上下コーディング、左右コーディング
さあこれでようやく「量子」の準備が整いましたので、いよいよ「情報」にかかりましょう。仮にアリスが矢印の状態を準備する基底セットと、ボブが観測に用いる基底セットが同じだとしましょう。明かにこの場合はアリスが用意した矢印の方向が、100%の確度でボブに伝わります。例えばアリスが上下の向きいずれかに状態を作り、ボブに「上下を念頭に測定して」と伝えたとすれば、ボブはアリスの準備した状態がそのまま見つかるでしょう。そうならばこれをアリスからボブへの情報伝達と考えることもできます。つまりアリスは1ビットの情報"0" または"1"を
上下エンコーディング : "0" ~ |↑> 、 "1" ~ |↓>
をつかって矢印の状態として伝え、これをボブが
上下デコーディング : <↑| ~ "0"、 <↓| ~ "1"
でビット情報として正しく再生できた訳です。同様な情報伝達は
左右エンコーディング : "0" ~ |→> 、 "1" ~ |←> 左右デコーディング : <→| ~ "0"、 <←| ~ "1"
でも当然できます。
ところが今仮にアリスのコーディング方向とボブとデコーディング方向が違ったとしてみます。たとえばアリスは上下コーディングで"0"を|↑>として伝えようとします。ボブがこれを左右デコーディングで解釈すると <→| すなわち "0" と受け取る確率が50%、<←| すなわち "1" と受け取る確率が50%となり、これだと情報伝達の確度が1/2になってしまいます。
これをまとめると、コーディングとデコーディングに上下基底を用いたもの、左右基底を用いたものの2種類を用いるとすれば、アリスの基底とボブの基底が同じものを用いた時に限ってビット情報が正確に伝えられます。
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