序:本ページを読むに当たって
この電子ノートは、高知工科大の大学院で平成15年度第4クオーターに行なわれた講義「量子情報通信」のために用意され素材を、量子情報の世界に興味を持つ好事家のために公開したものです。
前提知識としては高校か大学初年度で習う線形代数が必要なだけです。しかし「量子情報」を理解する要諦は、議論を丹念に追っていく熱意と、「常識」から一旦離れても論理を押し進めていく事ができる思考様式です。これは「前提条件」ではなく、むしろ「量子情報」といった題材を学ぶことによって得られる精神的資産と言えるかもしれません。(あと、まとまった時間がいります。雑事の合間の細切れの時間では量子情報の習得はむりかも知れません。)
このHPの他のノートとは異なり、ここに取り上げられている内容は基本的にはどの教科書にも書いてあると思われる標準的なものです。筆者自身は量子情報に無関係でもない量子論の研究が専門で、この分野自体での研究業績があるわけでもありませんので、スタイルはともかく、内容で特に独創的なものは期待できません。その意味で、本ノートは幾多の類似HPや教科書と選ぶところはないのですが、専門でない私が自分なりに噛み砕いて整理した素材ですので、誰かの役にたつかもしれないかとも考えます。まあこれも量子情報の入門書の多くに書いてある言い訳と全く同じですが。
このページの素材は学習や個人の研究に自由につかって下さって結構です。授業、セミナー等での非公開の2次利用は出典を明示でお願いします。公開や商業的の2次利用はご勘弁願います。なにぶん、この分野でなにか独自な論文を書いた暁には、これを完成させて本にしようと目論んでますから。当然コメントや提案は大歓迎です。
折に触れ素材を増やしたり手を加えたりしてますので、時々リロードしてみてください。Safariだとキャッシュが強すぎるので、その場合には一度オペラやIE等でリロードしてからご覧になってください。
このノートの構成は、まず(1)から(8)までで必要最小限の量子論を導入します。その後順を追って(9)から(13)で量子暗号、(14)から(17)で量子テレポート、そして(18)から(27)までで量子計算を見ていきます。各部で量子論の必要事項を補足してます。終わりの(28)と(29)は量子情報の現代科学技術の中の位置づけで、最後の(30)はさらにきちんと学ぶ場合のための文献紹介です。
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