ひとつ一つの機会と
真摯に向き合い、
新たな扉を開いた改革者
03
/ 三代目学長(2008-2015) /
佐久間 健人
TAKETO SAKUMA
VOL. 01 / 04
思い通りにいかない日々のなかで、
自分の生きる道を探った
材料科学の分野で数多くの先駆的成果をあげた佐久間 健人 先生は、意外なことに「大学に入るまで、工学には興味がなかった」という。当時、工学部の学生は企業から引っ張りだこという状況だった。優秀な学生は、工学部を目指すというのが、ひとつの自然な流れだったのだろう。
「いざ入学して周囲を見渡すと、メカや技術に詳しい学生がたくさんいて、とてもかなわないと思いました」
勉強はあまり好きではなかったというが、研究には熱心だった。毎朝9時から深夜0時まで研究室にこもった。パソコンはおろか、まだ電卓も普及していない時代。複雑な計算を筆算でおこない、たった1本の線を引くのに、1日かかることもあった。
「金属の変形を追う実験では、現在のような自動読取器がなかったため、研究室に泊まり込んで、30分ごとに数値を記録していました」
「いま思えばバカなことをしていた」と苦笑する一方で、こういった経験が長い研究生活の支えになったという。
1970年に大学院を修了すると、そのまま助手に採用され、助教授を経て10年以上、金属材料の研究に打ち込んだ。1981年にはケンブリッジ大学の客員研究員として、英国に1年間赴任した。そこで鉄鋼材料について学び、今後の研究テーマに定めたが、帰国すると思いがけない事態が待っていた。研究対象をセラミックスに変更することを求められたのだ。
「そんなふうに、私の研究テーマは何度も変わりました。人生は、自分の思い通りにはいかないものです」
当時はセラミックスに関する研究環境が整っておらず、まさに暗中模索といった状況のなかで、佐久間先生は新たな道を探ることになった。
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