スケール不変性とマクロスケール可解量子カオス1
量子的スケール異常に伴って点状相互作用の一群が発生した経緯については以上のとおりであるが、一方で量子的点状相互作用にはスケール異常だけでは汲み尽くせない部分もある。それはつぎのような「スケール不変な量子点状相互作用」の存在に明らかである。
第三節にでてきたU(2)点状相互作用の「角度パラメタ表示」(3.4)、(3.5)、(3.6)で θ+ = 0 、 θ- = タ と固定して (μ, ν) で張られる点状相互作用の一族を考えてみよう。これはつまり と選んだ事になるので U として
で表される球面全体を考える事になる。この一族の特徴はスケールパラメタ L0 が消えている事で、それ故この等エネルギー球面を「スケール不変球面」と呼ぶ事ができよう。実際 U の条件式(2.7)から L0 が消えるのは であり、この一般解は(6.1)であることは簡単に示せる。つまりこの U はスケール不変な点状相互作用全体を尽くしている訳である。この U を左右の波動関数の接続式(2.11)の Λに書き直すと、
となる。ただし とした。つまり 、 と左右の波動関数とその微分が、特異点の一方から他方に移るときそれぞれ縮小拡大されて、その両方にとびが生ずる。これによる一次元直線上の散乱過程を考えると、(3.11)から
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 、 
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(7.3)
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となり、看板どおりに透過振幅、反射振幅双方とも入射エネルギー依存性の無い一定数である。
奇妙な事に、これは高エネルギーの極限 を考えてもかわらない。つまりこれは、我々の巨視的に扱えるエネルギースケールにあってまで、入射粒子に対して一種のランダムな確率的半透膜として振る舞う点状障害物の存在を示していることになる。決定論的な法則のもとで量子的確率性の結果が巨視的スケールにまで現れうるのは、高エネルギー極限が決して「古典極限」になっていないこととの既決なのであるが、いずれにせよスケール不変性を壊さないままに存在可能な相互作用といった本来古典力学では全く考えられないものの存在は、量子的波動現象の不思議さを改めて認識させるものである。
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