電子講義:入門量子情報

全卓樹

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猫でもわかる量子情報(8)

「上下基底」と「左右基底」

さて|θ=π/2>つまり右向きを|→>、|θ=3π/2>つまり左向きを|←>って書きましょう。今後絶えず出てくるのでこの分かりやすい書き方は便利です。具体的なベクトルは

    |→> = (1/√2, 1/√2) 、|←> = (1/√2, -1/√2)

です。これらは「上下基底」を使って書けば

    |→>= 1/√2 |↑> + 1/√2 |↓> 、|←>= 1/√2 |↑> - 1/√2 |↓>

とかけますから、「右向き」にアリスが準備した状態はボブが「上下方向」で観測すると上、下にそれぞれ半々の確率

    | <↑|→> |^2 = 1/2 、| <↓|→> |^2 = 1/2

で見つかります。「左向き」状態も同様で上下向きが半々にふくまれている、なぜなら

    | <↑|←> |^2 = 1/2 、| <↓|←> |^2 = 1/2

だからです。前にいったとおりでしょう?

さてここで面白いのは、上から2段目の2つの式を足し引きすると

    |↑>= 1/√2 |→> + 1/√2 |←> 、|↓>= 1/√2 |→> - 1/√2 |←>

という式になることです。これはまず、状態 |→>、|←> の組も基底セットとみなせることを意味します。なぜならこの式を使うと任意の状態|θ>は左右の状態のセットの重ねあわせで書けますから。さらにこの式をよく見ると、先ほどと全く同様な計算から(というか、慣れてくると計算しなくても)「上向き」にアリスが準備した状態はボブが「左右方向」で観測すると右、左にそれぞれ半々の確率でみつかり、「下向き」に関しても同様であることが判ります。つまりは「上下基底」と「左右基底」はある意味で同格であると言えるのです。

もはや言うまでもなく、「45度基底」とか「9.11度基底」とかどれをとってもすべて「よい基底」で同格です。しかしここからは話を簡単にするため「上下」と「左右」の二つだけに絞って考えていきます。

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