量子回路:行列表示
ここでは回路図と並んで、量子素子のもう一つの便利な表示である行列表示をまとめておきます。
まず、1キュビットでは2つの基底状態がありましたが、これはベクトルで表現すれば |
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なので、恒等変換 I 、否定変換 X、 相対位相 Z は各々次の行列で表されます。
これらを見ると、行列はすべて行と列の入れ替えに関して対称で、おまけに2回作用させると状態を元に戻す、言換えると自分自身との積が I になる、と言う性質をもちます。実はここで出てくる量子操作は行列で表現すると全てこの性質をもっていて、これは「量子変換のユニタリ性」の現れです。物知りのためにいっておくと、ユニタリ性の制限はもう少し緩く、許される行列はどれも、その共役行列(行と列を入れ替えて複素共役をとったもの)との積が I になります。
2キュビット状態を次のような4行のベクトル
で書くと、制御否定変換 CN は次の4行4列のユニタリ行列で与えられます。
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[ 1
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0
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0
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0 ]
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Cn =
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[ 0
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1
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0
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0 ]
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[ 0
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0
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0
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1 ]
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[ 0
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0
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1
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0 ]
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または
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右の表式4x4行列を2x2のブロックでかいたもので、ここの「0」は要素すべて0の2x2の行列の事と理解してください。 さらに3キュビット状態を同様の伝で8ベクトルで書くと制御否定変換 CCN は次の8行8列のユニタリ行列 Ccn で与えられます。あとでつかう W というのも定義しておきます。ここでも2x2ブロックの表式を使いました。
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[ I
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0
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0
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0 ]
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Ccn =
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[ 0
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I
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0
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0 ]
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[ 0
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0
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I
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0 ]
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[ 0
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0
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0
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X ]
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[ Z
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0
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0
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0 ]
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W =
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[ 0
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Z
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0
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0 ]
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[ 0
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0
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Z
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0 ]
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[ 0
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0
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0
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Z ]
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このノリで任意のビットのCC...CNなどもすぐ想像できますよね。 |