今日のインターネット社会の
礎を築いた巨人
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/ 初代学長(1997-2001) /
末松 安晴
YASUHARU SUEMATSU
VOL. 01 / 04
「この世にないものを創る」という信念を胸に、
研究生活を疾走した
この先生の研究がなければ、インターネットは今日の姿ではなかっただろう。末松 安晴 先生は光ファイバ通信の実験を世界で初めておこない、大容量長距離通信の要となる通信用半導体レーザを発明するなど、現在のネットインフラを支える基礎技術を創りあげた。
子どもの頃から天文学が好きで、ニュートン式反射望遠鏡を自作するなど、光や技術には関心を持っていたという。
「技術を勉強するならここだ」と叔父のすすめで入学した東京工業大学では、電気工学を学んだ。
分厚い本を章ごとに割って常に小脇に抱えて読むなど、時間を惜しんで勉強した。
「電磁気学を創ったマクスウェルの著書は、1年がかりで読みました。周囲からは『あいつは100年前の本を読んでいる』と笑われましたが、自分もこの世にないものを創ってやろうと、大きな影響を受けました」
大学院に進むと、長距離通信を本格的に研究。ミリ波(電磁波の一種)による通信を目指したが失敗に終わる。大学院を修了し、助手に採用されてからは、研究の軸足を光通信に移した。
「ミリ波通信と比べ、1万倍もの伝送容量の可能性がある光通信は、非常に魅力的でした」
情報化社会の足音が聞こえはじめた当時、既存の技術の延長線上にあるインフラでは、大量のデータを賄いきれなくなることは明白だった。とはいえ、光をどう通信に活用するかは、まだ雲をつかむような話だった。
周囲からは「光通信なんてできるわけがない」「実用化の見えない研究より、目の前にある課題に挑戦するべきだ」などといわれたが、末松先生の「この世にないものを創る」という信念は揺るがなかった。長い長い、研究の旅がはじまった。

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