グラフの量子論の設定4
結局、点状相互作用はその左右での自由波動関数の「ミスマッチ」をもたらし、一般的には波動関数、その一階導関数の双方の特異点前後の不連続性を惹起することができることになる。
それはいいのだが、我々の知っているデルタ関数ポテンシャルはどうなったのだろうか?この形のどこにもデルタ関数ポテンシャルらしきものが見えてこないではないか。
この点を明確にするには上記の表示よりと少し違った
という「移送行列表示」にした方がよく判る。(2.7)、(2.8)を書き直すと移送行列 Λは
ただし明らかにこの表式が意味を持つのは の場合に限られるので、この表式よりも(2.9)、(2.10)の方が全ての点状相互作用を取り扱える分数学的に優れた表式だといえよう。
さて式(2.11)で αi = 0, βr = 0 とおいて、さらに βi = sin ξ という場合を考えてみる。すると条件 から残るパラメタ αr は αr = cos ξ であるか、あるいは αr = cos ξ のどちらかである。それぞれの場合を Λδ 、 Λε とかくと
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 、 
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(2.11)
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となり、 Λδ は波動関数の微分に非連続のある「ディラックのデルタ関数型ポテンシャル」の問題に他ならならず、他方 Λε は微分は連続だが波動関数そのものに非連続のある所謂「エプシロン関数型ポテンシャル」になっている。これらよく知られた点状相互作用はいずれも点状相互作用全体のうちの特殊な一パラメタ属に過ぎないことが理解される。
点状相互作用全体の中のこれでも特殊な一部分族であるのに、通常は「エプシロン型」でさえ「非標準的相互作用」というレッテルで遠ざけられる場合もみうけるが、これは全く不十分である事は、以下のいくつかの例で十全に明らかになるであろう。
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