電子講義:交通流の離散モデル

全卓樹

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交通流の離散モデル(3-1)

セル状オートマトンと交通流1

こうして交通流の解析に必要なの基本的な概念がでそろったので、いよいよこれから交通流を実際にコンピューター上に作り出してみたいのだが、そのためにはもう一段階ステップが必要である。それは「連続量の離散化」という操作である。

よく知られているように現代のコンピューターの主流は「ディジタル・コンピューター」といって、数を扱うにしても連続的な実数ではなく、「1、2、3、たくさん」といった具合に、不連続な整数として操作するという特徴を持っている。もちろん通常数値を扱うときはソフトウェアーでこの点がカバーされて、コンピューターはあたかも実数が扱われているかのごとく振る舞うのだが、そうすると演算は整数を扱うより格段に遅くなる。

そうすると、交通流のモデルを作るに際して、最初から整数を扱う格好にするのがよいのではないか、ということになる。車の位置、速度といった本来連続的な実数で表されるべき量を整数で近似してしまう操作を「離散化」と呼ぶ。

道路の上を車が走るという状況を、離散的モデルでは次のように記述する:

*道路を「セル」c = 0、1、2、3、...L を一列に繋いだものと考える
 ただしセルの始点 c = 0 は終点 c= L と同一のものと看做す
*M台の車はすべてどこかのセルに収まっていると考える 
*離散的な時間 t = 0、1、2、3、...Tx における車の動きを考える
(3.1)

さらに、まずはとりあえずは追い越し禁止の一本道を考えて

*どの時間にあっても一つのセルには一台の車しか入れない
(3.2)

という仮定も付け加えることにする。この(3.2)の仮定は後で緩めて2車線以上の道路も扱えるように拡張する事ができる。

車に後ろから順に番号を付けて、その番号を整数 i とし、その i を1から Mまで変化させる。車の流れの記述は

* i 番目の車のいるセルの番号を X[i] という配列に書いておく
* i 番目の車の速度 V[i] という配列に書いておく
*時間 t = 0、1、2...でのX[i] 、V[i] の変化が交通流を表す
(3.3)

という具合に2組の数列 X[i]、V[i] の時間発展を追っていくことで行われることになる。
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