先進的研究 : 高知工科大学

高知工科大学

 

KUT_141030_0209_180px.jpgKUT_141030_0209_180px.jpg能動型コントローラーを備えた新型「惑星探査ローバ」

 

全教授KUT_141030_0192_180px.jpg全教授KUT_141030_0192_180px.jpgナノテクノロジーの進展に寄与する、制御可能な量子素子を考案

 

_MG_8509-2_180px.jpg_MG_8509-2_180px.jpg森林・有用植物の腑存量の予測モデルを構築

 

_MG_8730_180px.jpg_MG_8730_180px.jpg連合記憶で生じる脳活動パターンを明らかに

 

気候変動下の水資源政策決定支援システムの開発気候変動下の水資源政策決定支援システムの開発気候変動下の水資源政策決定支援システムの開発

 

八田教授KUT_141030_0130_180px.jpg八田教授KUT_141030_0130_180px.jpgプラズマの癌治療応用へ-メカニズムの解明

 

_MG_8277_180px.jpg_MG_8277_180px.jpg高鮮度保持技術で高知のメジカをブランド化

 

山本教授KUT_141030_0030_180px.jpg山本教授KUT_141030_0030_180px.jpg導電性 ZnO による高速応答水素ガスセンサーの研究開発

 

任教授KUT_141031_1080_180px.jpg任教授KUT_141031_1080_180px.jpgジェスチャーによる次世代ユーザインターフェースの実用化へ

 

渡辺教授KUT_141031_1015_180px.jpg渡辺教授KUT_141031_1015_180px.jpg土嚢と現地の伝統技術を組み合わせた学校づくり

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能動型コントローラーを備えた新型「惑星探査ローバ」

システム工学群 岡 宏一 教授

 近年、月や惑星におけるローバを用いた移動探査の実施や計画が増加しています。月や惑星の表面は細かな砂で覆われているため、地盤が軟弱で、急な坂道があったり、大小さまざまな岩石が散乱しているなど不整地になっています。一旦スタックに陥ると、抜け出すことが難しく、ローバが探査を行うためには高い走行性能が求められます。
 これまでは重量や供給電力の関係上、ローバのサスペンションはパッシブな機構のみを用いたものが考えられてきましたが、近年では技術の進展により、宇宙環境においてもアクティブな機構を有するローバの研究が進められるようになりました。そこで岡先生は、不整地での走行性能を検討する上で、路面粘着性と転倒安定性という二つの指標を設定。二次元方向に移動可能なおもりを動体上部に設置し、これらの指標を満たす新しいローバの開発に取り組んできました。
 度重なる実験の結果、斜面の角度に応じて重心位置を移動することによって、ローバの各車輪の垂直抗力を均一化できると同時に、ピッチ方向の転倒限界角度が大きくなり、安定性がよくなることが実証されました。つまり、重心移動を行うことが走行性能を向上させる上で有効な手段であることが明らかとなったのです。今後はさらに研究を深め、ローバが自律的に状況を判断し、路面の障害を最適な方法で乗り越えるための動きを制御できる「能動的なコントローラー」の開発をめざしています。

KUT_141030_0209_235px.jpgシステム工学群 岡 宏一 教授
_MG_2379_235px.jpgローバは走行部と可動重心部によって構成される。重心移動 によって各車輪の接地荷重を容易に変更することができる。

ナノテクノロジーの進展に寄与する、制御可能な量子素子を考案

環境理工学群 全 卓樹 教授

 量子グラフ理論とは、複数の一次元的直線を接点で接続したグラフのような構造物上における、量子粒子の動きをコントロールする理論。仮想的にさまざまな系を設計し、接点で起こるあらゆる現象を解析しています。
 ナノテクノロジーの発展により、微視的現象を扱う量子グラフは、ナノスケールの量子的な単電子素子の理論的モデルとして注目されるようになりました。たった一個の電子で動作する単一電子トランジスタといった新機能デバイスや、カーボンナノチューブなどのナノワイヤー、超電導体のエッジ電流など、幅広い用途への応用が想定されています。単一量子の運動を制御する技術が進展し、それらを理論的に取り扱う一般的な枠組みとして、量子グラフ理論を整備する機が熟していると言えます。
 全先生のこれまでの研究によって、量子グラフの接点では、通常の量子力学では見られない奇妙な現象が隠されていることが明らかになりました。さらに、量子グラフを用いたスペクトルフィルターとして、外部から電圧を与えることでコントロールが可能なモデルを考案。実現可能性の高い量子トランジスター素子のモデルとして、制御可能な量子スペクトルフィルターに新たな道を開いたことで、今後の同分野の進展に期待が寄せられています。

