Lesson15

公務員の仕事

早めに情報収集をしながら、試験対策を万全に行いましょう。
※掲載されている情報は変更される可能性があります。

1公務員ってどんな仕事?

公務員は、大きく国家公務員と地方公務員に分けることができます。採用先が国の機関であれば、国家公務員として、立法、司法、行政という政府の根幹を支える仕事に就くことになります。また、地方自治体の機関であれば、地方公務員として、その地域に密着した行政サービスなどを行うようになります。

公務員には、経費をできるだけ削減しながら、 国民、地域住民への貢献を最大化していくという難しい課題の解決が求められます。社会や人々への奉仕の心がなければつとまらない仕事ですが、それが大きなやりがいにもつながっていきます。

また、福利厚生が充実していて、不況に左右されにくく安定性があるという印象があるため、近年、競争率も高くなっています。公務員を視野に入れて就職活動するのであれば、早めの情報収集と準備が必要になるでしょう。

2公務員はどんな仕事を
しているのか

公務員の仕事は、勤務する官庁やそれぞれの部門、職種によって違います。民間企業とは比較にならないほど、幅広く多様な分野があることも特徴です。ここでは、公務員の仕事を大きく(1)行政・事務系 (2)技術系 (3)公安系 (4)資格系の4つに分けて、簡単に紹介します。

(1)行政・事務系の仕事

採用数が多く、公務員を代表する職種です。特定の部局に限定されず、本庁の各部門や出先機関など、さまざまな職場に広く採用されます。デスクワークが中心ですが、電話応対、窓口対応、営業、総務、庶務、人事、経理など幅広い仕事内容となります。「人」を相手にする仕事も多く、コミュニケーション能力や対人折衝能力が重要な部分を占めます。

(2)技術系の仕事

技術系の仕事は、専門分野によって限定して採用される仕事です。化学、薬学、農学など特定の分野の研究所で研究をしたり、電気、土木、建設、機械関係など、専門技術を要する仕事に携わります。異動も専門分野内の部署でしか行われません。ただし、就業してからは企画立案や事業執行にあたって、専門分野だけではなく行政全体を見渡せる幅広い視野が求められます。そのため専門知識や技術力のほかに、対人折衝能力や調整能力も重視されます。

(3)公安系の仕事

社会の安全と平和を守る仕事に携わるのが公安系の仕事です。地方公務員では、身近な仕事として、警察官、消防官などがあります。国家公務員では、刑務官、法務教官、入国警備官、皇宮護衛官、海上保安官、自衛官(陸・海・空)などがあります。

(4)資格系の仕事

保育士、栄養士、司書、薬剤師、獣医師、保健師など、それぞれの資格を持った人が、公務員試験を受けて合格することが必要です。どの職種も採用人数が少なく、その分、競争率も非常に高いのが特徴です。

3国家公務員試験

(1)職務内容の違いと想定される受験者層

 国家公務員の試験体系は、「総合職」「一般職」「専門職」「経験者採用」の4つに大別されます。

まず「総合職」は主として政策の企画・立案などの高度な知識、技術、または経験を必要とする業務に従事することを期待されています。試験の種類は、院卒者試験と大卒程度試験に分かれ、院卒者試験は大学院の修士課程、または専門職大学院の課程を修了した者と同程度、大卒程度試験は大学を卒業した者と同程度となります。

「一般職」は主として事務処理などの定型的な業務に従事します。試験の種類は大卒者程度と高卒者程度に分かれます。また採用予定がある場合は社会人試験(係員級)も実施されます。

「専門職」は特定の行政分野にかかわる職種になるため、専門知識を有するかどうかを重視して試験が行われます。試験の種類は大卒程度と高卒程度に分かれます。

「経験者採用」は民間企業などでさまざまな勤務経験を有する人を係長以上の職へ採用するための中途採用試験になります。

それぞれの試験内容については、下の表や次のページの一覧表を参考にしてください。さらに詳しく知りたいときには、人事院のホームページなどを調べてみるといいでしょう。

(2)総合職に関する外国語能力について

グローバル化の進展により、国家公務員にも英語など外国語によるコミュニケーション能力が必要とされる機会が増えています。平成27年度実施の総合職試験から外部英語試験が活用され、「TOEFL(iBT)」「TOEIC」「IELTS」「実用英語技能検定(英検)」の4種類について、最終合格者決定の際にスコアに応じた加算が行われています。

