電子講義:交通流の離散モデル

全卓樹

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交通流の離散モデル(2-1)

交通基本図と交通流図

交通基本図

こうしてここまで、交通の流れを記述するのに重要な三つの量「密度」、「平均速度」、「流速」の定義と、その間の基本的な関係「密度x平均速度=流速」を見てきた訳であるが、この3つがきちんと理解されイメージされるようになれば、じつはもう交通流についての理解は山を越えたと言ってもいいのだ。

交通を特徴づける量はむろん他にもある。たとえば道路の制限速度、信号の所在、カーブ坂道、道路の舗装の善し悪しといったものだろう。これらは与えられた道路の外的条件であって、運転者のコントロールが利かないものであるの。こういう外的条件を表す量を一般に「交通流の環境パラメタ」とよぶ。パラメタが一式与えられれば道路の条件が決まり、逆に異なった条件の道路は異なったパラメタで表される、という訳である。

これに対して交通の密度というのは、どれだけの運転者が道路に出てきたか、という事で意思で決まるものである。交通流の問題とは、こういう運転者の意思が、どのような結果につながるか、その結果がよく流れる交通なのかあるいはひどい渋滞を引き起こすのかを調べる事である。渋滞の程度は平均速度または流速で判断するという事だったので、結局交通流を定量的に調べるという事は、整理すると次のようにまとめられる:

 * 環境パラメタをきめて
 * 交通流の密度をいろいろ変えてみたとき
 * 交通流の平均速度または流速がどう変化するか見る

(2.1)

数式で表現すれば密度ρの函数としての流速 F(ρ)または平均速度 V(ρ)を調べる、といってもよい。函数といっても簡単な初等函数で表されるとは限らないし、そもそも式ですぐに表現できるかどうかさえ解らない。

数値的に常にできるのは、ρを与えたときにFまたはVを得る事であるので、これはグラフで横軸にρ縦軸にFまたはVを書いて表現すると都合が好い。通常は業界の約束として横軸にρ、縦軸にFをプロットしたものを交通基本図と読んでいる。

右に基本図の例を一つ示してみる。これを見るとρの値の小さいとき、大きいとき、その中間で交通の様子が異なる様が一目で見て取れる。

data taken from W. Knospe, et. al., Phys. Rev. E65 (2001) 015101(4)
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