全 卓樹 教授環境理工学群 全 卓樹 教授
量子力学の考え方をわかりやすく解説した著書量子力学の考え方をわかりやすく解説した著書

森林・有用植物の腑存量の予測モデルを構築

システム工学群 高木 方隆 教授  渡邊 高志 客員教授

 リモートセンシングを専門とする高木方隆教授と植物分類学•薬理学に従事してきた渡邊高志教授は、地理情報システムと植物データベースを組み合わせた地域資源活用プラットフォーム「Lupines」を共同開発し、運用公開してきました。このシステムをベースに、従来の衛星データと地上調査データの中間に、新たに低高度空撮立体画像データを設け、森林・有用植物の腑存量の精緻な評価・予測モデルの確立をめざしています。
 宿毛市に建設中のバイオマス火力発電所の集材圏を中心に、3階層の測定データをキャリブレーションして空間解析を行い、GIS上での森林資源活用評価モデルを作成します。さらに高知県を中心とした四国全域で、県の産業推進に繋がる有用植物4〜5種の自生地調査を実施。GIS上で自生地適地予測を行い、賦存量の推定モデルを構築し、有用植物の産業化利用を行う上での基礎データとします。
 森林バイオマスの燃料利用と植林〜伐採サイクルの途中での林床における有用植物の適地生産を組み合わせることで、地球環境に負担のないエネルギー産業を可能にし、持続的な環境経営を実現します。

システム工学群 高木 方隆 教授/渡邊 高志 客員教授システム工学群 高木 方隆 教授
渡邊 高志 客員教授

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連合記憶で生じる脳活動パターンを明らかに

情報学群/脳コミュニケーション研究センター 中原 潔 教授

 複数の異なる刺激を関連させる連合記憶は、側頭葉の大脳皮質に蓄えられますが、その表面で起こる活動パターンについては明らかになっていませんでした。中原潔教授らはサルにおける実験によって、ペアとして結びつけられた記憶は一つの脳活動パターンとしてコードされることを発見。ヒトでも同様の実験を行うことで、研究の発展をめざしています。
ヒト被験者に図形のペアを学習させて連合記憶を形成させ、図形ペアの想起課題を行う間、MRI装置を使って、脳活動パターンを計測。得られたデータに対して脳情報デコーディング解析を行い、記憶した図形ペアの片側の図形によって生じる脳活動パターンが、図形ペアの相手方を見た時に生じる脳活動をもデコードできるかを実証します。これにより、ヒトの脳活動パターンに基づく記憶内容の解読が明らかになれば、世界に先駆けた成果となります。さらに、経頭蓋交流電流刺激法(tACS)で、特定帯域の交流電流刺激を付与することによる記憶機能の増進についても検証。さまざまな記憶障害に対するリハビリ等への応用が期待されています。

情報学群/脳コミュニケーション研究センター 中原 潔 教授情報学群/脳コミュニケーション研究センター 中原 潔 教授
情報学群/脳コミュニケーション研究センター 中原 潔 教授

気候変動下の水資源政策決定支援システムの開発

経済・マネジメント学群/社会マネジメントシステム研究センター 那須 清吾 教授

 水不足が多発する一方、洪水の危険度が高いと言われる四国地域。将来的には、気候変動によってさらに厳しい環境におかれると予想されています。そこで水質源管理面における気候変動の適応策立案に役立つ定量的情報を提供するため、四国・吉野川流域を対象に気候変動の影響を考慮した水循環、水利用、水環境の自然現象から社会現象に至る統合シミュレーションモデルの研究開発を行っています。
IPCC第4次評価報告書で示された世界25カ所の気候変動予測モデルの中から再現性の高いものを選び、四国地域に落とし込むことで、気候変動予測モデル、水資源量・変動量を予測する水文モデルを作成。地域の主要産業を考慮した水需要の分析をもとに、気候変動が社会経済等に与える影響の評価モデルを確立しました。
さらに流域住民を対象とした座談会を複数回開催し、気候変動に関する知識や予測について情報提供することで得られる住民の意識構造の変化を解析。地域経営を擬似的に再現することで、各自治体が政策を総合的に検討できるWebシステムの構築をめざしています。