●主な試験種目について

基礎能力試験(多肢選択式) 公務員として必要な基礎的な能力(知能および知識)についての多肢選択方式による筆記試験
専門試験(多肢選択式) 各試験の区分に応じて必要な専門的知識などを検証する筆記試験
専門試験(記述式)
適性試験(多肢選択式)
【一般職試験(高卒者、社会人)、税務職試験】
速く正確に事務処理を行う能力についての筆記試験(置換・照合・計算・分類などの比較的簡単な問題を限られた時間内に番号順にできるだけ多く解答するスピード検査)
政策課題討議試験
【総合職(院卒者、教養)、経験者】
課題に対するグループ討議によるプレゼンテーション能力やコミュニケーション力などについての試験(英文または邦文による資料を参照する) 6人1組のグループを基本として実施
レジュメ作成→個別発表→グループ討議→討議を踏まえて考えたことを個別発表
企画提案試験(小論文および口述式)
【総合職(教養)】
企画力、建設的な思考力および説明力などについての試験
第Ⅰ部:小論文作成(課題と資料に基づき解決策を提案)
第Ⅱ部:プレゼンテーションおよび質疑応答(小論文の内容について試験官に説明、その後質疑応答を受ける)
政策論文試験
【総合職(大卒程度)】
政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力および思考力についての筆記試験(資料の中に英文によるものを含む)
総合論文試験
【総合職(教養)】
幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力についての筆記試験
一般論文試験
【一般職(大卒程度)】
文章による表現力、課題に関する理解力などについての短い論文による筆記試験
作文試験
【一般職(高卒程度)、専門職(高卒程度)】
文章による表現力、課題に対する理解力などについての筆記試験
人物試験 人柄、対人的能力などについての個別面接

●国家公務員採用試験の種類と区分
(過去の実施例 資料の出所:人事院ホームページより)

※試験の内容や受験資格は試験区分により異なります。必ず人事院のホームページで確認しましょう。

総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)
※2020年度

主として政策の企画立案等の高度の知識、技術又は経験を必要とする業務に従事する係員の採用試験

院卒者試験 大卒程度試験



行政 政治・国際
- 法律
- 経済
人間科学 人間科学
工学 工学
数理科学・物理・地球科学 数理科学・物理・地球科学
化学・生物・薬学 化学・生物・薬学
農業科学・水産 農業科学・水産
農業農村工学 農業農村工学
森林・自然環境 森林・自然環境
法務 教養



30歳未満であって、
修士課程修了、または修了見込みの者
(法務区分は、司法試験合格者)
21歳以上30歳未満の者
(教養区分は20歳以上30歳未満の者)

※法務区分は秋季に実施(司法試験合格者を対象)

※教養区分は秋季に実施(大学卒業後に採用されることを前提)

院卒者試験 大卒程度試験




1


基礎能力試験(多肢選択式)
知能分野24題、知識分野6題
基礎能力試験(多肢選択式)
知能分野27題、知識分野13題
専門試験(多肢選択式)
40題
専門試験(多肢選択式)
40題

2


専門試験(記述式)
【行政】3題
【その他の区分】2題
専門試験(記述式)
【政治・国際/法律・経済】 3題
【その他の区分】 2題
政策課題討議試験(6人1組を基本)
レジュメ作成→個別発表→グループ討議 →討議を踏まえて考えたことを個別発表 (資料の中に英文によるものを含む)
政策論文試験 1題解答
政策の企画立案に必要な能力その他総 合的な判断力及び思考力についての筆記 試験(資料の中に英文によるものを含む)
人物試験 人物試験

