電子講義:量子グラフの理論序説

全卓樹

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    量子グラフ理論序説:量子特異点の物理(0-1)

はじめに

本論説は、現在高知工科大の数理工学研究室(理論物理研)で行われている研究の一つの柱「グラフの量子論」について解説したものである。

この論説は筆者がこれまでに科学雑誌等にかいた研究の解説をもとにしている。大学院での研究を始めるための前提条件を準備する研究室内でのセミナー形式の勉強会の素材としてウェブ形式として拡充整備したものであるが、理論物理に興味をもった学部生諸君、また一般科学雑誌やインターネット上で関連する話題を見かけて興味を持った他所の院生諸君、さらには研究雑誌で見かけた我々の論文の背景となる考えを調べておられる前線の研究者諸兄諸姉にも、あるいはこれが役だつかも知れないとの思いから、インタネット上に公開することにした。

グラフの量子論、またの名を「点と線の量子論」は、最近流行のナノテクノロジーに素材ととった量子論であるが、そこでは初等量子論の枠内に、通常はより高度の数学を必要とする「場の量子論」にのみ登場するとされる「くりこみ」「量子異常」「非ホロノミー」といったエキゾティックな現象みられる。

つまり教育的観点から言えば、初等的な設定で「現代量子論」もしくは「非自明な量子論」が学べ貴重な題材なのである。例えてみれば、モーツアルトの神品「ドン・ジョバンニ」の正規のオペラ形式ではない人形劇形式での上演のようなものであろうか。しかるべき演出家のもとしかるべき技量人形遣と歌手をもって上演されると、人形劇場の限られた枠組みの舞台の上に、この人の手になるとは到底思えない作品の神髄が立ち現れるのである。

本稿で論じられている事項は、基本的にはすべて筆者および共同研究者の独自の研究の成果である。それらは原著論文十数編のここかしこに散乱した素材をまとめて解りやすい(とおもわれる)解説を施した形式に書き下ろしてある。ここに記された理論、手法、素材の学術的および教育的転用は、出典を明示された上で自由に行っていただきたい。それ以外の商業的、政治的等の目的での転用は一切ご遠慮いただきたく思う。

この場を借りて共同研究者たる埼玉大の重原孝臣博士、高エネルギー加速器研究機構の筒井泉博士とタマーシュ・フロップ博士に感謝の意を表したい。彼らの智慧の注入なくてはここに記された内容は存在しなかったであろう。他方ここに観られるかもしれない過誤については、それがすべて私に属する事は言うまでもない。

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