ロトカ=ウォルテラ方程式の詳細その一
餌と捕食者
こうして見ると、やはり式を書かないで言葉だけだと、本当のところは判らないですよね。そこで、「微分方程式」とか聞くだけで虫酸が走っちゃう人には飛ばしてもらう事にして、すこしまじめに説明しましょう。
いまサバンナに生きるシマウマ(餌)の人口をx として、ライオン(捕食者)の人口を y とします。いま両方の人口の時間的な推移を考えてみるとします。シマウマが一定の出生率 B 、ライオンが一定の出生率 D で増えると言う最も単純な状況は
dx/dt = B x 、 dy/dt = D y
とかけます。たとえば微分 dx/dt は単位時間(例えば一年)あたりに x が何匹増えるかと言う割合の事です。ところが B や D を本当に一定だと考えるには問題があります。まず、B について言えば、あまり増えると餌が減る等で生存環境が悪化して増殖率が鈍っていくでしょう。つまり B のなかには x に比例して減少する成分が入っている筈です。まこれが実は一番大事なのですが、ライオンがいるとシマウマは時々食われてしまいます。食われ方はライオンの数が多いほど酷いでしょうから、B のなかには y に比例して減少する成分もあるはずです。これらの事を式で表すと
B = b - a x - R y
と書けます。b は x が小さいときの「自然増加率」で、a が生育環境の制限因子、そして R がライオンの襲撃による「補食率」です。一方ライオンは、もしシマウマがいないと人口が減少していきますから、自然増加率はマイナスで、これを -d と書くとします。ではどうやって生きてるかと言うと、シマウマを捕らえて食べる訳です。ですから D の中には -d 以外に、餌となるシマウマの人口に比例する成分 S xがある筈です。ここも生育環境劣化による制限もあるでしょうが、ライオンはあまり人口が少なく、この効果はとりあえず無視します。つまり
D = - d + S x
最初の微分の入った式にこの二つを入れると
dx/dt = b x - a x2 - R x y
dy/dt = -d y + f R x y
となります。ここで S = f R という置き換えをしましたが、上の二つの式を見れば f の意味がわかります。つまり食われたシマウマが効率 f でライオンに用立てられるという事です。これが餌・捕食者のロトカ=ヴォルテラ方程式です
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