セル状オートマトンと交通流2
こうして得られたモデルは一般に「セル状オートマトン」と呼ばれる数理モデルの一つになっている。セル状オートマトンとは
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*有限個の状態をとる「セル」が複数繋がっている
*時間が離散的に進行する
*各セルの状態は直前の時間の自分並びに隣接する有限個のセルの状態で決まる
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(3.4)
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というものである。たとえば我々の今考えている交通のモデルは、一本の道路を考えると一次元的なセル状オートマトンの一例に他ならない。
いま一次元的なセル状オートマトンのうちで、次のようなルールのものを考えてみる。
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*左隣が0で右隣が0のときは自分の次の状態は0
*左隣が0で右隣が1のときは自分の状態は今の状態と同じ
*左隣が1のときは自分の状態が0なら自分の次の状態は1
*左隣が1で自分の状態が1なら自分の次の状態は右隣の今の状態に同じ
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(3.5)
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各セルの発展は自分と左右の隣2つだけできまる。この発展のパターンを具体的に
111
1
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110
0
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101
1
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100
1
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011
1
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010
0
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001
0
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000
0
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(3.6)
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と書いてみると判り易い。1を車のあるセル、0を車の無いセルと考えれば、これは車が左から右へ流れている交通を表していると考える事ができる。実際にこのルールで、たとえば「0 0 0 1 0 1 1 0 0 0 1 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 0 0」という状態から発展を追うと
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0 0 0 1 0 1 1 0 0 0 1 0 1 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0
0 0 0 0 1 1 0 1 0 0 0 1 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0 1
1 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 1 0 1 1 1 0 1 1 1 0 1 0
0 1 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 1 0 1 1 1 0 1 0 1
1 0 1 0 0 0 1 0 1 0 1 0 1 1 0 1 1 1 0 1 0 1 0
0 0 0 1 0 0 0 1 0 1 0 1 1 0 1 1 1 0 1 0 1 0 1
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(3.7)
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となって、車は前が空いていると一歩進み、前が埋まっているとじっとしている。これは実はもっとも簡単な交通流の離散モデルになっている。後に出てくるナーゲル・シュレッケンベルクのモデルで「最高速度」を1とおくと、それはこのモデルに帰着する。このセル状オートマトンは交通流のもっとも基本的なモデルと言ってよいだろう。
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