電子講義:入門量子情報

全卓樹

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猫でもわかる量子情報(1)

量子情報とは

量子力学はもともと微小な世界の成り立ちを解明しようとした20世紀初頭の人々によって発見されたものです。量子力学には我々の常識の全く通用しない奇妙な側面があって、それらは発見当初より各種の「パラドクス」として関係者の間では熱く議論されいました。実際まじめに考えると、量子論にはどうもつじつまの合わず、むしろ我々に「実存的不安」といったものを与える点が多々あります。

しかし、量子世界に人間が直接触れる手立てが無かったこと、またその後の発展と応用の成功で、量子力学の正しさは自明のものと考えられたことなどの理由で、そう言った「量子論の哲学的側面」は隅においやられて、ただの閑人の興味の対象のようにも看做されてきました。量子力学はレーザーとかトランジスターとか超伝導とかのハイテク技術の元になっているもので、その意味で我々の日常に密接につながっています。でもそう言った技術はいわば量子力学の副産物で、量子状態の奇妙さが直接顔を見せることは無く、それを用いたからといって我々が量子的実存不安になやまされるということもありまん。

その状況を変えたのがまさに「量子情報」なのです。ここ20年ほどのあいだに理論的発展と実験的発展の両輪が噛み合って進歩した結果、量子情報は時代の寵児のようでさえあります。
理論面での発展とは「量子論のパラドクス」を逆手にとって、常識ではできない暗号、常識ではできないアルゴリスムなどが発見されてきたことです。そして実験面での発展とは、超微細加工技術と超微細操作技術によって、「原子」「電子」を個体レベルで動かしたり見たりできるようになってきたことです。

量子力学の情報科学への応用にかんして、現在のところ、量子暗号、量子テレポート、量子検索、量子因数分解などについての研究が進んでいます。汎用的な「量子計算機」についても最近はかなり研究されるようになってきました。

いずれにしても当面は「量子情報」は新しく若い分野で、また極めてクールでヒップな題材と看做されてますので、スタイルを大切にする貴方も知っておいて損は無いかもしれません。
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