電子講義:交通流の離散モデル

全卓樹

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交通流の離散モデル(4-2)

ナーゲルとシュレンケンベルクの標準模型2

ナーゲル・シュレッケンベルク模型には二つのパラメーター制限速度 U と減速率 R がある。これを指定すれば、密度ごとに交通の様子が定まる。

まずR=0の場合を見る。U = 1、U = 3、U = 6 の場合の交通基本図を右に示す。これで見ると両方とも図は真ん中の尖った山形をしていて、頂点の位置が異なっている。 頂点の位置を与える密度の値をρ*とかくと、ρ*の左と右で交通の様子が異なっている。それを見るためにはこの交通基本図の函数形から推測できる。密度がρ*以下ではFは単調増加を示す直線で、それは

F = U・ρ
(4.4)

で与えられていることが見て取れる。これはFの定義を見れば明らかなように、すべての車が最高速度 U で走っていることを示しており、これを渋滞のない「自由交通」と考えることができる。

一方ρがρ*以上の領域では、図に示されたFは U に依らずに

F = 1-ρ
(4.5)

で与えられてる。密度が高いほど渋滞がひどくなり、交通効率が落ちていく訳である。つまり渋滞の交通に車がさらに入ってくるのは交通全体のためにも悪いのである。各車の平均速度 V= F /ρはさらに落ちが激しいので各ドライバーの不快感の悪化はより悪化するのはもちろんである。

渋滞が起こる臨界密度は式(4.4)(4.5)から明らかなように

ρ* = 1/(U+1)
(4.6)

である。制限最高速度の設定によって渋滞が始まる密度がかえられる事がわかるのである。最高速度を大きく設定するとより小さい密度から渋滞が始まるのだが、流束自身は渋滞が始まってもまだ、制限速度を小さくして渋滞を起こさない場合に比べても大きいので、交通流の効率はいいということになる。運転者にとっては精神的負担が増えるのでこれは一種のディレンマであろう。このモデルの範囲では道路管理側としては制限速度を高く設定した方が好ましい訳である。ただしここではまだ事故の増加等の要因を考慮してないので、現実にこれをすぐ当てはめるのは尚早であろう。

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