電子講義:入門量子情報

全卓樹

[電子講義集] [全HP]
[Index] [0] [5] [10] [15] [20] [25] [30]
前へ 次へ

猫でもわかる量子情報(2)

量子論って何?

 量子力学というのは、実は世の中の根本法則で、気が付いていないかもしれませんが、あなたの周りのあらゆるものは(あなた自身も含めて)これに従っています。ですから本当は量子論を知らずして世の中のことは何も語れないはずなのですが、通常そんなことは意識せず生活して特に不利益を感じません。これは我々の生活している「数メーター」のスケールでは量子論は通常の常識の世界(われわれはこれを「古典論」という名で呼びます)に還元されてしまうからです。ところが「ナノテクノロジー」といって、極小な粒子とかを操作すると、その粒子は量子論の性質をもろに示し、その本来の奇想天外な振る舞いにおよぶことがあります。実は微小なスケールで電子とか陽子とかいったものが、どんな様子で動き回っているかを考えると、仮に我々の常識に従って運動していると考えると、我々の見知っている世界は到底存在し得ないことが100年ほど前にプランク、ボーア、アインシュタインといった人たちによって明かにされました。つまり量子論の奇想天外な法則に従っていると考えないと、我々の身の回りのものは、そもそも存在し得ないはずなのです。

通常は量子論といえばすぐに「シュレディンガー方程式」がどうとかいう話になりますが、これはものがある状態にあったら、その後どう発展するかと言う「動力学」を規定する話です。それは勿論大事ですが、量子論の本質はそれ以前に「ものの有り様」というか「状態」というもの自体、が我々の通常の常識と異なった存在形態を取ると言う点にあります。「量子情報」で重要なのも実はこの点で、これさえ判ればシュレディンガー方程式とかポテンシャル問題の解き方とか、そう言ったものは副次的なものだと考えて、当面は差し支えありません。

ものの量子的な存在形態である「状態」というものにはいくつか特徴的なことがあります。まず観測結果との微妙な関係です。そしてもう一つは「重ね合わせ」原理と呼ばれ、2つの異なった状態を足したものも状態として可能だとするもので、このため「あっちとこっちに同時にいる」みたいなことがおこります。これは「シュレディンガーの猫」という名で一般に知られているようです。

行先: 研究のページ
copyright 2004
全卓樹ホーム 教育のページ
t.cheon & associates