電子講義:交通流の離散モデル

全卓樹

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交通流の離散モデル(1-3)

交通流を定量的に記述するには3

交通流の流速

ここまでは運転者の立場に立って、交通の流れの平均速度で渋滞の程度を判断したが、一方車の流れを司る側の立場に回って考えてみると、事情が少し異なる。たとえば貴方が首都高公団の総裁だとしてみよう。首都高公団の総裁の給与は特に公団の収入と直接は関係しないので、渋滞はまず放置しておく。これではここでの話が進まないのでサッチャー主義を採用して公団を民営化、あらためて貴方は首都高速株式会社の社長ということにしよう。会社の年間収益が社長給与に響くとなると、貴方は真剣に渋滞を減らそうとするかもしれない。(そろそろいい加減に箱崎隘路、浜崎橋隘路、小菅隘路を何とかして欲しい!)このばあい重要なのは速度そのものより交通のの効率でなことである。収入は料金所を通過する車の台数に比例するから、車が道路上をどれだけたくさん通過したかが勝負となる。

いま一本の道路を考えて、ある地点で見ていて、一定時間内に平均的に通過する車の数のことを流束とよぶ。すると交通流の流束を高めるのが車の流れを司る側の立場にとっての課題となる。つまり高速道路管理者にとっては、流速を渋滞の目安と考える事が便利になる。

密度、平均速度、流速の関係

こうして最適な交通流というものが、運転者からみるのと道路管理者からみるのとで異なるかもしれないいう話になりかけたのであるが、実はよく考えると、事情はそんなに面倒ではなく、この2つは密接な関係があり、ほぼ同じ物であると言ってもいいくらいである事情を説明しよう。

まず、流速の定義をもう少し精密にする事から始めよう。上の定義を字義どおり解釈すると、どの地点でどの時間に測るかで流速が変わってきてしまうので、ここで言う流速とはある程度長い時間の平均の流速のことだと考えるえることにする。そうするとある地点を通過した車はいずれ他の地点も通過するので、流速はどの地点で測っても同じである。

いま道路の上のある地点でみていて一定の密度ρの車の集合が平均的速度Vavで進んでるとすると、単位時間には距離Vavだけ進む訳なので、この間に通過した車の数はρVavということになる。定義によりこれは流速(Fとする)に他ならないから

F = ρ・Vav
(1.1)

という関係があることが解る。つまり密度を決めれば、交通流の流速を見ていても平均速度を見ていても本質的に同じ事である。

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