加が必要な地理情報について、データを収集中である。

    [現時点の研究成果の自己評価]
    西アジアにおける理化学的年代に関するデータベースは、今回初めて構築が試みられており、当地域における人類進化に関して新しい視点を提供する可能性がある。同様の試みが欧州で行われて、氷河期における気候変動とネアンデルタールおよびクロマニョンの拡散にかんして重要な知見を提供していることからも、本プロジェクトによって広がりのある視野で検討することが可能できるようになると期待される。

    [2007年度以降の研究計画・方法]
    西アジアにおける遺跡年代データベースは、専門家の協力を得たことで2008年度にはたたき台となるシステムが稼動する予定である。2007年度以降は、年代データベースの拡充およびアップデートと並行し、人類博物資源データベースとの連携に関する技術的な問題を検討する計画である。その連携を踏まえ、2008年度以降、西アジアにおける人類進化研究にこれらのデータベースをどのように活用できるかについて議論を深めたい。


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