那須 清吾 教授経済・マネジメント学群/社会マネジメントシステム研究センター 那須 清吾 教授
気候変動インパクトを予測する統合モデル

プラズマの癌治療応用へ-メカニズムの解明

システム工学群 八田 章光 教授

 大気圧プラズマや大気圧プラズマジェットは材料の表面処理などの産業応用だけでなく、ドラッグデリバリーや遺伝子導入などさまざまな先端医療への応用の可能性が示され、医療や生命科学分野に大きなインパクトを与えています。八田先生はプラズマ医療の可能性について高知大学医学部と共同で国内外の研究状況を調査、協同実験によって、癌細胞が選択的に死滅することの検証を行っています。
 現在はプラズマ照射が癌細胞に与える影響とそのメカニズムの解明に向けて、ポスドク研究員の呉凖席助教とともに、精密に制御された環境で再現実験を繰り返しています。大気中でHeガスのプラズマジェットを水や培養液に照射することにより、水中や培養液中に生成する酸素系活性種や酸化窒素系活性種を紫外吸収分光法で定量的に計測します。大気の成分は気温や湿度、冷暖房などに伴う室内の空気の流れにも影響され、精密に環境を制御することは容易ではありませんが、照射効果にさまざまな影響が考えられることから、精密な制御が重要です。高知大学医学部における、プラズマが癌細胞へ与える効果の検証と対応させながら、医療応用に優位性のあるデータを蓄積することで、プラズマによる新しい医療の普及が期待されます。

八田教授KUT_141030_0130_235px.jpgシステム工学群 八田 章光 教授
プラズマジェットの照射実験プラズマジェットの照射実験

高鮮度保持技術で高知のメジカをブランド化

システム工学群/連携研究センター 松本 泰典 准教授

 2008年に魚介類を凍らせることなく冷却保存できるシャーベット状の氷「スラリーアイス」の製造装置を開発しました。塩分濃度を1%にまで薄めてスラリー化することで、魚の凍結温度よりわずかに高い−0.9℃の保存状態を維持することに成功。日刊工業新聞社「モノづくり連携大賞」のほか、今春には「文部科学大臣表彰」を受賞するなど、画期的技術として高く評価されています。今では魚介類だけでなく、肉や野菜などあらゆる食材の品質保持に活用され、その用途は広がりを見せています。
 2009年からは中土佐町役場と連携し、町内で水揚げされるカツオを中心とした魚のブランド化を進めてきました。中でも、今力を入れているのが高知県内での漁獲量が全国の約4割を占めるメジカ。鮮度劣化の速さからほとんどが刺身として流通していませんが、低温化するに従って生鮮状態を保持でき、0〜-1.3℃の温度帯で保存すると凍結せずに、2日以内なら刺身として食せることを明らかにしました。高鮮度保持技術を活かし、高知のメジカをブランド魚として全国展開していきます。

システム工学群/連携研究センター 松本 泰典 准教授システム工学群/連携研究センター 松本 泰典 准教授
システム工学群/連携研究センター 松本 泰典 准教授

ジェスチャーによる次世代ユーザインターフェースの実用化へ

情報学群 任 向實 教授

 スマートフォンやタブレットPCの急速な普及により、そのコアテクノロジーであるヒューマンインターフェース技術は進化を続ける一方、操作の複雑化といった問題が生じています。任先生は、子どもや高齢者、障害者といった、すべての人間にとって使いやすいコンピュータ技術の実現に向けて、身振り手振りなど自然な動作による新しい操作技術の開発を行っています。複数のカメラで人の動作を検出し、世代や障害の有無による動きの違いを分析。タッチパネルを操作することが難しい視覚障害者が、ジェスチャーによって簡単に操作できるシステムへの応用をめざしています。さらには、ディスプレイの振動といった出力で、駅の時刻表の情報を取得できるなど、将来的には広範囲での実用化を視野に入れています。
 またタッチデバイスにおける指によるタッチ入力は、従来のペンによるストロークジェスチャの流用であるものの、その応用が妥当であるか否かは実証されておらず、両者を比較評価する研究報告は皆無でした。そこで、ペンと指によるストロークジェスチャについて、さまざまな特徴を実験によって調査し、ペンと指による相違を見出すことに成功。ペンに適したストロークジェスチャが指操作に適切かどうかを実験的に解明しました。それによって、指による自然かつ効果的なジェスチャーの実現のための有用な知見が明らかとなり、タッチパネルの操作性を向上させるインタフェースデザインに有用なガイドラインを構築しました。

