国際的な知見と現場経験から
正解を導き出す、
研究&教育の先導者

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/ 二代目学長(2001-2008) /

岡村 甫

HAJIME OKAMURA

VOL. 01 / 04

世界に先駆け、鉄筋コンクリートの
安全性と汎用性を追求

歴代学長の中で“文武両道”という言葉が最も似合う人物が岡村 甫 先生だ。小学生から野球を始め、中学時代は県大会で優勝。1957年に土佐高校から東京大学工学部土木工学科へ進学すると、 硬式野球部で投手として活躍し、東京六大学野球で記録した通算17勝は、現在も東大野球部の最多勝利記録として残っている。現役引退後は指導者も経験しており、この一連の“野球道”で培った分析力や精神力が、 後に研究者・教育者としての道を切り拓いていく。

学業・研究面ではコンクリート界の第一人者である國分 正胤(こくぶ・まさたね) 先生との出会いがきっかけで、コンクリート研究の道に進む。1966年に大学院の博士課程を修了し、 同年、研究員としてテキサス大学へ赴任。帰国後、助教授、教授としてコンクリートの研究に邁進する傍ら、イギリス、アメリカ、タイの大学で客員教授を務め、国際的な視野を広げていく。

1968年 テキサス大学キャンパスの様子

岡村先生の30代~40代の研究テーマは「鉄筋コンクリートの非線形解析」と呼ばれるもので、鉄筋コンクリートが外部から力を受けたときの挙動を表す解析システムを確立した。この解析プログラムを使えば、地震発生時の鉄筋コンクリート構造物の安全性がチェックできるため、建設業界で広く使われている。また地下鉄など地下構造物の耐震診断ができる唯一のものであり、1995年の阪神・淡路大震災以降、首都高速道路や全国各地の地下構造物の耐震診断に用いられた。

著書:鉄筋コンクリートの非線形解析

また自己充填コンクリートの開発も、世界が認める岡村先生の研究成果の一つだ。通常、コンクリートは締め固めが不可欠であるが、高度経済成長期、各地で施工不良が頻発していた。「良いコンクリート構造物を造る!」という思いから、岡村先生は施工不良撲滅を目指し動き始める。

1989年 自己充填コンクリートの公開実験

一般的に施工不良の原因の多くは現場での締め固め不足で、作業自体が困難な現場もあった。岡村先生は「施工不良を無くすには、締め固め不要のコンクリートを作ればいい」と発想を飛躍させ、流し込んだコンクリートが型枠の隅々まで均等に流れ込むよう、流動性の高い自己充填コンクリートを開発。これが1998年に供用を開始した明石海峡大橋のアンカレッジに採用され、遅れていた工期を半年間早めたほか、これまでに世界中のさまざまな構造物に利用されている。

施工中の明石海峡大橋
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