電子講義:生態系の進化ゲーム

全卓樹

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進化ゲームと生態系入門(7)

両雄並び立たず

競合種での攻撃性は学習により進化する

 先ほどの話を注意深く読んでた人は、競合する系で一方が絶滅するのは「双方の攻撃性が非常に弱い例外的なばあい以外」とかいう限定があったことに、ちょっと引っかかったかもしれません。そんなあなたは鋭いですね。ロトカ=ヴォルテラ方程式で考えると、攻撃性を表す定数が小さい場合には、実際数学的には安定な解があります。でもちょっと考えると攻撃性って種に最初から与えられたものではない、というきがしませんか。あなたが誰かとボクシングをしてるとします。どれほどの頻度で得意のストレート攻撃にでるかは実はある程度あなたが決められることですよね。あまりやりすぎで消耗したりするとカウンターアタックを食らうので、ジャブで様子見をしていきます。二種の動物の争いを考えても、各々攻撃頻度をちょっと変えてみたりして、自分にどれだけ有利かみて、その結果攻撃を強めたり弱めたりする、と考えるのが自然でしょう。相手も同じように攻撃の頻度とか調整できるとすると、これは自分と相手にそれぞれチョイスがあって、有利不利の結果がそれに応じて決まるという状況、すなわちゲームになるわけです。

競合系の不安定性と囚人のディレンマ

 競合2種が攻撃性をそれぞれ変えた場合の各々にとっての利益表を、ロトカ=ヴォルテラ方程式を元に書いてみました。モデルの詳細が指定してないので具体的な数値でなく定性的ですがこれでも状況はわかります。両図とも左端があたなの手で上端が相手の手です。

貴方の得点 相手はハト 相手はタカ
貴方はハト
ーー
貴方はタカ
相手の得点 相手はハト 相手はタカ
貴方はハト
貴方はタカ
ーー

お互いに攻撃をえ各々それなりに生きてる場合を(0)とします。互いに攻撃すると双方に(−)の損害とします。こちらがおとなしくして相手に攻撃されると大損害で(ーー)、攻撃した方は相手の攻撃力が殺がれて、その分自分の種は安泰で(+)です。つまり相手がどうでても自分としては攻撃を強めた方が得なので双方とも「タカ派」戦略でいきます。すると結果、双方「ハト派」でいくより損します。これってどっかでみませんでしたか?そう、まえの天使と悪魔のゲームそのものですね。つまり競合系で攻撃性が変えうる場合は、囚人のディレンマ状況で双方が攻撃性をどんどんつよめる筈です。すると上でいった「攻撃性の弱い例外は安定」であっても、この安定性はそのうち「攻撃行動の進化」によって壊れてしまうでしょう。「カルタゴ滅ぼさざるべからず」です。

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