電子講義:交通流の離散モデル

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交通流の離散モデル(3-3)

セル状オートマトンと交通流3

いま出てきたような自分および隣接する総計三つのセルから自分の将来の発展が定まるタイプのセル状オートマトンは、一般に次のような発展法則の表で指定される。

111
b7
110
b6
101
b5
100
b4

011
b3

010
b2

001
b1

000
b0
(3.8)

ここで b0、... 、b7 八つはそれぞれ0か1となりうる数であり,八つの数一式を指定すればルールが決まる訳である。bi を一列に並べそれを二進数と看做したものを B と書いてみる。すなわち

B = b7 b6 b5 b4 b3 b2 b1 b0
(3.9)

B は0から255までの数で、それぞれが b0、... 、b7 の違ったパターンを表しているので、逆に言えば B として一つの数を指定すればルールが指定できる。例えば先ほどの交通流のモデルになっているものは

B = 10111000 = 128+32+16+8 = 184
(3.10)

なので「ルール184の三隣接セル状オートマトン」と呼べばよいだろう。

またこれからわかるのは、 B として0 から 255 までの256個の数に対応するだけ違ったルールのセル状オートマトンが存在するという事になる。

この256通りのセル状オートマトンは、それぞれ違った時間発展をするが、その様式に従って大きく分けて4通りに分類される、という事が素粒子物理学者だったウォルフラムという人によって見つかった。(彼は今は実業家に転向してマセマティカ社の社長である)

彼の分類では第1型はどんなパターンから始めてもそのうちすべてのセルが0ないし1となってしまう「死滅型」、第2型は周期的なパターンが繰り返し現れる「結晶型」、第3型は無秩序に0と1が出てくる「カオス型」、そして最後にどれにも分類不可能な「第4型」で、この最後の型は「第2型」と「第3型」の臨界点である「カオスの辺縁」にあるものである。をルフラムはこの第4型が「生命現象」を頂点とする「単純なルールが生み出す複雑な系」というものの雛形だと考えて、その後の「複雑系」の流行に道を開いた。

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