任 向實 教授情報学群 任 向實 教授
ディスプレイの画面視覚障害者がバスの時刻表にアクセスする動きを検証中。 センサーが動きを読み取り、振動によって情報を出力させる。

導電性 ZnO による高速応答水素ガスセンサーの研究開発

総合研究所マテリアルデザインセンター長 山本 哲也 教授

 液晶テレビに代表される薄型ディスプレイには、電極として透明導電膜が不可欠です。現状では、主にITO(インジウム・スズ酸化物)が使用されていますが、インジウムが高価である上、資源問題や毒性の問題を抱えることから、解決策として酸化亜鉛(ZnO)が代替材料として注目を集めてきました。ZnO研究のパイオニアとして名高い山本先生は、2004年世界で初めてZnOを使用した透明導電膜の大型化に成功。2012年にインジウムの代替材料として酸化亜鉛を使った新電極を考案しました。2種類の添加元素を使用し、ZnO薄膜内のナノ構造や表面原子配列を設計し、湿度に弱いという欠点を解消。世界標準の基盤技術として、実用化に大きく寄与しました。
 そして、2014年には導電性ZnOを用いた水素ガスセンサーを新たに開発。水素エネルギーは、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとして期待されているものの、水素を有効かつ安全に活用するためには、室温レベルで安全に動作する安価な水素ガスセンサーの実現が焦点となっています。従来の絶縁性酸化スズを基材に用いたものは、400℃に加熱する必要がありましたが、ZnOの薄膜を用いたことで、150℃程度で素早く動作する技術を実現しました。低温で高速応答するだけではなく、コストも低減できることから、燃料電池車などへの応用が期待されています。今後はより低温でより速く作動するセンサーの実現に向けて、さらに研究を進めていきます。

山本 哲也 教授総合研究所マテリアルデザインセンター長 山本 哲也 教授
酸化亜鉛の結晶構造モデル酸化亜鉛の結晶構造モデル。六角柱が連なってできている。

土嚢と現地の伝統技術を組み合わせた学校づくり

システム工学群 渡辺 菊眞 准教授

 インド、ヨルダン、ウガンダなど世界の貧困地や被災地で、現地の材料を用いた建築物を作り続けてきた渡辺先生。中でも、袋に土を詰めた土嚢を積み上げて建物を作る土嚢工法では数多くの実績を残してきました。
 2013年にはタイとミャンマーの国境付近の町、サンクラブリの学校兼児童養護施設の新校舎を設計。現地では木の伐採が著しく制限されている中、伝統的な高床式住居にヒントを得て、土嚢をドーム上に積み上げた構造物の上に、鋼管構造の高床空間を載せるという新しい工法と空間構成を提示しました。金属パイプを使用したのは、現地で簡単に入手可能であり、土嚢建築同様、誰もが容易に施工可能であることから。2階の高床部分の造作は、現地のガリアン族が得意とする伝統的な竹造を採用。6分割の板状にした竹を竹皮ヒモと蔓草で単管に緊結し、現地の伝統技術との融合を図りました。さらに、1階の土嚢ドームによる空間には、「祈りの間」を設け、現地の宗教文化にも配慮しています。
 この建物は、カナダで最も著名な国際建築賞とされる「2014 AZ Awards for design exelence」で、1000平方メートル以内の建築施設部門の最優秀賞に選ばれ、英国の建築雑誌「アーキテクチャルレビュー」主催の若手対象コンペでは優秀賞に、米国の宗教建築コンペ「フェイス&フォーム(信仰と形)」でも入賞するなど、世界的に高く評価されています。

渡辺 菊眞 准教授システム工学群 渡辺 菊眞 准教授
高床空間2階の風が吹き抜ける高床空間は現地の竹を多用している。