「上下基底」と「左右基底」
さて|θ=π/2>つまり右向きを|→>、|θ=3π/2>つまり左向きを|←>って書きましょう。今後絶えず出てくるのでこの分かりやすい書き方は便利です。具体的なベクトルは
|→> = (1/√2, 1/√2) 、|←> = (1/√2, -1/√2)
です。これらは「上下基底」を使って書けば
|→>= 1/√2 |↑> + 1/√2 |↓> 、|←>= 1/√2 |↑> - 1/√2 |↓>
とかけますから、「右向き」にアリスが準備した状態はボブが「上下方向」で観測すると上、下にそれぞれ半々の確率
| <↑|→> |^2 = 1/2 、| <↓|→> |^2 = 1/2
で見つかります。「左向き」状態も同様で上下向きが半々にふくまれている、なぜなら
| <↑|←> |^2 = 1/2 、| <↓|←> |^2 = 1/2
だからです。前にいったとおりでしょう?
さてここで面白いのは、上から2段目の2つの式を足し引きすると
|↑>= 1/√2 |→> + 1/√2 |←> 、|↓>= 1/√2 |→> - 1/√2 |←>
という式になることです。これはまず、状態 |→>、|←> の組も基底セットとみなせることを意味します。なぜならこの式を使うと任意の状態|θ>は左右の状態のセットの重ねあわせで書けますから。さらにこの式をよく見ると、先ほどと全く同様な計算から(というか、慣れてくると計算しなくても)「上向き」にアリスが準備した状態はボブが「左右方向」で観測すると右、左にそれぞれ半々の確率でみつかり、「下向き」に関しても同様であることが判ります。つまりは「上下基底」と「左右基底」はある意味で同格であると言えるのです。
もはや言うまでもなく、「45度基底」とか「9.11度基底」とかどれをとってもすべて「よい基底」で同格です。しかしここからは話を簡単にするため「上下」と「左右」の二つだけに絞って考えていきます。
|