※法務区分(2020年度)は、
第1次試験:基礎能力試験(多肢選択式)
第2次試験:政策課題討議試験および人物試験

※教養区分(2020年度)は、
第1次試験:総合論文試験および基礎能力試験(多肢選択式)
第2次試験:企画提案試験、政策課題討議試験および人物試験

一般職試験(大卒程度試験)※2020年度
(高卒者試験)※2020年度

主として事務処理等の定型的な業務に従事する係員の採用試験

大卒程度試験 高卒者試験



行政 事務
電気・電子・情報、機械、土木、建築、物理、化学 技術
農学、農業農村工学 農業土木
林学 林業



21歳以上30歳未満の者

※短大卒業〈および卒業見込み〉の場合は受験可

高卒見込みおよび
卒業後2年以内の者




1


基礎能力試験(多肢選択式)
40題解答(知能分野27題、知識分野13題)
基礎能力試験(多肢選択式)
40題解答(知能分野20題、知識分野20題)
専門試験(多肢選択式)
40題解答(建築区分は33題)
【事務/税務】
適性試験(多肢選択式)/作文試験
適性:120題解答/作文:1題解答
【行政】一般論文試験 1題解答
【行政以外】専門試験(記述式)
1題解答
【技術/農業土木/林業】
専門試験(多肢選択式)
(40題解答)

2


人物試験 人物試験
【税務】身体測定

専門職試験 ※2020年度

特定の行政分野に係る専門的知識を有するかどうかを重視して行う係員の採用試験

大学卒業程度 高校卒業程度




皇宮護衛官採用試験(大卒程度試験) 皇宮護衛官採用試験(高卒程度試験)
法務省専門職員(人間科学)採用試験 刑務官採用試験
財務専門官採用試験 入国警備官採用試験
国税専門官採用試験 税務職員採用試験
食品衛生監視員採用試験 航空保安大学校学生採用試験
労働基準監督官採用試験 気象大学校学生採用試験
航空管制官採用試験 海上保安大学校学生採用試験
海上保安官採用試験 海上保安学校学生採用試験
- 海上保安学校学生採用試験(特別)
受験
資格
専門職種の特性などを踏まえ、試験ごとに設定



基礎能力試験(多肢選択式)(第1次試験)、人物試験(第2次試験)のほか、専門職種の特性などを踏まえ、試験ごとに設定

4地方公務員試験

(1)地方上級試験

都道府県や政令指定都市など、地方公共団体の幹部候補生を採用する試験です。各団体ごとに試験内容が異なりますが、試験区分は、行政などの事務系と、電気・建築などの技術系に分かれているのが一般的です。受験資格は、年齢制限以外に学歴制限を設けている場合もあるので、各地方公共団体への確認が必要です。

(2)地方中級試験

一般事務、学校事務、警察事務などの事務系のほかに、司書、栄養士、保育士などの資格・免許職や、農業、土木などの技術系が募集される場合があります。受験資格として、年齢制限があります。また、試験を実施していなかったり、年度によって試験がなくなる地方公共団体もあります。

(3)地方初級試験

一般事務、学校事務、警察事務などの事務系と、農業、土木、建築、電気などの技術系の募集があります。年齢制限と学歴制限を設けている場合があるので、地方公共団体ごとに確認が必要です。

5公務員試験について

公務員試験は、採用試験といっても実際は採用資格を得るための資格試験です。試験によっては、複数の試験を併願することも可能です。自分の目指す職種が決まったら、試験日を確認して併願できる試験があるかどうかをチェックしましょう。

(1)受験資格を確認

公務員試験には試験区分によって年齢制限があります。地方公務員の場合は、各都道府県によって年齢制限があるので確認しておきましょう。また、警察官や消防官のように身長や体重、視力などが一定の基準に満たないと受験できないものもあります。

(2)公務員試験の流れ

受験を決めたら、まずは試験に関する情報を入手しましょう。試験実施機関に問い合わせて受験申込書を早めに取り寄せて準備をしておくとよいでしょう。出願から公務員になるまでの流れは下図を参考にしてください。

(3)採用候補者名簿とは

公務員試験に合格したからといって必ず公務員になれるわけではありません。あくまでも採用資格を得たということなのです。成績上位者から順番に採用候補者名簿に登録され、任命権者はこの名簿の中から採用をしていきます。最近では面接を重視する傾向があるため、筆記試験対策に加え、面接対策もしっかり準備しておきましょう。

■出願から公務員になるまで(例)

※種類によって異なります

Check Point

Check Point 1

選考基準は能力本位

採用試験は能力本位で、学歴の差などで選考に隔たりが出ることはまったくありません。試験の出来・不出来で結果が決まります。試験への準備をしっかりと行ったうえで臨むようにしましょう。

Check Point 2

警察官になるには…

警察官は基本的に都道府県の公務員になるので、受験資格や試験内容が自治体によって異なってきます。志願者は早めに募集要項を取り寄せ、事前に確認しておくことをお勧めします。

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