二つの例1
前節の少し抽象的な議論を分かりやすくするために3つの具体例でみてみる。最初の二つは不変トーラスで、三つめが等エネルギー球面の例である。まず役に立つ具体的な表式
を得ておく。最初の例としてパラメタ空間で μ = 0 、 ν = ν0 と固定したものを考える。この場合 ス0 が何であっても同じであることはオイラー角の定義を考えればすぐに解る。この条件の元でパラメタ (θ+, θ-) で張られる U は を満たす「P3 不変トーラス」に属し、具体的には
とU そのものが対角型である。このときの波動関数の接続条件は
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 、
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(4.3)
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で与えられ、これは原点の右側と左側が互いに分離した独立の系として扱える事を示している。つまり原点には「越えられない壁」が立っており、θ+ 、 θ-は各々壁の左右での波動関数の境界条件をあらわし、0でノイマン、π でディリクレ型の条件となる。
次の例として μ = π/2 、ν = 0 と決めて (θ+ , θ-) で張られる点状相互作用全体を考える。この場合 U は を満たす「P1 不変トーラス」に属し、P1 が通常の意味のパリティ変換であることを考えれば、これは要するに左右対称な点状相互作用全体を表している。行列 U は
という形をしていて波動関数の接続条件は
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 、
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(4.5)
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で与えられる。ここで 、 はそれぞれ対称、反対称な波動関数で、系のパリティ不変性からこの二つの状態は当然分離して、各々の性質がパラメタθ+ と θ- によって各々独立に決まるのである。ここで特に (θ+ , θ-) = (θ+ , 0) と置いてみると、反対称な波動関数には作用せず、対称な方の波動関数は連続でその導関数に飛びが生じ、これは「デルタ関数ポテンシャル」 峩 に他ならない。次に(θ+ , θ-) = (0, θ-) の一群を考えると、今度は対称な波動関数は相互作用をうけず、反対称な方の波動関数そのものに飛びが生じ導関数が連続な「エプシロン関数ポテンシャル」 峽 である。これは移送行列表示に直して(2.11)の形が得られる事で直接確かめられる。
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