猫でもわかる量子情報（３０）

参考文献

　量子情報に関しては、今のところ決定版とされるのは次の教科書です。枚数をいとわず丁寧に説明があって、また網羅的で、書かれた時点までに知られてた事は、ほぼ何でも書いてあります。
　　　　　Michael A. Nielsen and Isaac L. Chuang,
　　　　　"Quantum Computation and Quantum Information"
　　　　　 (Cambridge U.P. 2000)
最近見てよいと感じた本に
　　　　　N. David Mermin,
　　　　　"Quantum Computer Science, An Introduction"
　　　　　 (Cambridge U.P. 2007)
があります。著者は「Physics Today」のシリーズ物エッセイ「Professor Mozart」の筆者としても有名で、この本にもその仄かな薫りがあって、概念の直感的イメージが判りやすいです。
研究の前線は物理のコーネル大のプレプリントアーカイヴ
　　　　　　　　http://arXiv.org/
の量子力学セクション「quant-ph」に多く載ってます。あと「cond-mat」もみてください。ここで過去の投稿探すと、本解説に出てきた話の原著論文も見つかったりします。（余談ですが、このアーカイヴは量子情報に限らず、勘定に入る理論物理の論文ほぼ全てがまずここに投稿されます。出版社のやってる通常の学術雑誌の役割は、もはや「査読による価値の認定」に限定されてきたといって良いでしょう。）

日本語の教科書もいくつか出てますが、上記英語の教科書のうちの二番目のものの和訳
　　　　　N．Ｄ．マーミン著、木村元訳
　　　　　「量子コンピュータ科学の基礎」
　　　　　（丸善、2009）
がすばらしいと思いました。訳者はこの分野の気鋭の若手で、今後出るかもしれない原著の第二版には訳者の指摘や提案が取り入れられるとの事です。