電子講義:交通流の離散モデル

全卓樹

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交通流の離散モデル(6-2)

確率加速型複数区間モデルの相構造2

ついで今度は共通の制限速度 U1 = U2 = U を持つ場合をみる。

右の基本図は、先ほどと同じように L = 200 の道路全体を L1 = 160 と L2 = 40 の二つに割っている。共通の速度は U = 8 に選んだ。

非加速確率が 共通のR1 = R2 = 0.1 の場合を、 異なった三つの例、R1 = 0.1、 R2 = 0.4 の場合、R1 = 0.1、 R2 = 0.6 の場合、さらに R1 = 0.1、 R2 = 0.8 の場合、と重ねて描いてある。

限定渋滞の相があるのは先ほどと同様なのであるが、この中間の相の様子がさっきとは異なっていて、Fが激しく揺らいでいるのがわかる。さらに面白いのはランダムに揺らいでいるのでは決して無く、決まったいくつかのとびとび値のみ取っている。そしてこの値は

F = W /( W + 1 ), W=1, 2, ..., U2
(6.2)

である。F が実際にどのように揺らぐかは、実は数値実験の際の初期値に依存する。つまり言葉を変えると、この中間の相では決まったρに対して、厳密な意味でF の値は決まらず、(6.2)の「量子化された」値のいずれになるかは車の初期配位と言う「偶発的」要素に左右されるのである。

このような全く意外な結果は読者諸氏にも驚きを持って受け取られるであろう。こうして、理由はともあれ、複数区間を持つ西村モデルを考える事で

 * 自由交通相、中間相、渋滞相の3相が見られる
 * 自由相では右肩上がりの直線である
 * 渋滞相では右肩下がりの直線である
 * 中間相では流束が揺らぎを示す
(6.3)

という現実的交通の基本図にみられる基本的特徴が再現される事がわかったのである。

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