確率加速型複数区間モデルの相構造3
このちょっと不可思議な基本図の振舞いを理解するためには、また交通流図を見るのがよいだろう。
右の交通流図は、先ほどの共通の速度 U = 8 をもつ二区間道路 L1 = 160 、 L2 = 40 における車の流れを示している。非加速確率は R1 = 0.1、 R2 = 0.4 の例である。左と右は、ρの値は同じで、異なった初期配位から発展させたものである。中間の部分にR2 の大きい区間が位置しており、ここで渋滞が発生している。 |
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そして色の濃さの違いは、以前にも見たように、渋滞ブロックでの車の詰まり具合を示している。ここの例では、右が車間間隔0で車の停止した絶対渋滞で、左のは車間間隔1、進行速度1のノロノロ渋滞である。初期状体次第では車間間隔2進行速度2のノロノロ渋滞も見られる。
簡単な考察でわかるように、進行速度 W の渋滞が発生して流れの中に居座ればすれば、それが制限要因となって全体の流速をF = 1 /( W + 1 ) と決めることになる。どの進行速度の渋滞も準安定なので、どれが居座るかは偶然の事情に左右される。かくして式(6.3)の「量子化」の理由が判明し、揺らぎを持った第三の中間的渋滞相の中身が理解されるのである。
区間の数が二という制限を外すと、より現実的なモデルになるが、その代わりにパラメタの選ぶ自由度も増え、数値実験の解析もその分複雑になる。しかしこの場合でも、二区間モデルの本質的要素が残存し、そこでも断続的な値の間を揺らぐ第三相の存在する事を予想するのは自然であろう。
実際に状況がそのようである事を、右の数値結果の一例でが示しておく。
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これは共通の制限速度 U = 10 でランダムな Rk の値を持ち長さ Lk もランダムなつ6つの区間からなる総延長 L = 1000 の道路の交通基本図を描いたものである。
西村モデルのパワーがこれで読者諸氏にも理解されたであろうか。
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