電子講義:入門量子情報

全卓樹

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猫でもわかる量子情報(19)

量子回路:3ビットの量子素子

 そこで and 演算子を実現するために何かしなければなりません。一番簡単なのは入力ビットおよび出力ビットを一つよけいに加えることです。いま3キュビット上の次の変換を考えます。
  CCN :
     |0 0 0>→|0 0 0> 、|0 0 1>→|0 0 1>、
     |0 1 0>→|0 1 0> 、|0 1 1>→|0 1 1>、
     |1 0 0>→|1 0 0> 、|1 0 1>→|1 0 1>、
     |1 1 0>→|1 1 1> 、|1 1 1>→|1 1 0>

これは明らかに2キュビットの制御否定の3キュビットへの一つの拡張で、上位2キュビットが同時に1のときに限って下位ビットに .not. が作用します。
それで「制御制御否定 Control-Control-Not」と言います。形式的には

  CCN :|x y z>→|x' y' z'> ;x' = x、y' = y、z'= (x .and. y) .xor. z

です。ここで z の入力を0にしておくと

  CCN :|x y 0>→|x y z'> ;z'= x .and. y

となって、下位ビットの出力に待望の .and. が出てきました。

 また当然ながら

  CCN :|1 y z>→|1 y' z'> ;y' = y、z'= y .xor. z 、
  CCN :|1 1 z>→|1 1 z'> ;z'= .not. z

ですから、制御制御否定があれば制御否定、否定ができます。
つまりは制御制御否定さえあればあらゆる回路何でもできちゃうという事です。この意味で制御制御否定はユニバーサルな量子素子と呼ばれます。
 ここで「こういう1、2、3ビットの量子素子が原理的に作れる事はわかったが、ハードウェアの実装はどうするんだ」と言う疑問を持った人がいたら手を上げてください。あなたは実験物理屋になる資格十分です。実験段階ではなんとか出来てますが、実用段階の実装をみんな一生懸命試みてる訳です。ここではとりあえず、小さな悪魔がいてこちらの要求に従ってキュビットの制御やってくれるんだ、とでも思っておけばいいでしょう。
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